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2025年09月16日

インド消費者物価(25年9月)~8月のCPI上昇率は+2.1%に上昇、GST合理化でインフレ見通しは緩和

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が9月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年8月のCPI上昇率は前年同月比2.1%と、前月の同1.6%から上昇(図表1)、事前の市場予想(同2.1%)1と一致した。
地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比2.4%(前月:同2.1%)、農村部が同1.7%(前月:同1.2%)と、それぞれ上昇した。
 

品目別にみると、主に食品価格の上昇がCPIを押し上げた。

まず食品は前年同月比▲0.7%と低迷したが、前月の同▲1.8%からマイナス幅が縮小した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲15.9%(前月:同▲20.7%)となり大幅な価格下落が続いたが、前月比では+3.3%と4か月連続で増加している。また豆類(前年同月比▲14.5%)や香辛料(同▲3.2%)の減少が続いたほか、国際価格の緩和により穀物製品(同2.7%)や牛乳・乳製品(同2.6%)加工食品(同4.2%)が鈍化した。他方、油脂(同21.2%)と果物(同11.7%)は二桁増が続いたほか、肉・魚(同+1.5%)がプラスの伸びに転じた。なお油脂価格の高騰は昨年9月の食用油の関税引き上げや国際的な価格上昇による影響が大きい。

燃料・電力は前年同月比2.4%(前月:同2.7%)と、国際原油価格の低下を受けて鈍化した。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.1%となり、前月から横ばいで推移した。カテゴリー別にみると、金価格の高騰によりパーソナルケア(同16.6%)が二桁増を続けた一方、教育(同3.6%)や住宅(同3.1%)、衣料品・履物(同2.3%)、娯楽(同2.2%)、輸送・通信(同1.9%)は前月から低下した。

(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
8月のインフレ率(CPI上昇率)は、最近の物価押下げ要因であった食品価格のベース効果が減衰したことや、金や油脂などの国際商品市況の上昇、ルピー安に伴う輸入インフレ圧力を背景に10か月ぶりに上向き、インド準備銀行(RBI)の目標レンジである+2%~6%の範囲内に収まった。

同様の要因からインフレ率は今後数か月で+3%前後まで上昇するだろうが、今年は南西モンスーンと収穫量の見通しが良好な上、次世代GST導入に伴う減税が今後の物価上昇を抑制する見込みだ。

なお、次世代GSTについては9月22日に導入され、税率は5%と18%の2つの区分に統合されることなり、従来の12%と28%の区分にあった品目がより低い税率に移行したり、生活必需品が免除されたりする一方、贅沢品は40%の税率が適用されることとなる。したがって、新税率が適用されると、生活必需品・サービスの価格低下が見込まれる。
(図表3)インフレ率と政策金利 米国による追加関税等を受けて外需の見通しが不透明な状況が続くなか、こうしたインフレ見通しの緩和や、RBIの成長重視の姿勢から早ければ10月の金融政策会合で追加利下げの実施が予想される(図表3)。ただし、最近では主要な農業州である北部パンジャブ州で豪雨による作物被害が発生しており、食品価格の持続的な上昇は今後の懸念材料となっている。
 
1 Bloomberg集計の中央値。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月16日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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