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- ベトナム経済:25年7-9月期の成長率は前年同期比8.23%増~追加関税後も高成長を維持
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2025年10月07日
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1.結果の概要:高成長で横ばいの動き

7-9月期の実質GDPを産業別にみると、主に産業・建設業の加速が成長率上昇に繋がった。
まず産業・建設業では前年同期比9.46%増(前期:同8.82%増)と上昇した。内訳をみると、主力の加工・製造業が同9.98%増(前期:同10.34%増)、建設業が同7.94%増(前期:同10.88%増)と、それぞれ増勢が鈍化した一方、鉱業が同7.78%増(前期:同2.57%減)、電気・ガス業が同10.01%増(前期:同3.62%増)と、それぞれ大きく上昇した。
GDPの4割強を占めるサービス業は同8.56%増(前期:同9.06%増)とやや鈍化した。内訳では、管理・支援サービス(同13.72%)や運輸・倉庫業(同10.66%増)、宿泊・飲食業(同10.46%増)が高成長となった。また卸売・小売業(同8.98%増)や金融業(同7.71%増)、情報・通信業(同7.94%増)、教育・訓練(同7.61%増)、専門・科学技術サービス(同7.64%増)についても堅調に推移した。一方、不動産業(同5.24%増)と保健・社会支援活動(同4.99%増)は相対的に緩やかな伸びにとどまった。
農林水産業は前年同期比3.74%増(前期:同3.95%増)となり、安定した成長を維持した。
1 10月6日、ベトナム統計総局(GSO)が2025年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2.ベトナム経済の現状と先行きのポイント
ベトナム経済は、2025年に入り米国の関税政策を巡る不確実性が高まるなか、上半期の成長率が前年同期比7.64%と、追加関税を控えた駆け込み輸出の拡大と政府の支援策を受けて高成長となった。そして今回発表された7-9月期の成長率は前年同期比8.23%と、4-6月期(同+8.19%)から横ばいの成長となり、市場予想2(同+7.15%)を大きく上回った。ベトナム経済は8月7日の米国追加関税(対米輸出品に20%、第三国からの積み替え品に40%)の発動により、上半期に生じた駆け込み輸出の反動減が生じて、7-9月期の成長率が低下すると懸念されていたが、実際には予想を上回る高成長だった。
7-9月期の高成長は産業・建設業の加速によるものだ。主力の加工・製造業(前年同期比+9.98%)は前期の同+10.75%からやや減速したものの、依然として高成長を維持している。月次の貿易統計をみると、対米輸出は追加関税が適用された7月にピークをつけ、8~9月は上半期の駆け込み需要の反動減が生じているが、その影響は限定的であった(図表2、図表3)。また東アジア向けの出荷が伸びて、7-9月期の財輸出(全体)は前年同期比+18.2%の大幅な増加だった。電子機器・スマートフォン関連の輸出は韓国・台湾企業の生産移管により押し上げられたものとみられる。
また内需が非常に強かったことも、加工・製造業やサービス業(同+8.56%)の成長を下支えた。安定した労働市場と賃金上昇により小売売上高は今年に入って+10%前後の伸びが続いている(図表4)。またインバウンド需要の回復も寄与した。7-9月期の外国人旅行者数は前年同期比+17.8%と大幅な増加が続いている(図表5)。このほか、公共投資の執行が加速したことや、不調だった不動産業が回復傾向にあることも内需の好調に繋がった。
7-9月期の高成長は産業・建設業の加速によるものだ。主力の加工・製造業(前年同期比+9.98%)は前期の同+10.75%からやや減速したものの、依然として高成長を維持している。月次の貿易統計をみると、対米輸出は追加関税が適用された7月にピークをつけ、8~9月は上半期の駆け込み需要の反動減が生じているが、その影響は限定的であった(図表2、図表3)。また東アジア向けの出荷が伸びて、7-9月期の財輸出(全体)は前年同期比+18.2%の大幅な増加だった。電子機器・スマートフォン関連の輸出は韓国・台湾企業の生産移管により押し上げられたものとみられる。
また内需が非常に強かったことも、加工・製造業やサービス業(同+8.56%)の成長を下支えた。安定した労働市場と賃金上昇により小売売上高は今年に入って+10%前後の伸びが続いている(図表4)。またインバウンド需要の回復も寄与した。7-9月期の外国人旅行者数は前年同期比+17.8%と大幅な増加が続いている(図表5)。このほか、公共投資の執行が加速したことや、不調だった不動産業が回復傾向にあることも内需の好調に繋がった。
7-9月期のGDP統計より、ベトナム経済は米国による追加関税発動後も、駆け込み輸出の反動減が想定より小さく、内需とハイテク輸出が堅調であることが明らかとなった。しかし、今後も追加関税の影響で繊維・衣類や履物など労働集約的な産業では対米輸出の鈍化が続いて、労働市場に悪影響が広がる恐れがある。また今のところスマートフォンや電気電子機器は相互関税の対象外であったり、韓国・台湾・米系企業の生産拠点が維持されていたりするため、対米輸出の落ち込みは限定的だが、今後米国の追加関税が電子製品やスマホ分野に拡大するか否かが最大のリスクといえる。仮に適用されれば輸出が落ち込み、ベトナム主力産業への大打撃となるだろう。
2 Bloomberg調査
2 Bloomberg調査
(2025年10月07日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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