- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- タイ経済:21年4-6月期の成長率は前年同期比7.5%増~6四半期ぶりのプラス成長も、感染第3波の深刻化で経済の先行きは不透明
タイ経済:21年4-6月期の成長率は前年同期比7.5%増~6四半期ぶりのプラス成長も、感染第3波の深刻化で経済の先行きは不透明
経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠
このレポートの関連カテゴリ
4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内外需の回復が成長率上昇に繋がったことが分かる。
民間消費は前年同期比4.6%増(前期:同0.3%減)と大きく上昇した。費目別に見ると、交通(同13.2%増)と娯楽・文化(同29.0%増)、レストラン・ホテル(同8.2%増)が増加に転じたほか、食料・飲料(同2.4%増)や住宅・水道・電気・燃料(同2.2%増)、通信(同1.8%増)、保健衛生(同7.4%増)の増加が続いた。一方、衣類・靴(同15.3%減)は低迷した。
政府消費は同1.1%増(前期:同2.1%増)と小幅に鈍化した。
総固定資本形成は同8.1%増となり、前期の同7.3%増から小幅に上昇した。投資の内訳を見ると、まず民間投資が同9.2%増(前期:同3.0%増)と2四半期連続で上昇した。民間建設投資(同0.2%減)は引き続き減少したものの、民間設備投資(同12.2%増)が大きく伸びた。一方、公共投資は同5.6%増(前期:同19.6%増)と鈍化した。公共建設投資(同9.0%増)こそ好調だったが、公共設備投資(同4.7%減)が再び減少した。
純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲2.1%ポイントと、前期の▲8.0%ポイントからマイナス幅が縮小した。まず財・サービス輸出は同27.5%増(前期:同10.5%減)と2019年7-9月期ぶりに増加した。財貨輸出が同30.7%増(前期:同3.2%増)と大きく上昇したが、サービス輸出が同1.9%減(前期:同63.6%減)と低迷した。一方、財・サービス輸入は同31.4%増(前期:同1.7%増)となり、輸出同様に急上昇した。財貨輸入(同32.2%増)とサービス輸入(同28.2%増)がそれぞれ大幅に増加した。
まず農林水産業は前年同期比2.0%増(前期:同1.3%増)と増加した。主要作物のコメやゴム、キャッサバ、パイナップルがけん引したほか、畜産や漁業・養殖業も増加した。
鉱工業は同14.2%増(前期:同0.3%減)と、2019年7-9月期ぶりのプラス成長となった。まず主力の製造業は国内外の需要増を背景に同16.8%増(前期:同1.0%増)と大きく上昇した。製造業の内訳を見ると、自動車やコンピュータ・部品などの資本・技術関連産業(同39.8%増)と石油化学製品、ゴム・プラスチック製品などの素材関連(同10.3%増)、食料・飲料や繊維、家具などの軽工業(同9.0%増)が揃って大幅に増加した。また電気・ガス業は同0.9%増(前期:同9.1%減)、鉱業は同5.1%増(前期:同4.6%減)となり、それぞれ増加した。
全体の6割弱を占めるサービス業も同5.0%増(前期:同4.3%減)と増加に転じた。サービス業の内訳を見ると、コロナ禍で低迷していたホテル・レストラン業(同13.2%増)や運輸・倉庫業(同11.6%増)、管理及び支援サービス(同1.4%増)、芸術・娯楽等(同93.4%増)、小売・卸売業(同5.5%増)がプラス成長に回復したほか、情報・通信業(同5.8%増)や建設業(同5.1%増)、金融・保険業(同2.3%増)、不動産業(同2.7%増)、教育(同0.6%増)、保健衛生・社会事業(同4.9%増)は引き続き増加した。
1 8月16日、タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)が2021年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
4-6月期GDPの評価と先行きのポイント
4-6月期の成長率の急上昇はベースの効果の影響が大きいとみられる。タイでは今年に入って新型コロナの感染拡大が続いている。感染状況は今年4月に変異ウイルスの流行などによる感染第3波が生じ、1日あたりの新規感染者数は3月末の100人未満から6月末には5,000人程度まで増加した(図表3)。感染状況の悪化により、タイ政府は首都バンコクなどで店内飲食の禁止や商業施設の営業時間制限するなど行動規制を次第に強化した結果、4-6月期は人流が減少することとなった(図表4)。こうした感染拡大と行動規制強化によってタイ経済にはブレーキがかかり、実質GDPは前期比でみると+0.4%の小幅なプラス成長に止まったが、前年の水準が大きく落ち込んでいた影響で前年同期比の成長率は大幅なプラスとなった。
国内で感染拡大が続くなかでも、順調に回復したのが輸出(同30.7%増)と公共投資(同5.6%増)だ。特に財・サービス輸出は、観光業の不振が続いてサービス輸出(前年同期比1.9%減)が低迷したままであるが、財貨輸出(前年同期比30.7%増)はテレワーク関連製品や家電製品の出荷増により輸出全体をけん引した。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1780
(2021年08月16日「経済・金融フラッシュ」)
ソーシャルメディア
新着記事
-
2022年05月27日
2022年4~5月の自社株買い動向~発行済株式総数に対する割合と株価の関係~ -
2022年05月27日
2022年度診療報酬改定を読み解く(下)-医療機能分化、急性期の重点化など提供体制改革を中心に -
2022年05月27日
中国経済の見通し-岐路に立つコロナ政策、22年は4.2%と予想も、下方リスクが燻ぶり、ポジティブ・サプライズもあり得て、目が離せない -
2022年05月26日
欧州大手保険Gの2021年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- -
2022年05月26日
Japan’s Economic Outlook for Fiscal 2022 and 2023 (May 2022)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2022年05月17日
News Release
-
2022年04月21日
News Release
-
2022年04月04日
News Release
【タイ経済:21年4-6月期の成長率は前年同期比7.5%増~6四半期ぶりのプラス成長も、感染第3波の深刻化で経済の先行きは不透明】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
タイ経済:21年4-6月期の成長率は前年同期比7.5%増~6四半期ぶりのプラス成長も、感染第3波の深刻化で経済の先行きは不透明のレポート Topへ