2021年09月24日

コロナ禍で増えるフリマアプリの利用-牽引役は学生など若者と子育て世帯、シニアでもじわり増加

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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4職業別~利用率の高い20・30歳代の多い正規雇用者(一般)、学生で利用率高く、コロナ禍で利用増
職業別に見ると、利用率は正規雇用者やパート・アルバイトなどの非正規雇用者で高い傾向がある(図表6)。なお、2021年7月の第5回調査のみ、20歳代のうち学生も対象に加えているのだが、学生の利用率は55.6%であり、正規雇用者等を上回る。

利用率の推移を見ると、正規雇用者(一般)や非正規雇用者、専業主婦・主夫では上昇傾向にあり、2020年6月と2021年7月を比べると、正規雇用者(一般)では約1割(37.7%→48.1%、+10.4%pt)、非正規雇用者(34.0%→39.2%で+5.2%pt)や専業主婦・主夫(26.5%→31.1%、+4.6%pt)へと5%程度上昇している。

コロナ前より利用が増えた層の割合は、利用率が上昇傾向にある正規雇用者(一般)や非正規雇用者、専業主婦・主夫に加えて、自営業・自由業や無職・その他でも上昇傾向が見られる。2020年6月と2021年7月を比べると、特に正規雇用者(一般)(8.7%→16.4%、+7.7%pt)での上昇が目立つ。

また、学生では2021年7月で利用が増えた割合は19.4%を占めて、正規雇用者(一般)等を上回る。

なお、正規雇用者(一般)では、前項で見たフリマアプリの利用率の高い20・30歳代が多く(20歳代が全体に占める割合は12.8%⇔正規雇用者(一般)では21.0%、同様に30歳代では全体17.6%に対して27.5%)、専業主婦・主夫では第一子誕生(全体6.9%に対して12.6%)など子育て世帯のほか、孫誕生(全体16.6%に対して30.9%)が多い(いずれも2021年7月の第5回調査、以下同様)。
図表6 職業別に見たフリマアプリ利用状況
5世帯年収別~現役世帯の多い400万円以上で利用率上昇、コロナ禍で利用増
世帯年収別に見ると、利用率は世帯年収400万円以上で比較的高い(図表7)。

利用率の推移を見ると、世帯年収200万円以上1,500万円未満の世帯ではおおむね上昇傾向にある。2020年6月と2021年7月を比べると、世帯年収1,200万円以上1,500万円未満では1割超(31.1%→44.4%、+13.3%pt)、800万円以上1,000万円未満(37.6%→44.4%、+6.9%pt)や1,000万円以上1,200万円未満(35.3%→42.2%、+6.9%pt)ではそれぞれ約7%上昇している。

コロナ前より利用が増えた層の割合は、世帯年収200万円以上ではおおむね上昇傾向にある。2020年6月と2021年7月を比べると、世帯年収1,200万円以上1,500万円未満(6.7%→18.1%、+11.4%pt)や800万円以上1,000万円未満(5.5%→15.6%、+10.1%pt)では約1割上昇している。また、世帯年収600万円以上800万円未満(8.0%→14.7%で+6.7%pt)や400万円以上600万円未満(8.6%→13.7%で+5.1%pt)でも1割未満だが比較的大きく上昇している。

なお、世帯年収400万円未満では60歳代以上(全体32.0%に対して約4割)が、1,000万円前後では50歳代(全体17.8%に対して2割台後半)が多く、600万円前後では40歳代や30歳代(全体4割弱に対して4割強)が比較的多い。また、世帯年収800万円前後では正規雇用者(一般)(全体4割弱に対して4割強)、世帯年収1,000万円前後では正規雇用者(管理職以上)(全体1割未満に対して2割~3割)が多い傾向がある。
図表7 世帯年収別に見たフリマアプリ利用状況
6収入減少への不安別~20・30歳代の多い非不安層で不安層より利用率が高い傾向
最後に、コロナ禍における自分や家族の収入減少に対する不安度別に見ると、利用率は不安層(「非常に不安」+「やや不安」)より非不安層(「全く不安でない」+「あまり不安でない」)の方が高い傾向があり、最も差の大きな2020年12月では前者の利用率は35.1%であるのに対して、後者は48.0%(+12.9%pt)である(図表8)。なお、各調査時点で不安層は全体の4~5割、非不安層は15%~2割を占める。

また、コロナ前より利用が増えた層の割合は、不安層も非不安層も上昇傾向を示している。
なお、不安層は40歳代(全体23.1%に対して26.1%)をピークに高年齢層で多い傾向があり、非不安層は20~30歳代(全体33.8%に対して47.2%)で多い。

ところで、2021年3月の第4回調査では、コロナ禍1年余りの就労収入の変化を捉えているのだが、就労収入の増減別にフリマアプリの利用率を見ると、減少層より増加層の方が利用率も、利用が増えた割合も高い(図表9)。なお、増加層では20・30歳代(全体33.8%に対して5~6割)が、減少層では40・50歳代(全体42.8%に対して5割前後)が多い。
図表8 自分や家族の収入減少への不安別に見たフリマアプリ利用状況

3――フリマアプリの利用

3――フリマアプリの利用はコロナ禍での収入減少より世代によるリテラシーや消費価値観の違いが影響

本稿では、コロナ禍で利用が増えているフリマアプリの利用に注目し、ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」のデータを用いて、フリマアプリの利用実態を捉えた。その結果、男女とも比較的若い年代や子の年齢の低い子育て世帯、学生で利用率が高く、これらの層を中心にコロナ禍で利用が増えていた。また、雇用情勢が悪化する中でも、40・50歳代などの収入減少への不安が強い層や収入が実際に減少した層と比べて、20・30歳代などの不安が弱い層や収入がむしろ増加した層で利用率は高まっていた。

つまり、コロナ禍におけるフリマアプリの利用増加は、雇用情勢の悪化による収入の補填というよりも、従来からフリマアプリを積極的に利用している若い世代を中心に伸びており、年齢、すなわちITリテラシーや消費に対する価値観の違い(モノを所有し続けるよりも使わなくなれば積極的に他者へ売る、モノの購入の際は中古品も有力な選択肢になり得ることなど)の影響が大きな様子がうかがえる。一方で、若い年代だけでなくシニアも含めて幅広い年齢層において、利用者層でもコロナ禍で利用を増やした層も拡大傾向にあり、フリマアプリは消費者がモノを得る手段の1つとして、今後、一層の成長が期待される。

なお、シェアリングエコノミー協会によると、2030年度の市場規模は現状ベースで成長した場合、フリマアプリなどのモノのシェアは1兆7,826億円(2020年+8,249億円で+86.1%)、シェアリングエコノミー全体では7兆4,719億円(+5兆3,715億円で+255.7%)の予測となっている。また、新型コロナウイルスによる不安、認知度が低い点等の課題が解決した場合、2030年度のモノのシェアは3兆3,407億円、市場全体では14兆1,526億円との予測だ。

ニッセイ基礎研究所ではコロナ禍で消費行動が変容する中で、継続的に調査を実施する予定であり(次回の第6回調査は9月下旬実施予定)、今後もフリマアプリをはじめとしたシェアリングサービスの利用動向全体に注目していきたい。
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

(2021年09月24日「基礎研レター」)

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