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- 貸出・マネタリー統計(24年8月)~貸出の伸びは堅調を維持、マネタリーベースは前年割れが秒読み段階に
2024年09月10日
1.貸出動向:金融政策正常化の影響はまだ確認できず
(貸出残高)
9月9日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、8月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.39%と前月(同3.53%)からやや低下した(図表1)。急速な円高による外貨建て貸出の円換算額目減りなどが影響したと推測される。伸び率の低下は2カ月連続となるが、2023年1月以降は3%台の伸びを維持しており、コロナ前の2019年(概ね2%台)を上回る増勢が続いている。経済活動の再開や原材料価格の高止まり等に伴う資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが複合的に寄与する形で堅調な推移が続いていると考えられる。
業態別では、外貨建て貸出を多く手掛ける都銀等の伸びが前年比3.73%(前月は4.10%)と大きく低下する一方で、地銀(第2地銀を含む)の伸びは前年比3.11%(前月は3.05%)とわずかながら上昇している(図表2)。
9月9日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、8月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比3.39%と前月(同3.53%)からやや低下した(図表1)。急速な円高による外貨建て貸出の円換算額目減りなどが影響したと推測される。伸び率の低下は2カ月連続となるが、2023年1月以降は3%台の伸びを維持しており、コロナ前の2019年(概ね2%台)を上回る増勢が続いている。経済活動の再開や原材料価格の高止まり等に伴う資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが複合的に寄与する形で堅調な推移が続いていると考えられる。
業態別では、外貨建て貸出を多く手掛ける都銀等の伸びが前年比3.73%(前月は4.10%)と大きく低下する一方で、地銀(第2地銀を含む)の伸びは前年比3.11%(前月は3.05%)とわずかながら上昇している(図表2)。
(貸出金利)
7月の新規短期貸出金利は0.465%と前月(0.525%)からやや低下した(図表5)。当統計は月々の振れが大きいため、移動平均で均してトレンドを見ても、新規短期貸出金利は2020年以降低位で底這う展開が続いている。
7月の新規長期貸出金利は1.057%と伸びが急伸していた前月(1.111%)からやや低下したものの、2カ月連続で1%台を維持した。移動平均で見ると、2022年以降、日銀によるYCCの柔軟化とその後の撤廃、先々の利上げ・国債買入れ減額観測を受けた国債利回り(固定金利貸出に影響)の上昇を背景として緩やかな上昇基調にある(図表6)。
日銀が3月にマイナス金利政策を解除した後、短期市場金利は上昇した(図表5)。さらに8月には7月末に日銀が利上げを決定した影響を受けて短期市場金利がもう一段上昇しているが、貸出金利への波及は現段階では確認できない。理由としては、まず、マイナス金利解除後も殆どの銀行で変動金利の指針となる短期プライムレートが据え置かれたことが挙げられる。その後は、7月末の利上げを受けて多くの銀行が短期プライムレートの引き上げを表明しているものの、適用は9月からという対応が一般的である。
従って、貸出金利への金融政策正常化の影響が顕在化するのはこれからと見られ、9月以降の金利動向が注目される。
7月の新規短期貸出金利は0.465%と前月(0.525%)からやや低下した(図表5)。当統計は月々の振れが大きいため、移動平均で均してトレンドを見ても、新規短期貸出金利は2020年以降低位で底這う展開が続いている。
7月の新規長期貸出金利は1.057%と伸びが急伸していた前月(1.111%)からやや低下したものの、2カ月連続で1%台を維持した。移動平均で見ると、2022年以降、日銀によるYCCの柔軟化とその後の撤廃、先々の利上げ・国債買入れ減額観測を受けた国債利回り(固定金利貸出に影響)の上昇を背景として緩やかな上昇基調にある(図表6)。
日銀が3月にマイナス金利政策を解除した後、短期市場金利は上昇した(図表5)。さらに8月には7月末に日銀が利上げを決定した影響を受けて短期市場金利がもう一段上昇しているが、貸出金利への波及は現段階では確認できない。理由としては、まず、マイナス金利解除後も殆どの銀行で変動金利の指針となる短期プライムレートが据え置かれたことが挙げられる。その後は、7月末の利上げを受けて多くの銀行が短期プライムレートの引き上げを表明しているものの、適用は9月からという対応が一般的である。
従って、貸出金利への金融政策正常化の影響が顕在化するのはこれからと見られ、9月以降の金利動向が注目される。
2.マネタリーベース:前年割れが秒読み段階に
9月3日に発表された8月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比0.6%と、前月(同1.0%)から低下した(図表7)。伸び率はごく小幅なプラス圏での推移が続いている。
伸び率低下の主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の伸び率低下である。昨年終盤以降、資金供給要因である国債買入ペースが落ち着いていることで伸びが抑制された(図表8)。さらに8月からは日銀による国債買入れの段階的な減額がスタートしたことも、伸び率抑制に繋がっている。
さらに、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.5%(前月も▲1.5%)日銀券発行高の伸び率が同▲1.2%(前月は▲0.9%)とともに前年割れが続いていることも(図表7)、引き続きマネタリーベースの伸び率抑制に繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、8月のマネタリーベースは前月比1.3兆円増とほぼ横ばいで推移している(図表10)。
今後は資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進むことで、数カ月以内にマネタリーベースが前年割れに転じることが見込まれる。
伸び率低下の主因はマネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金の伸び率低下である。昨年終盤以降、資金供給要因である国債買入ペースが落ち着いていることで伸びが抑制された(図表8)。さらに8月からは日銀による国債買入れの段階的な減額がスタートしたことも、伸び率抑制に繋がっている。
さらに、貨幣流通高の伸びが前年比▲1.5%(前月も▲1.5%)日銀券発行高の伸び率が同▲1.2%(前月は▲0.9%)とともに前年割れが続いていることも(図表7)、引き続きマネタリーベースの伸び率抑制に繋がっている。キャッシュレス化の進展に加え、紙幣ではインフレによるタンス預金の目減り懸念等により、一部で現金離れが進んでいるものと考えられる。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、8月のマネタリーベースは前月比1.3兆円増とほぼ横ばいで推移している(図表10)。
今後は資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進むことで、数カ月以内にマネタリーベースが前年割れに転じることが見込まれる。
3.マネーストック:通貨量(M2)の伸びが5カ月連続で低下
9月10日に発表された8月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比1.35%(前月は1.46%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同0.86%(前月は0.96%)と、ともに低下した(図表11)。M2の伸び率低下は5カ月連続となる。通貨量の伸びは2021年以降、低下基調を辿っている。貸出(による信用創造)は堅調に推移しているものの、財政赤字縮小や貿易赤字継続、家計の貯蓄率低下などが影響しているとみられる。
M3の内訳では、前月同様、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月2.9%→当月2.7%)の伸びが低下し、全体の伸び率を押し下げた。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲1.9%→当月▲2.0%)のマイナス幅も拡大し、全体の伸び率低下に繋がった(図表12)。
なお、主に定期預金を意味する準通貨のマイナス幅(前月▲0.4%→当月▲0.4%)は前月から横ばいであった(図表13)。前月比で見ても4月から5月にかけて連月で3兆円程度の増加を見せた後は、一進一退となっている。
3月半ばに日銀がマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み切ったことを受け、多くの銀行が預金金利の引き上げに動いたことを受けて(図表14)、企業を中心に預金通貨から準通貨へ資金をシフトさせる動きが一旦現れたが、短期のうちに一服したようだ。一方、7月末の日銀による利上げを受けて、預金金利を9月からさらに引き上げる動きが続いているため、今後の動向が注目される。
M3の内訳では、前月同様、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月2.9%→当月2.7%)の伸びが低下し、全体の伸び率を押し下げた。また、キャッシュレス化やインフレの逆風を受ける現金通貨(前月▲1.9%→当月▲2.0%)のマイナス幅も拡大し、全体の伸び率低下に繋がった(図表12)。
なお、主に定期預金を意味する準通貨のマイナス幅(前月▲0.4%→当月▲0.4%)は前月から横ばいであった(図表13)。前月比で見ても4月から5月にかけて連月で3兆円程度の増加を見せた後は、一進一退となっている。
3月半ばに日銀がマイナス金利の解除など金融政策の正常化に踏み切ったことを受け、多くの銀行が預金金利の引き上げに動いたことを受けて(図表14)、企業を中心に預金通貨から準通貨へ資金をシフトさせる動きが一旦現れたが、短期のうちに一服したようだ。一方、7月末の日銀による利上げを受けて、預金金利を9月からさらに引き上げる動きが続いているため、今後の動向が注目される。
広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率も前年比2.95%(前月は3.08%)と低下した(図表11)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したほか、規模の大きい投資信託(私募やREITなども含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲5.2%→当月▲6.2%)、外債(前月10.5%→当月8.1%)の伸び率も低下したためだ。一方、国債(前月8.8%→当月11.1%)の伸び率上昇は一定の支えとなった。
内訳では、既述の通り、M3の伸びが低下したほか、規模の大きい投資信託(私募やREITなども含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月▲5.2%→当月▲6.2%)、外債(前月10.5%→当月8.1%)の伸び率も低下したためだ。一方、国債(前月8.8%→当月11.1%)の伸び率上昇は一定の支えとなった。
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(2024年09月10日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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