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- ASEANの貿易統計(8月号)~6月の輸出は大幅増も域内の感染拡大により輸出の増勢は鈍化へ
2021年08月06日
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21年6月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比32.0%増(前月同41.7%増)と、大幅な増加が続いた(図表1)。輸出は昨年4月に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が本格化して急減した後、感染防止と経済活動の両立やテレワーク需要の増加に伴う電気・電子製品の出荷増、商品市況の改善を受けて増加基調を維持している。6月の輸出は前年同月の大幅な落ち込みからの反動増により伸び率(前年同月比)が押し上げられる形となった。しかし、現在ASEAN諸国では新型コロナウイルスの陽性者が急増し、都市封鎖や工場の閉鎖などが行われて製造業のサプライチェーンに影響が出てきており、今後は輸出の増勢が鈍化する展開が予想される。
ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、6月は前年の落ち込みの大きい東南アジア向け(同43.6%増)とEU向け(同35.8%増)が反動増で大幅な増加が続いた。またコロナ禍からの経済回復が進む北米向け(同31.5%増)と東アジア向け(同28.7%増)も好調を維持した(図表2)。
ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、6月は前年の落ち込みの大きい東南アジア向け(同43.6%増)とEU向け(同35.8%増)が反動増で大幅な増加が続いた。またコロナ禍からの経済回復が進む北米向け(同31.5%増)と東アジア向け(同28.7%増)も好調を維持した(図表2)。
ベトナムの21年6月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比20.4%増となり、前月の同36.6%増から鈍化したものの、4カ月連続の二桁増となった。輸出は昨年4~5月に新型コロナ感染対策として国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて落ち込んだが、6月以降は経済活動の再開と世界的な電子機器の需要増加を受けて増加傾向が継続、更に足もとでは前年同月が厳格なコロナ対策によった落ち込んだ反動増で伸び率が押し上げられている。また輸入額が前年同月比34.3%増(前月:同57.9%増)と鈍化した結果、貿易収支は▲4.2億ドルの赤字となり、前月から16.2億ドル改善した(図表3)。
輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比9.6%減(前月:同22.5%増)と減少したものの、電気製品・同部品は同5.4%増(前月:同14.6%増)と増加傾向を保った(図表4)。またアパレル関連では、織物・衣類が同16.2%増(前月:同36.4%増)、履物が同37.8%増(前月:同44.0%増)と好調だった。農林水産物を見ると、コメ(同6.4%増)が増加に転じたほか、コーヒー(同14.2%増)や水産物(同18.8%増)、野菜(同25.0%増)、カシューナッツ(同43.2%増)などが引き続き増加した。
輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同22.2%増(前月:同42.8%増)、地場企業が同16.3%増(前月:同23.1%増)とそれぞれ大幅な伸びとなった。
輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比9.6%減(前月:同22.5%増)と減少したものの、電気製品・同部品は同5.4%増(前月:同14.6%増)と増加傾向を保った(図表4)。またアパレル関連では、織物・衣類が同16.2%増(前月:同36.4%増)、履物が同37.8%増(前月:同44.0%増)と好調だった。農林水産物を見ると、コメ(同6.4%増)が増加に転じたほか、コーヒー(同14.2%増)や水産物(同18.8%増)、野菜(同25.0%増)、カシューナッツ(同43.2%増)などが引き続き増加した。
輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同22.2%増(前月:同42.8%増)、地場企業が同16.3%増(前月:同23.1%増)とそれぞれ大幅な伸びとなった。
タイの21年6月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比43.8%増(前月:同41.6%増)と上昇した。輸出は新型コロナ感染拡大の影響が直撃した昨年4~6月に大きく減少した後、経済活動の再開と世界的な電子機器の需要増加を受けて増加傾向が続くなか、足もとでは前年同月が活動制限措置の影響により落ち込んでいた反動増で伸び率が押し上げられている。また輸入額が前年同月比53.8%増(前月:同63.5%増)と鈍化した結果、貿易収支は+9.5億ドルとなり、前月から1.5億ドル拡大した(図表5)。
輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同44.7%増(前月:同59.5%増)と4カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、在宅時間が増加した影響で増加傾向の続く電子機器(同32.2%増)や家電製品(同29.2%増)が好調だったほか、機械・装置(同46.5%増)や石油化学製品(同40.8%増)、自動車・部品(同78.2%増)などの主要輸出品も引き続き増加した。また鉱業・燃料は同81.5%増(前月:同98.4%増)と高水準を維持し、石油製品(同81.2%増)を中心に4ヵ月連続のプラスとなった。このほか、農産物・同加工品は同36.1%増(前月:同20.2%増)と8ヵ月連続で増加した。コメ(同7.4%減)が引き続き減少したものの、天然ゴム(同111.9%増)やゴム製品(同30.4%増)、果物(同197.9%増)、加工食品(同13.0%増)など幅広い品目が増加した。
輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同44.7%増(前月:同59.5%増)と4カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、在宅時間が増加した影響で増加傾向の続く電子機器(同32.2%増)や家電製品(同29.2%増)が好調だったほか、機械・装置(同46.5%増)や石油化学製品(同40.8%増)、自動車・部品(同78.2%増)などの主要輸出品も引き続き増加した。また鉱業・燃料は同81.5%増(前月:同98.4%増)と高水準を維持し、石油製品(同81.2%増)を中心に4ヵ月連続のプラスとなった。このほか、農産物・同加工品は同36.1%増(前月:同20.2%増)と8ヵ月連続で増加した。コメ(同7.4%減)が引き続き減少したものの、天然ゴム(同111.9%増)やゴム製品(同30.4%増)、果物(同197.9%増)、加工食品(同13.0%増)など幅広い品目が増加した。
マレーシアの21年6月の輸出額(ドル建て換算、通関ベース)の伸び率は前年同月比31.5%増(前月:同54.4%増)と上昇幅が縮小したものの、5カ月連続の二桁増となった。輸出は昨年4~5月に新型コロナ感染拡大と国内外の活動制限措置の影響が本格化して約3割の減少を記録した後、世界経済の回復が進むなかで電気・電子製品を中心に拡大、足もとでは前年同月が活動制限令の影響により落ち込んでいた反動増で伸び率が押し上げられている。また輸入額が前年同月比36.6%増(前月:同55.9%増)と鈍化した結果、貿易収支は+53.8億ドルとなり、前月から20.5億ドル拡大した(図表7)。
輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同14.8%増(前月:同41.4%増)と鈍化したものの、主力の電気・電子製品(同18.0%増)を中心に8カ月連続の二桁増となった(図表8)。また鉱物性燃料は同91.8%増(前月:同79.7%増)と更に上昇した。原油(同116.6%増)と石油製品(同122.0%増)、天然ガス(同16.2%増)が揃ってプラスとなった。このほか、ゴム手袋(同139.5%増)や化学製品(同63.2%増)を動植物性油脂(同56.0%増)も大幅な増加が続いた。
輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同14.8%増(前月:同41.4%増)と鈍化したものの、主力の電気・電子製品(同18.0%増)を中心に8カ月連続の二桁増となった(図表8)。また鉱物性燃料は同91.8%増(前月:同79.7%増)と更に上昇した。原油(同116.6%増)と石油製品(同122.0%増)、天然ガス(同16.2%増)が揃ってプラスとなった。このほか、ゴム手袋(同139.5%増)や化学製品(同63.2%増)を動植物性油脂(同56.0%増)も大幅な増加が続いた。
インドネシアの21年6月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比54.4%増(前月:同62.0%増)と小幅に鈍化したが、高い伸び率が続いた。輸出は昨年3~5月にかけて新型コロナの感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて最大約3割減まで落ち込んだが、その後は経済活動の再開や商品市況の改善を受けて持ち直し、足もとでは前年同月が大規模社会制限の影響により大幅に落ち込んでいたことによる反動増で伸び率が押し上げられている。また輸入額も前年同月比36.4%増(前月:同44.7%増)と低下した結果、貿易収支は+13.2億ドルとなり、前月から13.7億ドル黒字が縮小した(図表9)。
全体の9割を占める非石油ガス輸出が同51.3%増(前月:同61.4%増)が好調を保ったほか、石油ガス輸出が同117.2%増(前月:同72.7%増)が一段と上昇した(図表10)。品目別にみると、自動車・同部品(同132.3%増)や鉄・鉄鋼(同181.2%増)、鉱物性燃料(オイル・ガス除く)(同95.6%増)、ゴム製品(同53.4%増)、電気機械(同44.2%増)、動植物性油脂(同32.6%増)、機械類(同30.6%増)などが大幅に増加した。一方、天然又は養殖真珠、貴石、半貴石(同8.4%減)は減少が続いた。
全体の9割を占める非石油ガス輸出が同51.3%増(前月:同61.4%増)が好調を保ったほか、石油ガス輸出が同117.2%増(前月:同72.7%増)が一段と上昇した(図表10)。品目別にみると、自動車・同部品(同132.3%増)や鉄・鉄鋼(同181.2%増)、鉱物性燃料(オイル・ガス除く)(同95.6%増)、ゴム製品(同53.4%増)、電気機械(同44.2%増)、動植物性油脂(同32.6%増)、機械類(同30.6%増)などが大幅に増加した。一方、天然又は養殖真珠、貴石、半貴石(同8.4%減)は減少が続いた。
シンガポールの21年6月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て換算、通関ベース)は前年同月比21.1%増(前月:同15.8%増)と上昇した。輸出は昨年コロナ禍でも増加傾向で推移した後、今年は世界的な電子製品の需要拡大や石油化学製品の出荷の持ち直しを受けて好調が続いている。6月の輸出は前年からの反動増要因が剥落したものの、伸び率が5月から増しており、海外需要の勢いが衰えていないようだ。なお、総輸出額が同27.8%増(前月:同38.4%増)、総輸入額が同34.0%増(前月:同41.0%増)と、それぞれ鈍化した結果、貿易収支は+34.9億ドルとなり、前月から8.4億ドル縮小した(図表11)。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同31.1%増(前月:同18.3%増)と更に拡大して7カ月連続の二桁増となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同20.0%増)やPC(同140.6%増)、ダイオード・トランジスタ(同38.1%増)の好調が続いたほか、ディスクメディア(同4.7%増)が3カ月ぶりに増加した。また全体の約3割を占める化学品は同31.2%増(前月:同23.5%増)と上昇した。化学品の内訳を見ると、石油化学製品(同58.0%増)が二桁増を続けたほか、医薬品(同12.9%増)が3ヵ月ぶりのプラスに転じた。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同31.1%増(前月:同18.3%増)と更に拡大して7カ月連続の二桁増となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同20.0%増)やPC(同140.6%増)、ダイオード・トランジスタ(同38.1%増)の好調が続いたほか、ディスクメディア(同4.7%増)が3カ月ぶりに増加した。また全体の約3割を占める化学品は同31.2%増(前月:同23.5%増)と上昇した。化学品の内訳を見ると、石油化学製品(同58.0%増)が二桁増を続けたほか、医薬品(同12.9%増)が3ヵ月ぶりのプラスに転じた。
フィリピンの21年6月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比17.6%増(前月:同30.8%増)と上昇幅が縮小したものの、4カ月連続の二桁増となった。輸出は、昨年3月に新型コロナ感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が現れて急減した後、経済活動が再開するにつれて回復、足もとでは前年同月が移動制限措置の影響により大幅に落ち込んでいた反動増で伸び率が大きくなっている。また輸入額も前年同月比34.2%増(前月:同55.6%増)と上昇幅が縮小した結果、貿易収支は▲28.3億ドルの赤字となり、前月から3.4億ドル改善した(図表13)。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同12.3%増(前月:同25.4%増)と大幅な増加が続いた(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同7.3%増)をはじめとして電子データ処理機(同30.0%増)、消費者向け電子製品(同39.9%増)などが増加した。その他9品目は増加した品目が多かった。製錬銅(同161.1%増)やイグニッションワイヤーセット(同53.4%増)、その他製造品(同40.5%増)、金属部品(同37.6%増)、電子機器・部品(同32.0%増)、機械・輸送用機器(同21.5%増)、化学品(同20.7%増)、ココナッツオイル(同8.3%増)が増加した一方、その他鉱物製品(同14.3%減)が減少した。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同12.3%増(前月:同25.4%増)と大幅な増加が続いた(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同7.3%増)をはじめとして電子データ処理機(同30.0%増)、消費者向け電子製品(同39.9%増)などが増加した。その他9品目は増加した品目が多かった。製錬銅(同161.1%増)やイグニッションワイヤーセット(同53.4%増)、その他製造品(同40.5%増)、金属部品(同37.6%増)、電子機器・部品(同32.0%増)、機械・輸送用機器(同21.5%増)、化学品(同20.7%増)、ココナッツオイル(同8.3%増)が増加した一方、その他鉱物製品(同14.3%減)が減少した。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年08月06日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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