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- 資金循環統計(24年4-6月期)~個人金融資産は前年比98兆円増の2212兆円と過去最高に、リスク性資産への投資が進む
2024年09月19日
1.個人金融資産(24年6月末):前年比98兆円増、前期末比26兆円増
2024年6月末の個人金融資産残高は、前年比98兆円増(4.6%増)の2212兆円となった1。従来の過去最高であった3月末の水準を上回ったことで、過去最高の更新は6四半期連続となった。年間で見た場合、資金の純流入が19兆円あったほか、株高・円安が大きく進んだことで時価変動2の影響がプラス79兆円(うち国内株式等がプラス42兆円、投資信託がプラス18兆円)発生し、個人金融資産残高を大きく押し上げた。
また、家計の金融資産(グロス)は、既述のとおり4-6月期に26兆円増加したが、この間に金融負債が1兆円増加したため、金融資産から負債を控除した純資産残高は3月末比25兆円増の1819兆円となった(図表6)。
足元の7-9月期については、一般的な賞与支給月を含まないことから、例年、資金の純流入が滞る傾向がある。また、7月以降、国内株価が大きく下落し、急激な円高が進んだことから(図表4)、時価変動の影響も大幅なマイナスに働いているものと推測される。
従って、9月末にかけて急激な株高・円安が進行しなければ、9月末時点の個人金融資産残高は6月末時点の残高を明確に下回り、過去最高の更新も一旦ストップする可能性が高い。
1 今回、2023年4-6月期以降の計数が遡及改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
足元の7-9月期については、一般的な賞与支給月を含まないことから、例年、資金の純流入が滞る傾向がある。また、7月以降、国内株価が大きく下落し、急激な円高が進んだことから(図表4)、時価変動の影響も大幅なマイナスに働いているものと推測される。
従って、9月末にかけて急激な株高・円安が進行しなければ、9月末時点の個人金融資産残高は6月末時点の残高を明確に下回り、過去最高の更新も一旦ストップする可能性が高い。
1 今回、2023年4-6月期以降の計数が遡及改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
2.家計の資金流出入の詳細:インフレ懸念と新NISAの影響でリスク性資産への流入が進む
4-6月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を確認すると(図表7)、例年同様、季節要因(賞与の有無等)によって現預金が8.5兆円の純流入(積み増し)となった。ただし、後述の通り、例年と比べて家計の資金余剰が少なかったうえ、リスク性資産への一部資金のシフトの影響もあり、純流入の規模は前年同期(11.6兆円)や一昨年同期(14.1兆円)を大きく下回った。
現預金の内訳としては、まず現金からの純流出(取り崩し)が目立つ(図表8)。例年、4-6月は賞与支給の関係で純流入となる傾向があるが、今回は1.3兆円の純流出となっている。決済におけるキャッシュレス化の進行、インフレによる価値の目減り懸念に加え、7月からの新紙幣発行を控え、タンス預金の一部が取り崩されたためと推測される。
流動性預金(普通預金など)の純流入も12.0兆円と前年同期(14.8兆円)を大きく下回った。既述の通り、資金余剰が少なかったうえ、リスク性資産などへの資金シフトが生じたためだ。日銀による3月のマイナス金利解除を受けて、4月以降、預金金利が引き上げられたものの、普通預金の引き上げはごく小幅に留まり、資金をつなぎ留めることは出来なかったようだ。
一方、定期性預金(定期預金など)は引き続き純流出となったものの、純流出の規模は2.6兆円と8四半期ぶりの小幅となった。未だ大幅な純流出であるほか、満期到来額が少なかった可能性も残るため明確ではないものの、マイナス金利解除後の各行による預金金利引き上げによって、現金や流動性預金から一部資金が流入し、純流出の規模を抑制した可能性がある。
現預金の内訳としては、まず現金からの純流出(取り崩し)が目立つ(図表8)。例年、4-6月は賞与支給の関係で純流入となる傾向があるが、今回は1.3兆円の純流出となっている。決済におけるキャッシュレス化の進行、インフレによる価値の目減り懸念に加え、7月からの新紙幣発行を控え、タンス預金の一部が取り崩されたためと推測される。
流動性預金(普通預金など)の純流入も12.0兆円と前年同期(14.8兆円)を大きく下回った。既述の通り、資金余剰が少なかったうえ、リスク性資産などへの資金シフトが生じたためだ。日銀による3月のマイナス金利解除を受けて、4月以降、預金金利が引き上げられたものの、普通預金の引き上げはごく小幅に留まり、資金をつなぎ留めることは出来なかったようだ。
一方、定期性預金(定期預金など)は引き続き純流出となったものの、純流出の規模は2.6兆円と8四半期ぶりの小幅となった。未だ大幅な純流出であるほか、満期到来額が少なかった可能性も残るため明確ではないものの、マイナス金利解除後の各行による預金金利引き上げによって、現金や流動性預金から一部資金が流入し、純流出の規模を抑制した可能性がある。
次に、リスク性資産等への投資フロー(時価の変動は含まない)を確認すると(図表7)、まず代表格である株式等が0.5兆円の純流入(前年同期は2.9兆円の純流出)となった。株価がやや上昇3したことで利益確定売りも発生したものの、新NISAも活用した新規購入額が上回ったとみられる。また、投資信託も新NISAの普及が追い風となり、3.1兆円の純流入となった。純流入の規模は1-3月期の3.5兆円をやや下回るものの前年同期(1.6兆円)からほぼ倍増している。トレンドを見るために4半期累計フローを確認した場合でも(図表9)、投資信託への資金流入拡大が顕著になっている。
さらに、確定拠出年金内の投資信託も堅調な純流入が続いており、1-3月期の純流入は4351億円と過去最高を更新。外貨預金(3409億円の純流入)、対外証券投資(2110億円の純流入)にも資金が流入している。預金金利よりも金利水準が高い国債や社債といった債務証券(4707億円の純流入)も純流入が続いている。
新NISAの開始・普及や長引くインフレによる資産価値の目減りを受けて、家計の資産配分において、収益性を重視する動きが強まり、幅広いリスク性資産に資金が流入したと考えられる。
3 4-6月期のTOPIX騰落率はプラス1.5%。
さらに、確定拠出年金内の投資信託も堅調な純流入が続いており、1-3月期の純流入は4351億円と過去最高を更新。外貨預金(3409億円の純流入)、対外証券投資(2110億円の純流入)にも資金が流入している。預金金利よりも金利水準が高い国債や社債といった債務証券(4707億円の純流入)も純流入が続いている。
新NISAの開始・普及や長引くインフレによる資産価値の目減りを受けて、家計の資産配分において、収益性を重視する動きが強まり、幅広いリスク性資産に資金が流入したと考えられる。
3 4-6月期のTOPIX騰落率はプラス1.5%。
3.その他注目点:企業の資金余剰が過去最大に、日銀の国債保有割合はやや低下
4-6月期の資金過不足(季節調整値)を主要部門別にみると(図表11)、民間非金融法人(企業)の資金余剰が10.3兆円と過去最大4を記録した。資源・エネルギー高が一服するなかで価格転嫁が進展したことなどが余剰拡大の背景にあると考えられる。
一方、家計部門については1.4兆円の資金余剰となった。定額減税の効果もあって辛うじて資金不足を回避したものの、余剰額の水準はコロナ禍前の平均5を下回る。物価上昇による実質賃金の押し下げが影響したと考えられる。
なお、政府部門は5.2兆円の資金不足(1-3月期は2.5兆円の資金不足)、海外部門は6.5兆円の資金不足(1-3月期は5.7兆円の資金不足)となっており、それぞれ資金不足が継続している。政府部門については、6月の定額減税が資金不足の拡大に繋がった可能性がある。
一方、家計部門については1.4兆円の資金余剰となった。定額減税の効果もあって辛うじて資金不足を回避したものの、余剰額の水準はコロナ禍前の平均5を下回る。物価上昇による実質賃金の押し下げが影響したと考えられる。
なお、政府部門は5.2兆円の資金不足(1-3月期は2.5兆円の資金不足)、海外部門は6.5兆円の資金不足(1-3月期は5.7兆円の資金不足)となっており、それぞれ資金不足が継続している。政府部門については、6月の定額減税が資金不足の拡大に繋がった可能性がある。
6月末の国債(国庫短期証券を含む)発行残高は1211兆円と、3月末(1224兆円)比でやや減少した。当統計は時価評価のため、この間の国債利回り上昇(債券価格下落)が28兆円分残高の押し下げに働いた。
最大保有者である日銀の国債保有高は6月末時点で568兆円と3月末から12兆円減少した。金利上昇に伴う時価下落と国債買入れ額の抑制が減少の要因となった。この結果、日銀の保有シェアも46.9%と3月末(47.4%)をやや下回った(図表12)。ただし、このうち1年超の長期国債に限った場合の日銀のシェアは53.2%と3月末と変わらず、引き続き全体の過半を日銀が保有している状態となっている。
日銀は7月末に国債買入れ減額の具体的計画を公表し、8月から減額を開始している。今後は段階的に減額が行われ、日銀の国債保有高は減少に向かうことになる。日銀が残高を落とすにあたって、どの投資家がどれだけ肩代わりをしていくのかが注目される。
4 統計で遡れる2005年4-6月期以降
5 2017~19年における各四半期の平均は4.0兆円の資金余剰
最大保有者である日銀の国債保有高は6月末時点で568兆円と3月末から12兆円減少した。金利上昇に伴う時価下落と国債買入れ額の抑制が減少の要因となった。この結果、日銀の保有シェアも46.9%と3月末(47.4%)をやや下回った(図表12)。ただし、このうち1年超の長期国債に限った場合の日銀のシェアは53.2%と3月末と変わらず、引き続き全体の過半を日銀が保有している状態となっている。
日銀は7月末に国債買入れ減額の具体的計画を公表し、8月から減額を開始している。今後は段階的に減額が行われ、日銀の国債保有高は減少に向かうことになる。日銀が残高を落とすにあたって、どの投資家がどれだけ肩代わりをしていくのかが注目される。
4 統計で遡れる2005年4-6月期以降
5 2017~19年における各四半期の平均は4.0兆円の資金余剰
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年09月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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