2021年05月12日

マレーシア経済:21年1-3月期の成長率は前年同期比▲0.5%~小幅のマイナス成長、輸出好調で持ち直し

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2021年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比0.5%減1と4期連続のマイナス成長となったが、前期の同3.4%減から持ち直したほか、Bloomberg調査の市場予想(同2.6%減)を上回った。

1-3月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の低迷がマイナス成長に繋がったことが分かる(図表1)。

GDPの6割弱を占める民間消費は前年同期比1.5%減(前期:同3.5%減)と減少幅が縮小した。また政府消費は前年同期比5.9%増(前期:同2.4%増)と上昇した。

総固定資本形成は同3.3%減(前期:同11.8%減)と小幅の減少にとどまった。建設投資が同10.4%減(前期:同13.2%減)が低迷したものの、設備投資が同10.3%増(前期:同9.0%減)と大きく上昇してプラスに転じた。なお、投資を公共部門と民間部門に分けて見ると、全体の4分の3を占める民間部門が同1.3%増(前期:同6.6%減)が回復した一方、公共部門が同18.6%減(前期:同20.4%減)と大幅な減少が続いた。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が+0.0%ポイント(前期:+0.6%ポイント)と縮小した。まず財・サービス輸出は同11.9%増(前期:同2.1%減)と急上昇した。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同43.1%減)は落ち込でいるが、財貨輸出(同20.9%増)が二桁増となった。また財・サービス輸入は同13.0%増(前期:同3.3%減)となり、輸出同様にプラスの伸びとなった。
(図表1)マレーシアの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)マレーシアの実質GDP成長率(供給側)
供給側を見ると、主に第三次産業の低迷がマイナス成長に繋がったことが分かる(図表2)。

第一次産業は同0.4%増(前期:同1.0%減)と上昇した。天然ゴム(同12.0%減)や漁業・養殖業(同8.2%減)、パーム油(同3.5%減)が低迷したものの、畜産(同3.5%増)とその他農業(同5.7%)が拡大した。

第二次産業をみると、まず製造業は同6.6%増(前期:同3.0%増)と上昇した。内訳を見ると、石油製品(同4.5%減)や動植物性油脂(同13.8%減)など減少した業種もあるが、主力の電気電子機器(同12.4%増)やゴム製品(同70.3%増)、輸送用機器(同9.4%増)が大幅に増加したほか、化学製品(同6.3%増)が4期ぶりのプラスとなった。一方、建設業は同10.4%減(前期:同13.9%減)、鉱業は同5.0%減(前期:同10.4%減)となり、それぞれ低迷した。

GDPの6割弱を占める第三次産は前年同期比2.3%減(前期:同4.8%減)と減少幅が縮小した。宿泊・飲食業(同29.8%減)や運輸・倉庫(同16.2%減)、不動産・ビジネスサービス(同19.3%減)の大幅な減少が続いた一方、情報・通信(同6.3%増)や金融・保険(同11.3%増)、政府サービス(同5.4%増)が増加傾向を続けると共に、卸売・小売(同1.5%減)が4期ぶりのプラスとなった。
 
1 2021年5月11日、マレーシア中央銀行が2021年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。

1-3月期GDPの評価と先行きのポイント

マレーシア経済は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に景気が悪化した。4-6月期は新型コロナの封じ込めを目的に国内外で実施された活動制限措置の影響が本格的に現れて成長率が▲17.1%と急減した。その後は早期にウイルスの抑え込みに成功したため、7-9月期の成長率は▲2.7%と大きく持ち直したが、10-12月期は感染再拡大を受けて同▲3.4%と再び低下した。そして今回公表された21年1-3月期の成長率は▲0.5%と4期連続のマイナス成長となったが、減少幅は再び縮小した。

1-3月期の景気の持ち直しは、外需の改善と内需の落ち込みが和らいだことによる影響が大きい。コロナ禍で世界的に医療用手袋や電気・電子製品の需要が増えており、1-3月期は電気電子製品の生産が前年同期比+12.4%、ゴム製品が同+70.3%と大幅に増加した。また米国と中国の経済回復が進んだことも追い風となり、1-3月期の財貨輸出は同+20.9%(10-12月期:同+8.3%)と拡大した(図表3)。また、こうした外需の改善を背景に企業の設備投資意欲が上向き、1-3月期の総固定資本形成が同▲3.3%減(10-12月期:同▲11.8%)と大きく持ち直した。

もっとも、内需は改善したものの、マイナス成長を続けている。これは昨秋に始まった感染再拡大を抑え込むことができず、新規感染者数が1月末に1日5,000人台を突破するまで感染状況が悪化したこと(図表4)、またマレーシア政府が感染対策として1月中旬から(一部地域を除く)全国で厳格な活動制限令(MCO 2.0)を敷いて外出や商業施設の営業時間に制限をかけたためである。昨年3~5月に全土で敷かれたMCO 1.0と同様、厳しい活動制限措置が実施されたことから国内の経済活動に支障が出た。しかし、その後は感染状況が3月末にかけて改善傾向を辿り、活動制限令は2月中旬に緩和、そして3月上旬から各地で条件付き活動制限令または回復活動制限令に移行することとなった。

先行きのマレーシア経済は引き続き新型コロナの感染状況に左右される。4-6月期は一転して高成長に転じるものと予想されるが、これは前年の大幅な落ち込みからの反動増による影響が大きい。足元では、感染第3波が到来して新規感染者数は1日4,000人台に達している。、政府は5月7日から医療体制が逼迫した首都圏で厳格な活動制限令を実施、また5月12日から6月7日にかけては全国に拡大して実施される予定である(MCO 3.0)。4-6月期も感染再拡大と活動制限措置の影響が内需の回復に水を差すことになりそうだ。
(図表3)マレーシア輸出の伸び率(品目別)/(図表4)マレーシアの新規感染者数の推移
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2021年05月12日「経済・金融フラッシュ」)

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