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- 資金循環統計(25年1-3月期)~個人金融資産は2195兆円と伸びが大きく鈍化、家計のリスク資産投資は加速
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2025年06月27日
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1.個人金融資産(25年3月末):前期末比では42兆円減
2025年3月末の個人金融資産残高は、前年比8兆円増(0.3%増)の2195兆円となった1。残高は過去3番目の高水準にあたるものの、株安・円高を受けて伸び率は前期末(昨年12月末)の同4.0%増から大きく鈍化した。年間で見た場合、資金の純流入が19兆円あった一方、株価が下落したことで時価変動2の影響がマイナス11兆円(うち国内株式等がマイナス11兆円、投資信託がマイナス1兆円)発生し、資産残高の増加が抑制された。
次に四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(昨年12月末)比で42兆円減と、大きく減少した。例年、1-3月期は一般的な賞与支給月を含まないことから資金の純流出が進みやすい傾向があり、今回も12兆円の純流出となった。ただし、物価上昇による支出押し上げの影響とみられるが、純流出の規模は昨年同期(6兆円)や直近10年平均(6兆円)を大きく上回っている。さらに、この間に株価が下落し、円高が進んだことで、時価変動の影響がマイナス30兆円(うち国内株式等がマイナス12兆円、投資信託がマイナス9兆円)発生し、資産残高を大きく目減りさせた(図表1~4)。
次に四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(昨年12月末)比で42兆円減と、大きく減少した。例年、1-3月期は一般的な賞与支給月を含まないことから資金の純流出が進みやすい傾向があり、今回も12兆円の純流出となった。ただし、物価上昇による支出押し上げの影響とみられるが、純流出の規模は昨年同期(6兆円)や直近10年平均(6兆円)を大きく上回っている。さらに、この間に株価が下落し、円高が進んだことで、時価変動の影響がマイナス30兆円(うち国内株式等がマイナス12兆円、投資信託がマイナス9兆円)発生し、資産残高を大きく目減りさせた(図表1~4)。

足元の4-6月期については、一般的な賞与支給月を含むことから、例年、資金の純流入が進む傾向がある。さらに、3月末以降、株価が一旦下落した後に大きく上昇したことから(図表4)、時価変動の影響もプラスに寄与しているものと推測される。
従って、6月末にかけて株価やドル円が足元に対して横ばい圏で推移すれば、6月末時点の個人金融資産残高は3月末時点の残高を大きく上回る可能性が高い。
1 今回、年次改定に伴い、2005年以降の計数が遡及改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
2.家計の資金流出入の詳細:リスク性資産へのシフトは継続
現預金の内訳としては、まず現金からの純流出(3.2兆円)は前年同期・一昨年同期並みだが、過去10年の平均(2.2兆円の純流出)を上回っている(図表8)。決済におけるキャッシュレス化の進行、インフレによる価値の目減り懸念に加え、昨年7月からの新紙幣発行を機にタンス預金の一部が取り崩されたためと推測される。
また、流動性預金(普通預金など)からの純流出(10.0兆円)は例年(過去10年平均で0.1兆円の純流出)を大きく上回り、流出が鮮明になっている。インフレに伴う支出の増加などに加え、インフレによる価値の目減り懸念を受けて、より金利の高い定期預金や個人向け国債、リスク性資産などへの資金シフトが生じたためだ。日銀による利上げを受けて、普通預金金利も引き上げられてはいるものの、金利水準が相対的に低いため、資金流出に弾みがついているようだ。
一方、定期性預金(定期預金など)の純流出(1.7兆円)は例年(過去10年平均で4.4兆円の純流出)を下回った。季節的な要因もあって純流出とはなったものの、利上げを受けて定期預金金利の水準が引き上げられたことを受けて、現金や流動性預金から一部資金が流入したり、満期到来分が再び定期預金として預け入れられたりしたことで純流出が抑制されたとみられる。
次に、リスク性資産等への投資フロー(時価の変動は含まない)を確認すると(図表7)、まず代表格である株式等が1.5兆円の純流入となった。トランプ関税への警戒や日銀の利上げ観測などにより株価が下落したことを受けて、押し目買いが優勢になったと推測される。
また、投資信託は3.4兆円の純流入となった。純流入の規模は前年同期や一昨年同期を上回り、2007年4-6月期以来の高水準にあたる。もともと新NISAの普及を追い風に堅調な純流入が続いていたうえ、株安・円高を受けて値ごろ感による買いも入ったとみられる。トレンドを見るために4半期累計フローを確認した場合でも(図表9)、投資信託への資金流入拡大が鮮明になっている。
その他資産では(図表10)、確定拠出年金内の投資信託(0.4兆円の純流入)で堅調な純流入が続いているほか、国内預金よりも金利水準が高い国債(0.8兆円の純流入)への資金流入が目立つ。とりわけ、海外株や債券への投資を示す対外証券投資は純流入額が1.6兆円に達し、現行統計で遡れる2005年以降で最高を記録している。
新NISAの普及や長引くインフレが追い風として続くなか、株安や円高の進行を投資機会と捉えた家計の積極化もあり、リスク性資産への投資が加速したとみられる。
また、流動性預金(普通預金など)からの純流出(10.0兆円)は例年(過去10年平均で0.1兆円の純流出)を大きく上回り、流出が鮮明になっている。インフレに伴う支出の増加などに加え、インフレによる価値の目減り懸念を受けて、より金利の高い定期預金や個人向け国債、リスク性資産などへの資金シフトが生じたためだ。日銀による利上げを受けて、普通預金金利も引き上げられてはいるものの、金利水準が相対的に低いため、資金流出に弾みがついているようだ。
一方、定期性預金(定期預金など)の純流出(1.7兆円)は例年(過去10年平均で4.4兆円の純流出)を下回った。季節的な要因もあって純流出とはなったものの、利上げを受けて定期預金金利の水準が引き上げられたことを受けて、現金や流動性預金から一部資金が流入したり、満期到来分が再び定期預金として預け入れられたりしたことで純流出が抑制されたとみられる。
次に、リスク性資産等への投資フロー(時価の変動は含まない)を確認すると(図表7)、まず代表格である株式等が1.5兆円の純流入となった。トランプ関税への警戒や日銀の利上げ観測などにより株価が下落したことを受けて、押し目買いが優勢になったと推測される。
また、投資信託は3.4兆円の純流入となった。純流入の規模は前年同期や一昨年同期を上回り、2007年4-6月期以来の高水準にあたる。もともと新NISAの普及を追い風に堅調な純流入が続いていたうえ、株安・円高を受けて値ごろ感による買いも入ったとみられる。トレンドを見るために4半期累計フローを確認した場合でも(図表9)、投資信託への資金流入拡大が鮮明になっている。
その他資産では(図表10)、確定拠出年金内の投資信託(0.4兆円の純流入)で堅調な純流入が続いているほか、国内預金よりも金利水準が高い国債(0.8兆円の純流入)への資金流入が目立つ。とりわけ、海外株や債券への投資を示す対外証券投資は純流入額が1.6兆円に達し、現行統計で遡れる2005年以降で最高を記録している。
新NISAの普及や長引くインフレが追い風として続くなか、株安や円高の進行を投資機会と捉えた家計の積極化もあり、リスク性資産への投資が加速したとみられる。
3.その他注目点:家計は再び資金不足に、日銀の国債保有割合は緩やかに低下

政府部門の資金不足は0.1兆円と10-12月(0.5兆円の資金不足)からやや縮小した。政府部門の資金不足は近年縮小傾向にあり、2期連続でほぼゼロ近傍となっている。好調な企業業績や物価上昇によって、税収が押し上げられたためと考えられる。
なお、海外部門は7.1兆円の資金不足(10-12月期は8.1兆円の資金不足)と引き続き大幅な資金不足であった。

最大保有者であり、国債の保有圧縮に動いている日銀の国債保有高は3月末時点で547兆円と12月末から14兆円減少した。ただし、この間に金利上昇に伴う時価下落発生しているため、時価の変動を除いたベースの保有高減少は5兆円に留まる。
この結果、日銀の保有シェアは46.0%と12月末(46.3%)を若干下回った(図表12)。日銀の保有シェアは2023年末をピークとしてごく緩やかな低下基調にある。このうち1年超の長期国債に限った場合の日銀のシェアは51.7%(12月末は52.1%)となっており、引き続き全体の過半を日銀が保有している点は変わらない。
なお、長期国債について、1-3月期の主な投資家別のフローを見ると、日銀が4.5兆円減、年金・保険が0.6兆円減となる一方、預金取扱機関が3.2兆円増、海外が6.2兆円増となっており、日銀が長期国債の買入れを段階的に減らしている分を銀行や海外勢が賄っている構図にある。
日銀は昨年7月に公表し、今年6月に見直し・延長を行った計画に基づいて、長期国債買入れの減額を続けていく。日銀の国債保有高が減少を続けていくなかで、今後どの投資家がどれだけ肩代わりをしていくのかが引き続き注目される。
(2025年06月27日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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