2024年09月06日

急速に進む円安修正~今後のシナリオを展望する

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 7月上旬に1ドル161円台と歴史的な円安水準に達していたドル円は、以降急速に円安の修正が進み、足元では142円台とピーク比で約20円も円高の水準にある。この間に政府による円買い介入、日銀の利上げとタカ派色の打ち出し、FRBの早期利下げ示唆に加え、米景気後退懸念が台頭したためだ。日米金利差が縮小したうえ、投資環境の悪化を受けて投機筋の円売りが大規模に巻き戻され、強い円高圧力が発生した。
     
  2. 今後のドル円について、最大のカギになるのは米経済の動向となる。メインシナリオとしては、米経済の緩やかな減速が想定され、FRBは今月から政策金利を徐々に引き下げていくことになるだろう。一方で日銀が利上げ路線を継続する結果、日米金利差が縮小に向かうことを主因として、ドル円は円高基調になると見ている。投機筋の円売りは既に大方解消されていること、市場は既にやや前のめり的に米利下げを織り込んでいること、実需の円売りは健在であることから、急速な円高は回避される可能性が高い。ドル円は円安方向への一時的な動きを挟みつつ、緩やかな円高トレンドを辿り、今年の年末時点で1ドル143円、来年の年末時点で136円を付けると予想している。
     
  3. なお、上記見通しに織り込みづらい論点として自民党総裁選と米大統領選がある。選挙の結果やその影響については未だ極めて流動的であるため、上記のメインシナリオをベースとして、必要に応じて、選挙を受けた情勢変化を織り込んでいくことになる。
     
  4. 現時点ではリスクシナリオだが、仮に今後米国経済が大幅な悪化や景気後退に陥る場合には、FRBは大幅な利下げに踏み切る可能性が高い。この場合、日米金利差の大幅な縮小を通じてドル円には大きな円高圧力がかかることになる。FRBが再びゼロ金利政策を採るような事態となれば、ドル円は120円を大きく割り込んでも不思議ではない。

 
ドル円レートと日米金利差
■目次

1.トピック:急速に進む円安修正~今後のシナリオを展望する
  ・なぜ急速な円安修正が実現したのか?
  ・今後のメインシナリオ
  ・米景気後退なら大幅な円高へ
2.日銀金融政策(8月)
  ・(日銀)変更なし(会合開催なし)
  ・今後の予想
3.金融市場(8月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

(2024年09月06日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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