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縮小を続ける夫婦の年齢差-平均3歳差は「第二次世界大戦直後」という事実

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
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日本の少子化(出生大幅減)の主因は婚姻減(未婚化)である。
結婚に関して、筆者は2020年から全国の都道府県の結婚支援者(自治体センター、結婚相談所、支援団体)を主なメンバーとする研究会を主宰し、いわゆる「婚活」の実態を研究し続けてきた。
結婚に関する誤解が未だに多く見られるのは「結婚年齢」に関してである。
夫婦の年齢差に関しては、年々縮小して僅差となっているにも関わらず、男性上位婚に対する社会のイメージがあまりに強すぎるため、実態とかけ離れたイメージで活動を続ける、支援する者が後を絶たない。
本レポートを通してマッチングの実態を正確に把握することで、1人でも多くの結婚希望者がパートナー獲得の希望を叶え、また、統計的に有意性の高いライフデザイン支援が社会で拡大することを期待したい。
■目次
【結婚年齢は誤解の温床】
【年齢差また縮小へ】
【若い女性は登録しているのかモラハラ】
【アンコンシャスバイアスに注意】
【結婚年齢は誤解の温床】
その中でも、特に30代以上の年齢層で多発している誤解の1つが、夫婦の年齢差に関する誤解である。結論から先にいうと、一般的なイメージ以上に夫婦の年齢差はとても小さいのである。
【年齢差また縮小へ】
また、初婚同士カップルに比べると上の年齢層の男女の組み合わせ傾向となる再婚者も含めた全婚姻の平均年齢差も、四半世紀にわたり2.0歳以上2.5歳未満を続けてきたが、2024年には1.9歳差と初めて2歳差を切る状態となった。
結婚支援の現場ではアンコンシャスに「男性上位婚」発想の中高年支援者や活動者が少なくない中で、実態は上位婚時代から『平行婚』(筆者造語)時代へと確実に移行している。
それにもかかわらず、SNS等ではいまだに「男性と女性は年齢の価値が違う(はず)」という意見が散見されている。どこの誰の意見の転用かは不明だが「海外では、女性と異なり男性はワインのように熟成したほうがいい」といった投稿も見られてほとほと困っていると、筆者に連絡してきた結婚支援の現場関係者もいる。
このような実態と乖離した思い込みに基づくSNS上の「お気持ち表明」が、結婚希望がありつつも結婚に至らず不安になっている男女の結婚相手探しをさらに迷走させる傾向にあり、結婚年齢に関しては特に正確なデータをしっかり把握してから行動するという姿勢が、日本における未婚化解消のために必要不可欠となっているといえるだろう。
【若い女性は登録しているのかモラハラ】
つまり38歳の男性が5歳年下の33歳の女性(32歳の男性の場合は27歳の女性)と当然のように結婚できるわけがなく、また、38歳の男性が35歳の3歳年下女性と結婚することも発生割合から考えれば難しい(32歳の男性であれば29歳の女性との結婚)。再婚者を含む全婚姻平均でも、平均年齢差が3歳以上あったのは1971年までとなっている。平均3歳差は、現在団塊ジュニアである50代前半男女よりも上の男女の「親世代までの話」(今の若者の祖父母世代)である。
初婚同士の結婚(2024年)において、男女どちらかが上の1歳差までの結婚が全体の48.2%と半数を占め、3歳差までの結婚で7割超となる。同じ時期に中学生時代を過ごしている、または高校生時代を過ごしているような男女が成婚しやすい、というとイメージしやすいのではないだろうか。
【アンコンシャスバイアスに注意】
わかりやすくいうと「人は見たいように物事を見る」生き物なのである。そして年齢が上昇するにつれて、自らの周囲に既婚者が増え、特に30代に入ると選べる相手が急減し、若かりし頃のように合コンや飲み会の誘いも減ってくる。こうなると、確証バイアスに加えて正常性バイアスが発動し始める。こちらもわかりやすくいうと、「不安を払しょくするために都合のいい情報だけを信じ込む」行動である。
これらのバイアス行動は結婚を希望する本人もそうであるが、その親世代も同様で、自治体センターに「せっかく登録したのに、なぜうちの息子に20代の女性を紹介できないのか」とどなりこむ母親もいるという。その息子というのが40代で、センター職員が対応に苦慮した、というのもつい最近の話である。
結婚に関して正確なエビデンスを求め、情報のソースをしっかりたどる習慣が日本人にもっと身につけば、もしかすると日本の未婚化はもう少し軽減されるのかもしれない。
(2025年10月20日「研究員の眼」)
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03-3512-1878
- プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
【委員歴/ご依頼順(現職優先)】
1.政府
・【総務省統計局】
「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】
「若い世代視点からのライフデザインに関する検討会」構成員(2025年度)
「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【内閣府男女共同参画局】
「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府】
「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
2.自治体
・【富山県】
「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
・【高知県】
「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】
「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
・【愛知県豊田市】
「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
・【石川県】
「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【長野県伊那市】
「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
・【愛媛県松山市】
「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
3.民間団体
・【東京商工会議所】
東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】
えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】
「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
・【中外製薬株式会社】
「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
・【主宰研究会】
地方女性活性化研究会(2020年~)
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー
天野 馨南子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/10/20 | 縮小を続ける夫婦の年齢差-平均3歳差は「第二次世界大戦直後」という事実 | 天野 馨南子 | 研究員の眼 |
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