2024年09月18日

日銀短観(9月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは1ポイント低下の12と予想、価格転嫁の勢いに注目

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 9月短観では、注目度の高い大企業製造業で景況感の停滞が示されそうだ。昨年後半以降、景況感が一進一退を脱していない形になる。半導体需要の回復等が支えになったものの、中国向けをはじめとする輸出低迷や急激な為替変動が景況感の重石になったと考えられる。大企業非製造業では、長引く物価高による消費マインドの停滞に加え、地震臨時情報・台風上陸に伴う人出減少を受けて、景況感がやや悪化すると予想している。
     
  2. 先行きの景況感は方向感が分かれると予想。製造業では、米経済の減速懸念とさらなる円高懸念から、先行きにかけて景況感の弱含みが示される。他方、非製造業では、物価高による消費への悪影響に対する警戒が残るものの、堅調なインバウンド需要や既往の定額減税・賃上げによる消費回復期待を受けて、景況感がやや改善するだろう。ただし中小企業非製造業は先行きを慎重に見る傾向が強いだけに、悪化が示されると予想。
     
  3. 24年度の設備投資計画(全規模)は、前年比9.5%増と前回6月調査(8.4%増)から小幅に上方修正されると予想。例年9月調査では投資額が上乗せされる傾向が強いうえ、収益回復を受けた投資余力の改善に加え、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を背景として堅調な設備投資計画が維持されると見込んでいる。
     
  4. 今回の短観で特に注目されるのは企業の価格設定スタンスを表す「販売価格判断DI」の動向だ。前回以降、急速に円安の修正が進んだことで、輸入物価の上昇圧力は減退しつつある。そうした中でも、企業が賃上げ原資確保のために価格引き上げの勢いを維持する意向かが着眼点となる。また、賃上げの原資となる「収益計画」等も注目点になる。総合的に見て、「国内経済・物価が日銀の見通しに沿った経路を辿っている(オントラックにある)」と判断できるものになるかどうかが、今後の利上げの可能性や時期を占う手がかりとなる。

 
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

9月短観予測:景況感は弱含みだが投資は堅調維持、価格転嫁の勢いに注目
  ・非製造業の景況感もやや悪化
  ・設備投資計画は堅調を維持
  ・注目ポイント:価格転嫁見通し・収益計画など
  ・オントラックを裏付けるも、目先はハードル高い

(2024年09月18日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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