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- 貸出・マネタリー統計(25年5月)~都銀と地銀で貸出の勢いに開き、新規貸出金利が大きく上昇
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2025年06月10日
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1.貸出動向:地銀の貸出が堅調を維持
(貸出残高)
6月9日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、5月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.61%と前月(同2.49%)からやや上昇した(図表1)。伸び率の上昇は3カ月ぶりとなる。
業態別では、都銀等の伸びが前年比1.34%(前月は1.25%)、地銀(第2地銀を含む)の伸びが同3.71(前月は3.56%)とそれぞれやや上昇している(図表2)。外貨建て貸出の多い都銀は為替の影響を受けやすく、(前年比での)円高拡大が伸びの抑制に繋がっているが、大口が剥落したためか、実勢としてもやや鈍化しているとみられる。一方、地銀の伸びは高水準をキープしており、都銀との間でギャップが広がっている。
銀行貸出全体としては、円高が重石となる一方、各種コスト増加に伴う運転資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが引き続き下支えになっていると考えられる。
6月9日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、5月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.61%と前月(同2.49%)からやや上昇した(図表1)。伸び率の上昇は3カ月ぶりとなる。
業態別では、都銀等の伸びが前年比1.34%(前月は1.25%)、地銀(第2地銀を含む)の伸びが同3.71(前月は3.56%)とそれぞれやや上昇している(図表2)。外貨建て貸出の多い都銀は為替の影響を受けやすく、(前年比での)円高拡大が伸びの抑制に繋がっているが、大口が剥落したためか、実勢としてもやや鈍化しているとみられる。一方、地銀の伸びは高水準をキープしており、都銀との間でギャップが広がっている。
銀行貸出全体としては、円高が重石となる一方、各種コスト増加に伴う運転資金需要、M&A・不動産向けの資金需要などが引き続き下支えになっていると考えられる。
(貸出金利)
3月の新規短期貸出金利は1.054%と前月(0.764%)から大きく上昇した(図表5)。当統計は月々の振れが大きいため、移動平均で均してトレンドを見ても、昨年秋以降の貸出金利上昇が鮮明になっている。日銀によるマイナス金利解除(昨年3月)・利上げ(昨年7月・今年1月)が、短期市場金利や短期プライムレートの上昇を通じて波及している。ただし、今年1月利上げ分の波及はまだ途上と考えられることから、当面の新規短期貸出金利にはまだ上昇余地があると考えられる。
3月の新規長期貸出金利は1.348%と前月(1.224%)から大きく上昇した(図表6)。移動平均で見ても、緩やかな金利上昇トレンドが確認できる。変動金利型は利上げの浸透によって、固定金利型は主な基準となる10年などの国債利回りが上昇したことが、それぞれ貸出金利上昇に弾みを付けたと考えられる。4月以降は10年国債利回りが一進一退の展開となっているものの、基本的に高止まっているうえ、変動型への1月利上げの波及が続くと見込まれることから、当面の新規長期貸出金利にも上昇余地があると考えられる。
3月の新規短期貸出金利は1.054%と前月(0.764%)から大きく上昇した(図表5)。当統計は月々の振れが大きいため、移動平均で均してトレンドを見ても、昨年秋以降の貸出金利上昇が鮮明になっている。日銀によるマイナス金利解除(昨年3月)・利上げ(昨年7月・今年1月)が、短期市場金利や短期プライムレートの上昇を通じて波及している。ただし、今年1月利上げ分の波及はまだ途上と考えられることから、当面の新規短期貸出金利にはまだ上昇余地があると考えられる。
3月の新規長期貸出金利は1.348%と前月(1.224%)から大きく上昇した(図表6)。移動平均で見ても、緩やかな金利上昇トレンドが確認できる。変動金利型は利上げの浸透によって、固定金利型は主な基準となる10年などの国債利回りが上昇したことが、それぞれ貸出金利上昇に弾みを付けたと考えられる。4月以降は10年国債利回りが一進一退の展開となっているものの、基本的に高止まっているうえ、変動型への1月利上げの波及が続くと見込まれることから、当面の新規長期貸出金利にも上昇余地があると考えられる。
2.マネタリーベース:特殊要因によりマイナス幅が縮小
6月3日に発表された5月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベース(平残)の伸び率は前年比▲3.4%と9カ月連続の前年割れながら、前月(同▲4.8%)からマイナス幅を縮小した(図表7)。
マイナス幅縮小の要因は、マネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金のマイナス幅縮小である。比較の対象となる昨年5月は政府による円買い介入を受けて日銀当座預金から9.8兆円の資金が吸収されていたため、今年はその裏が出る形で日銀当座預金の減少が緩和されたという特殊要因が背景にある。一方、金融政策正常化の一環として、日銀が昨年8月から資金供給要因である長期国債買入れの減額を開始し、減額幅を徐々に拡大していることは、引き続き、日銀当座預金の伸び率押し下げに働いている(図表8)。
これに加えて、日銀券発行高の伸び率が同▲2.0%(前月も▲2.0%)、貨幣流通高が同▲1.4%(前月も▲1.4%)とそれぞれマイナス幅を広げたことも、マネタリーベースのマイナス定着に繋がっている(図表7)。キャッシュレス化の進展に加え、インフレによるタンス預金の目減り懸念等により、現金離れが進んでいるものと考えられる1。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、5月のマネタリーベースは前月比6.4兆円増と3カ月ぶりにプラスに転じている(図表9)。詳細は不明ながら、前年5月の円買い介入資金の吸収が季節要因の歪みに繋がっている可能性がある。
日銀は今月の金融政策決定会合において長期国債買入れの中間評価を行い、来年3月までの現行計画の再検討と来年4月以降の計画の策定を行う予定になっている。日銀は減額を継続する姿勢を示唆していることから、今後も資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進められることで、マネタリーベースはじわじわと減少幅を広げていくと見込まれる。
マイナス幅縮小の要因は、マネタリーベースの約8割を占める日銀当座預金のマイナス幅縮小である。比較の対象となる昨年5月は政府による円買い介入を受けて日銀当座預金から9.8兆円の資金が吸収されていたため、今年はその裏が出る形で日銀当座預金の減少が緩和されたという特殊要因が背景にある。一方、金融政策正常化の一環として、日銀が昨年8月から資金供給要因である長期国債買入れの減額を開始し、減額幅を徐々に拡大していることは、引き続き、日銀当座預金の伸び率押し下げに働いている(図表8)。
これに加えて、日銀券発行高の伸び率が同▲2.0%(前月も▲2.0%)、貨幣流通高が同▲1.4%(前月も▲1.4%)とそれぞれマイナス幅を広げたことも、マネタリーベースのマイナス定着に繋がっている(図表7)。キャッシュレス化の進展に加え、インフレによるタンス預金の目減り懸念等により、現金離れが進んでいるものと考えられる1。
なお、季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ると、5月のマネタリーベースは前月比6.4兆円増と3カ月ぶりにプラスに転じている(図表9)。詳細は不明ながら、前年5月の円買い介入資金の吸収が季節要因の歪みに繋がっている可能性がある。
日銀は今月の金融政策決定会合において長期国債買入れの中間評価を行い、来年3月までの現行計画の再検討と来年4月以降の計画の策定を行う予定になっている。日銀は減額を継続する姿勢を示唆していることから、今後も資金供給要因である長期国債買入れの減額が緩やかに進められることで、マネタリーベースはじわじわと減少幅を広げていくと見込まれる。
1 詳細は拙稿「止まらない「現金離れ」~「現金」の未来を考える」(Weeklyエコノミスト・レター 2025-06-06)をご参照ください。
3.マネーストック:普通預金が2カ月連続で前年割れに
6月10日に発表された5月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比0.64%(前月は0.49%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同0.23%(前月は0.11%)と、ともにやや持ち直したが、ともに前年割れをうかがう水準で低迷している(図表11)。貸出(による信用創造)の伸び鈍化や財政赤字の縮小、リスク性資産等への資金シフトが通貨量の抑制に働いているとみられる。
M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月▲0.4%→当月▲0.2%)の伸びがやや持ち直したとはいえ、2カ月連続の前年割れとなり、全体の伸び率を抑制した。また、現金通貨(前月▲2.6%→当月▲2.4%)の伸びも18カ月連続で前年を割り込んでおり、全体の重石となっている(図表12)。インフレが続く中で、低金利の普通預金やゼロ金利の現金を回避する動きが強まっているとみられる。現金についてはキャッシュレス化の流れも逆風になっている。
一方、主に定期預金を意味する準通貨の伸びは前年比1.9%(前月は同2.1%)と引き続きプラス圏で堅調に推移し、M3の下支えになっている。判明している4月までの内訳では、一般法人(企業)が前年比13.5%(前月は15.1%)と二桁の伸びを続けているほか(図表13)、個人の伸びも前年比▲1.5%(前月は▲1.9%)と、順調にマイナス幅を縮小している。
日銀による金融政策正常化の進捗を受けて、多くの銀行が預金金利の段階的な引き上げに動いた結果(図表14)、定期預金金利の水準が上がったうえ、従来はほぼゼロであった普通預金との金利差も広がったことで、企業や一部家計において、普通預金から定期預金へ資金をシフトする動きが広がっていると見られる。
M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月▲0.4%→当月▲0.2%)の伸びがやや持ち直したとはいえ、2カ月連続の前年割れとなり、全体の伸び率を抑制した。また、現金通貨(前月▲2.6%→当月▲2.4%)の伸びも18カ月連続で前年を割り込んでおり、全体の重石となっている(図表12)。インフレが続く中で、低金利の普通預金やゼロ金利の現金を回避する動きが強まっているとみられる。現金についてはキャッシュレス化の流れも逆風になっている。
一方、主に定期預金を意味する準通貨の伸びは前年比1.9%(前月は同2.1%)と引き続きプラス圏で堅調に推移し、M3の下支えになっている。判明している4月までの内訳では、一般法人(企業)が前年比13.5%(前月は15.1%)と二桁の伸びを続けているほか(図表13)、個人の伸びも前年比▲1.5%(前月は▲1.9%)と、順調にマイナス幅を縮小している。
日銀による金融政策正常化の進捗を受けて、多くの銀行が預金金利の段階的な引き上げに動いた結果(図表14)、定期預金金利の水準が上がったうえ、従来はほぼゼロであった普通預金との金利差も広がったことで、企業や一部家計において、普通預金から定期預金へ資金をシフトする動きが広がっていると見られる。
なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比1.42%(前月は2.15%)と大幅に低下した(図表11)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びはやや上昇したものの、規模の大きい金銭の信託(前月7.8%→当月3.3%)の伸びが大きく低下したことが響いた。
それ以外では、預金よりも高い金利が得られる国債(前月41.9%→当月35.3%)の伸びもやや低下したものの、極めて高い伸びが続いている。一方、投資信託(私募やREITなどを含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月1.8%→当月3.6%)の伸びがややプラス幅を拡大している。
内訳では、既述の通り、M3の伸びはやや上昇したものの、規模の大きい金銭の信託(前月7.8%→当月3.3%)の伸びが大きく低下したことが響いた。
それ以外では、預金よりも高い金利が得られる国債(前月41.9%→当月35.3%)の伸びもやや低下したものの、極めて高い伸びが続いている。一方、投資信託(私募やREITなどを含み企業保有分も合わせた元本ベース、前月1.8%→当月3.6%)の伸びがややプラス幅を拡大している。
(2025年06月10日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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