2024年09月13日

インド消費者物価(24年8月)~8月のCPI上昇率は小幅上昇も2ヵ月連続で物価目標を下回る

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

文字サイズ

インド統計・計画実施省が9月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、24年8月のCPI上昇率は前年同月比3.7%と、前月の同3.5%から上昇し(図表1)、事前の市場予想1(同3.5%)を小幅に上回る結果だった。

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.1%(前月:同3.0%)、農村部が同4.2%(前月:同4.1%)となり、それぞれ小幅に上昇した。

8月のCPIの内訳をみると、主に食品の上昇が全体を押し上げた。

まず食品は前年同月比5.7%となり、前月の同5.4%から上昇した(図表2)。食品のうち、野菜(同10.7%)が2ヵ月ぶりに二桁増となり、果物(同6.5%)も加速した。他方、高騰が続く豆類(同14.8%)と穀物製品(同8.1%)、肉・魚(同4.3%)は増勢が鈍化したほか、香辛料(前年同月比▲4.4%)と食用油(同▲0.9%)は前月に続いて減少した。牛乳・乳製品(同3.0%)、加工食品(同3.5%)は落ち着いた値動きとなった。

燃料・電力は前年同月比▲5.3%となり、12ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.4%で前月から横ばいの伸びとなった。携帯電話料金(同10.5%)の更なる値上げがコアCPIを押し上げた一方、高騰が続く金価格は7月の国家予算で発表された輸入関税の引下げにより鈍化した。カテゴリー別にみると、高めの伸びが続くパーソナルケア(同7.9%)は増勢が鈍化したほか、教育(同3.7%)や住宅(同2.7%)、衣服・靴(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.4%)、娯楽(同2.3%)、輸送・通信(同2.3%)は落ち着いた伸びが続いた。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
インフレ率(CPI上昇率)は今年+5%前後の水準で推移していたが、7月は野菜や果物を中心に食品価格が鈍化して2019年8月以来の低水準となった。8月は小幅の上昇にとどまり、2ヵ月連続でインド準備銀行(RBI)の物価目標の中央値である4%を下回っている(図表3)。もっとも直近2カ月は前年同期の水準が高かったためベース効果によりCPIが押し下げられただけであり、9月は4%台後半までインフレが加速するだろう。もっとも、これは一時的な上昇となりそうだ。今年の南西モンスーンの降雨量は全国的にみると平年を+8%上回り、カリフ作の総播種面積が前年比+2.2%増加している。10月以降にカリフ作物が市場に出回るようになると食品価格が再び抑制されるものとみられ、インフレ率が再び4%付近で推移するだろう。従って、RBIは10月の金融政策委員会(MPC)で金融政策のスタンスを中立に変更し、12月の会合で利下げを実施すると予想する。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標
 
1 Bloomberg集計の中央値。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年09月13日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【インド消費者物価(24年8月)~8月のCPI上昇率は小幅上昇も2ヵ月連続で物価目標を下回る】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

インド消費者物価(24年8月)~8月のCPI上昇率は小幅上昇も2ヵ月連続で物価目標を下回るのレポート Topへ