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- 東南アジアで新型コロナ感染がピークアウトの兆し
2021年08月26日
1――新型コロナ感染がピークアウトの兆し
新型コロナウイルス感染症は昨年、欧米諸国で猛威を奮ったのに対し、東南アジアでは比較的感染拡大が抑え込まれていた。しかし、今年に入ると、東南アジアでも新型コロナウイルスの感染状況が悪化し始め、6月中旬から感染ペースが加速した。ASEAN加盟全10カ国の1日あたりの新規感染者数は6月中旬の2万人台から8月前半の10万人台まで急速に増加し、ユーロ圏やインドを上回る勢いで感染が広がることとなった(図表1)。
感染急拡大の背景には、規制疲れによる感染対策の不徹底や祭事期に伴う人流の増加などの要因もあるが、欧米に比べて東南アジアのワクチン接種が遅れるなか、感染力の強いデルタ株が猛威を振るい始めたことによる影響が大きいと考えられる。
しかし、各国が相次いで実施した厳格な行動規制が奏功して、足元では東南アジアの感染状況にピークアウトの兆しが見えつつある。
感染急拡大の背景には、規制疲れによる感染対策の不徹底や祭事期に伴う人流の増加などの要因もあるが、欧米に比べて東南アジアのワクチン接種が遅れるなか、感染力の強いデルタ株が猛威を振るい始めたことによる影響が大きいと考えられる。
しかし、各国が相次いで実施した厳格な行動規制が奏功して、足元では東南アジアの感染状況にピークアウトの兆しが見えつつある。
人口世界4位のインドネシアは7月中旬に1日の新規感染者数が5万人に達してピークアウトし、足元では1万人台まで減少してきている(図表2)。もっとも遅行指標である死亡者数は依然として多く、1日に1,000人以上の高水準で推移しており、厳しい状況にあることに変わりはない(図表3)。インドネシアの累計死亡者数はインドに続いてアジアで2番目に多く10万人を超えた。死亡者数の多さは感染拡大だけでなく、医療体制が脆弱であることも一因となっているとみられる。世界保健機関(WHO)によると、インドネシアの⼈⼝1万⼈あたりの医師数は4.7⼈であり、日本(24.8⼈)は勿論、マレーシア(15.4⼈)、タイ(9.2⼈)、ベトナム(8.3人)、フィリピン(6.0人)を下回っている。
また昨年はウイルスの封じ込めに成功した国として評価されたタイとベトナムはデルタ株の猛威にさらされる状況となっており、フィリピンとマレーシアにおいてもこれまでの感染の波を上回る勢いでウイルスが蔓延している。このうち、タイの足元の感染状況はピークアウトの兆しが見えつつあり、マレーシアもワクチン普及によって感染者数の増加ペースが緩やかになってきている。一方、フィリピンとベトナムは現在も感染拡大が加速しており、収束が見通せない状況にある。
なお、人口100万人あたりの新規感染者数(7日間移動平均)をみると、マレーシアが653人と最も多く、タイ(307人)や日本(177人)だけでなく、5月上旬に爆発的な感染拡大が生じたインド(最大283人)をも大きく上回る水準にある(図表4)。感染者数や死亡者数でみると人口の多い国が目立つが、人口100万人あたりの新規感染者数をみることで各国の深刻さが浮き彫りになる。
なお、人口100万人あたりの新規感染者数(7日間移動平均)をみると、マレーシアが653人と最も多く、タイ(307人)や日本(177人)だけでなく、5月上旬に爆発的な感染拡大が生じたインド(最大283人)をも大きく上回る水準にある(図表4)。感染者数や死亡者数でみると人口の多い国が目立つが、人口100万人あたりの新規感染者数をみることで各国の深刻さが浮き彫りになる。
2――ASEAN5各国の感染状況と政府の封じ込め措置
[インドネシア:感染状況の改善が進み、ジャカルタ首都圏の行動規制を緩和]
インドネシアでは、政府がイスラム教の断食明け大祭(レバラン、2021年は5月13~14日)に合わせて帰省禁止措置(6~17日)を実施し、5月末まで帰省の取り締まりを強化したが、人の流れを十分に抑制することできず、その影響は6月に入って顕在化して感染第2波が到来した(図表5)。1日あたりの新規感染者数は7月中旬に5万人に達し、患者用ベッドや医療用酸素が不足するなど医療体制は逼迫した状態となった。
インドネシア政府は感染再拡大を受けて7月初旬から人口の多いジャワ島と観光地のバリ島に緊急活動制限(PPKMダルラット)を実施、出社を原則禁止するなど人の移動を大幅に制限した。その後は各種の行動制限の効果が浸透して新規感染者数がピークアウト、足元では1日あたりの新規感染者数は1万人台まで減少してきている。インドネシア政府は感染状況に改善がみられるとして、8月から出社制限の緩和や商業施設の営業再開など慎重に経済再開を進めており、さらに30日にはこれまで感染リスクの高い「レベル4」地域に指定していたジャカルタ首都圏などでも1段階低い「レベル3」への移行を決定している。
インドネシア政府は感染再拡大を受けて7月初旬から人口の多いジャワ島と観光地のバリ島に緊急活動制限(PPKMダルラット)を実施、出社を原則禁止するなど人の移動を大幅に制限した。その後は各種の行動制限の効果が浸透して新規感染者数がピークアウト、足元では1日あたりの新規感染者数は1万人台まで減少してきている。インドネシア政府は感染状況に改善がみられるとして、8月から出社制限の緩和や商業施設の営業再開など慎重に経済再開を進めており、さらに30日にはこれまで感染リスクの高い「レベル4」地域に指定していたジャカルタ首都圏などでも1段階低い「レベル3」への移行を決定している。
[タイ:都市封鎖の対象地域拡大により感染状況改善の兆し]
タイでは今年4月中旬のタイ正月(ソンクラーン)に伴う旅行や帰省が増えたことがきっかけとなり、感染第3波が発生した。1日あたりの新規感染者数は4月初の100人未満から6月末には5,000人程度まで増加した(図表6)。この間、タイ政府は首都バンコクなどで店内飲食の禁止や商業施設の営業時間制限など行動規制を次第に強化していったが、デルタ株の猛威を止められず、感染拡大ペースは加速した。
タイ政府は7月中旬に首都バンコクを含む10都県(全77都県)を対象に夜間外出禁止など事実上の都市封鎖措置を発令し、8月には都市封鎖の対象地域を29都県に拡大したほか、工場労働者や建設現場の作業員に対して自宅や工場以外への移動を制限するバブルアンドシールの追加措置を講じるなど行動規制を強化する動きを続けた。こうした厳格な感染対策が奏功して、1日あたりの新規感染者数は8月13日の約2万3,000人をピークに改善に転じ、足元では2万台を割ってきている。第3波はピークアウトの兆しが見えつつある。
タイ政府は7月中旬に首都バンコクを含む10都県(全77都県)を対象に夜間外出禁止など事実上の都市封鎖措置を発令し、8月には都市封鎖の対象地域を29都県に拡大したほか、工場労働者や建設現場の作業員に対して自宅や工場以外への移動を制限するバブルアンドシールの追加措置を講じるなど行動規制を強化する動きを続けた。こうした厳格な感染対策が奏功して、1日あたりの新規感染者数は8月13日の約2万3,000人をピークに改善に転じ、足元では2万台を割ってきている。第3波はピークアウトの兆しが見えつつある。
[マレーシア:ワクチン接種の進展で感染拡大ペースが鈍化、規制緩和に舵]
マレーシアでは、今年2月をピークに感染第2波が沈静化した後、4月に入って第3波が到来した(図表7)。マレーシア政府は5月12日から全国で3回目となる厳格な活動制限令(MCO 3.0)を実施して州をまたぐ移動やレストランなどでの店内飲食を禁止したが、イスラム教の断食明け大祭(ハリラヤ・プアサ、2021年は5月13~14日)後に感染ペースが加速した。
マレーシア政府は6月から全土で大規模な都市封鎖を実施して国が必要不可欠と認めた業種以外の社会・経済活動が禁止されることとなった。しかし、その後も変異株の蔓延や規制疲れなどによって感染拡大に歯止めがかからず、新規感染者数は1日あたり2万人台に達した。
マレーシア政府はコロナ禍からの復興の道筋として「国家回復計画(NRP)」を4段階で示し、感染状況やワクチン接種などの目標を定めて州ごとに段階的な制限緩和を進めている。現在首都圏を含む8つの州および連邦直轄領(全体で16)は4段階のうちの第1期1(都市封鎖に相当)のままだが、このところマレーシア政府はワクチン接種完了者に対する活動制限の緩和を矢継ぎ早に打ち出している。まず8月10日から国家回復計画の第2期以降にある地域においてワクチン接種完了者の店内飲食や州内の移動制限などが一部緩和、20日には同様の規制が第1期の地域にも適用された。また同月16日から従業員のワクチン接種率に応じて企業の操業規制が緩和されている。足元の感染拡大ペースは鈍化してきたとはいえ、感染第3波が沈静化していないなかで見切り発車に近い形での規制緩和となっている。
1 国家安全保障会議(NSC)は第2期への移行の目安について、1日当たりの新規入院患者数が成人人口10万人当たり6.1人未満となり、ワクチン接種率(2回完了)が成人人口比で50%以上、集中治療室(ICU)の病床使用率が「中程度」であることとしている。
マレーシア政府は6月から全土で大規模な都市封鎖を実施して国が必要不可欠と認めた業種以外の社会・経済活動が禁止されることとなった。しかし、その後も変異株の蔓延や規制疲れなどによって感染拡大に歯止めがかからず、新規感染者数は1日あたり2万人台に達した。
マレーシア政府はコロナ禍からの復興の道筋として「国家回復計画(NRP)」を4段階で示し、感染状況やワクチン接種などの目標を定めて州ごとに段階的な制限緩和を進めている。現在首都圏を含む8つの州および連邦直轄領(全体で16)は4段階のうちの第1期1(都市封鎖に相当)のままだが、このところマレーシア政府はワクチン接種完了者に対する活動制限の緩和を矢継ぎ早に打ち出している。まず8月10日から国家回復計画の第2期以降にある地域においてワクチン接種完了者の店内飲食や州内の移動制限などが一部緩和、20日には同様の規制が第1期の地域にも適用された。また同月16日から従業員のワクチン接種率に応じて企業の操業規制が緩和されている。足元の感染拡大ペースは鈍化してきたとはいえ、感染第3波が沈静化していないなかで見切り発車に近い形での規制緩和となっている。
1 国家安全保障会議(NSC)は第2期への移行の目安について、1日当たりの新規入院患者数が成人人口10万人当たり6.1人未満となり、ワクチン接種率(2回完了)が成人人口比で50%以上、集中治療室(ICU)の病床使用率が「中程度」であることとしている。
[フィリピン:経済への影響を考慮して外出・移動制限を1段階引き下げ]
フィリピンでは今年3月から変異株の流入や規制疲れなどによって感染第2波が発生した(図表8)。3月15日からマニラ首都圏が夜間外出禁止令を発令するなど各自治体が制限強化に舵を切り、同月29日にはフィリピン政府が首都圏と周辺4州における外出・移動制限措置を最高水準に引き上げた。住民は食料品の購入など必要不可欠な外出以外が禁止され、企業活動は食品や医薬品、銀行、輸出加工型などに限られることとなった。
各種の感染対策が奏功して4月中旬に感染状況がピークアウトするのとほぼ同時に、フィリピン政府は医療態勢の改善を理由に首都圏・周辺州における外出・移動制限を最も厳しい措置から1段階引き下げることを決めた。もっとも第2波が沈静化していない段階での制限緩和となったため、その後も感染が高止まりすると7月下旬に第3波が到来した。フィリピン政府は8月6日から首都圏・周辺州の外出・移動制限措置を再び最も厳しい水準に引き上げたが、デルタ株の封じ込めに苦戦を強いられ、足元の1日あたりの新規感染者数は再び1万人台を突破して過去最多を更新している。病床使用率が全国で71%となるなど病床不足は深刻だが、政府は経済活動への影響を考慮して8月21日から首都圏・周辺州における外出・移動制限を最も厳しい措置から再び1段階引き下げることを決めた。今後は外出制限の緩和によって人流が増えて感染拡大ペースが加速する恐れがある。
各種の感染対策が奏功して4月中旬に感染状況がピークアウトするのとほぼ同時に、フィリピン政府は医療態勢の改善を理由に首都圏・周辺州における外出・移動制限を最も厳しい措置から1段階引き下げることを決めた。もっとも第2波が沈静化していない段階での制限緩和となったため、その後も感染が高止まりすると7月下旬に第3波が到来した。フィリピン政府は8月6日から首都圏・周辺州の外出・移動制限措置を再び最も厳しい水準に引き上げたが、デルタ株の封じ込めに苦戦を強いられ、足元の1日あたりの新規感染者数は再び1万人台を突破して過去最多を更新している。病床使用率が全国で71%となるなど病床不足は深刻だが、政府は経済活動への影響を考慮して8月21日から首都圏・周辺州における外出・移動制限を最も厳しい措置から再び1段階引き下げることを決めた。今後は外出制限の緩和によって人流が増えて感染拡大ペースが加速する恐れがある。
[ベトナム:感染に歯止めがかからず、社会隔離措置を強化]
ベトナムはこれまで厳しい水際対策や濃厚接触者の強制隔離などが奏功して短期間で感染を収束することに成功してきた。しかし、今年4月末に北部を中心に感染第4波が広がると歯止めがかからない状況に陥った。政府は当初感染源となっていた北部2省(バクザン省、バクニン省)を中心に首相指示16号に基づく社会隔離措置を講じて1日あたりの感染者数を6月まで100~300人程度に抑え込んでいたが、人口密度の高い南部ホーチミン市に感染が広がると、感染源の特定が難しくなり感染者が急増した。
ホーチミン市は7月9日から社会隔離措置を適用して事実上の都市封鎖に入って外出や他地域との移動が原則禁止になった。その後も社会隔離措置の対象範囲が南部19省市全域に拡大し、北部ハノイ市(首都)や中部ダナン市などの大都市も相次ぎ行動規制が厳格化されたが、感染状況は改善せず、足元では1日あたりの新規感染者数が1万人台に達している。第4波の被害が最も深刻なホーチミン市では8月23日から9月6日まで外出禁止措置が終日となり、政府は更なる規制強化で感染拡大を防止する姿勢を明確にした。政府は第4波の収束目標時期について、ホーチミン市が9月15日まで、南部の工業地域3省が9月1日まで、その他が8月25日までと示しているが、既に目標達成時期を見直す必要に迫られている。
ホーチミン市は7月9日から社会隔離措置を適用して事実上の都市封鎖に入って外出や他地域との移動が原則禁止になった。その後も社会隔離措置の対象範囲が南部19省市全域に拡大し、北部ハノイ市(首都)や中部ダナン市などの大都市も相次ぎ行動規制が厳格化されたが、感染状況は改善せず、足元では1日あたりの新規感染者数が1万人台に達している。第4波の被害が最も深刻なホーチミン市では8月23日から9月6日まで外出禁止措置が終日となり、政府は更なる規制強化で感染拡大を防止する姿勢を明確にした。政府は第4波の収束目標時期について、ホーチミン市が9月15日まで、南部の工業地域3省が9月1日まで、その他が8月25日までと示しているが、既に目標達成時期を見直す必要に迫られている。
3――経済活動の継続に向けてワクチン接種動向がカギに
足元ではインドネシアが感染第2波を乗り越えつつあり、タイでも感染改善の兆しが見えてきたが、今後の行動制限の緩和によって人流が増加すると、感染再拡大は避けられない。当面は規制を導入しては解除する展開が予想される。
東南アジア各国はワクチン接種を急いでいるが、ワクチン接種完了者の割合をみると、マレーシアが4割超と日本並みに進んでいるものの、それ以外の国はインドネシアとフィリピンが1割超、タイが9%、ベトナムが1%と低水準にとどまる(図表10)。
変異株の脅威に対してワクチンの有効性は不透明な部分もあるが、ワクチンの普及が進めば経済活動と感染対策を両立しやすくなり、デルタ株の広がりで身動きが取れない現在の状況から抜け出せるようになるだろう。マレーシアでは8月10日からワクチン接種完了者を対象に行動規制が緩和されたが、現在のところ更なる感染拡大の動きは見られない。
東南アジア各国はワクチン接種を急いでいるが、ワクチン接種完了者の割合をみると、マレーシアが4割超と日本並みに進んでいるものの、それ以外の国はインドネシアとフィリピンが1割超、タイが9%、ベトナムが1%と低水準にとどまる(図表10)。
変異株の脅威に対してワクチンの有効性は不透明な部分もあるが、ワクチンの普及が進めば経済活動と感染対策を両立しやすくなり、デルタ株の広がりで身動きが取れない現在の状況から抜け出せるようになるだろう。マレーシアでは8月10日からワクチン接種完了者を対象に行動規制が緩和されたが、現在のところ更なる感染拡大の動きは見られない。
東南アジアの製造業PMIは7月に急速に落ち込み、企業マインドが大きく悪化していることが明らかとなった(図表11)。先進国の製造業PMIが拡大基調を維持したのとは対照的な動きである。東南アジア各国ではこれまで感染対策として個人に対する行動制限措置が多かったが、最近は企業の操業にかかわる措置が導入されるようになって生産や投資活動に支障が出ており、サプライチェーンの混乱が生じていることが背景にある。
近年外資系企業の進出が著しいベトナムでは工業団地に拠点がある製造業は従業員の「労・食・住」を工場内に集約することが操業継続の条件となっているが、この工場隔離を実施した企業では7月以降、感染例が相次ぎ報告されているほか、工場隔離を望まず退職する者も多く、操業を続けることが難しくなっている。今後公表される8月の経済指標では規制強化に伴う生産活動停滞の影響が顕在化するだろう。
東南アジアは電機や自動車など数多くの日系企業が進出しているように、世界の製造業の生産拠点として注目を集めている。しかし、現在のようにデルタ株の脅威に対して都市封鎖など厳しい行動制限措置を実施せざるを得ない状況が続くようであれば、(今後の新たな変異株に対しても)生産基地の役割を担うことが難しいと判断されかねない。また、こうした有事の際の脆弱性が目立つと東南アジアへの進出を躊躇する企業が増えるため、コロナ禍の長期化は東南アジア経済への長期的な打撃となる恐れがある。
近年外資系企業の進出が著しいベトナムでは工業団地に拠点がある製造業は従業員の「労・食・住」を工場内に集約することが操業継続の条件となっているが、この工場隔離を実施した企業では7月以降、感染例が相次ぎ報告されているほか、工場隔離を望まず退職する者も多く、操業を続けることが難しくなっている。今後公表される8月の経済指標では規制強化に伴う生産活動停滞の影響が顕在化するだろう。
東南アジアは電機や自動車など数多くの日系企業が進出しているように、世界の製造業の生産拠点として注目を集めている。しかし、現在のようにデルタ株の脅威に対して都市封鎖など厳しい行動制限措置を実施せざるを得ない状況が続くようであれば、(今後の新たな変異株に対しても)生産基地の役割を担うことが難しいと判断されかねない。また、こうした有事の際の脆弱性が目立つと東南アジアへの進出を躊躇する企業が増えるため、コロナ禍の長期化は東南アジア経済への長期的な打撃となる恐れがある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年08月26日「基礎研レター」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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【東南アジアで新型コロナ感染がピークアウトの兆し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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