2021年07月20日

2020・2021年度特別調査 「第5回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

生活研究部 井上 智紀

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

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※ 調査結果内容の詳細については、全文ダウンロード(PDF)よりご覧ください。

1――調査概要

調査目的:
新型コロナウイルスの感染拡大によって暮らしが激変する中で、消費行動や働き方、生活不安などの状況を把握し、ウィズコロナ/アフターコロナの行動を予測する。

調査時期:
2021年7月5日~7日

調査対象:
全国の20~74歳の男女(株式会社マクロミルのモニター)
※第1~4回調査では20~60歳代を対象としていたため、今回の調査結果概要では比較のため20~60歳代の結果をお伝え致します。70歳代の結果は今後、順次報告予定の各研究員の個別レポートをご覧ください。

調査方法:
インターネット調査

有効回答数:
2,582(70歳代を除き、本資料の分析に用いた有効回答数は2,487)
 
調査内容:
 1|トピックス
 (1) 新型コロナウイルスのワクチン接種意向
 (2) ワクチンパスポートの国内活用
 (3) 今年の夏休みの予定
 (4) オリンピック後の期待と不安

2|新型コロナによる行動変容
 (1) 店舗やネットショッピングの利用
 (2) シェアリングサービスの利用
 (3) 移動手段の利用
 (4) 食事サービスの利用
 (5) メディアの利用
 (6) 働き方

3|新型コロナによる生活不安
 (1) 感染に関わる不安
 (2) 高齢家族関連不安
 (3) 経済不安
 (4) 人間関係不安
 (5) 働き方不安

4|今後の見通し
 (1) 感染拡大の収束・経済の見通し
 (2) 家庭生活の見通し
 (3) 働き方の見通し

5|回答者プロフィール
 
※ 調査結果の詳細については、随時、レポート等で公表予定。

2――調査結果のポイント

1|トピックス

(1) 新型コロナウイルスのワクチン接種意向
  • 高齢者に続き現役世代でもワクチン接種が進み、ワクチン接種が完了した、または目途がたっている割合は20~60歳代で3割強へと拡大している。一方、ワクチン接種に消極的な層は若いほど多く、20歳代の約1割は絶対に接種したくないと回答している。
     
  • ワクチン接種に積極的ではない理由の首位は副反応への心配で、3月の調査に引き続き過半数を占める。このほか、副反応の情報の少なさや安全性・効果が確認できていないことなどが続く。国内での接種が進んだことで、接種の進捗や情報の少なさに起因する理由の選択割合は低下している。
     
  • ワクチン接種に前向きになるための条件は、長期的な安全性や効果の確認、副反応の情報が4~5割を占め、ワクチン接種に積極的ではない理由(前項)と対応している。一方、ワクチン接種に前向きになることはない割合も約2割と目立つ。
     
  • ワクチン接種が進んだ後もマスク着用や社会的距離などの新しい生活様式は6割強が定着すると考えている。一方、4~5割が店舗での買い物や友人と会うこと、公共交通機関の利用といった外出を伴う行動の再開を期待している。また、4割前後がテレワークと併用した働き方になると考えている。
     
  • ワクチン接種後にやりたいことは圧倒的に国内旅行であり、過半数を占める。このほか、外食や友人と会うこと、店舗でのショッピングなど、コロナ禍で自粛傾向の強い外出を伴う行動が上位にあがる。

(2) ワクチンパスポートの国内利用
  • ワクチンパスポートの国内利用に過半数が肯定的。ただし、うち3割は活用対象については慎重に検討した方が良いと回答。
     
  • ワクチンパスポートの利用方法は介護施設や医療機関での面会制限の緩和のほか、飲食代金の割引きやポイントの割り増しなどの優待措置では前向きに捉えられる一方、パスポート保有者を限定したイベントやキャンペーンの実施については否定的な見方が比較的多い。

(3) 今年の夏休みの予定
  • 半数以上が遠出を避け、自宅や近所で過ごす予定とする中、高齢層では自宅からのオリンピック観戦にも関心。一方、若年層では帰省や近場の旅行、映画館・美術館など外出の計画も比較的多い
     
  • 夏休みの予算は過半がコロナ前より抑えており、コロナ前を超える予算を想定する層は海外や国内でも遠方への旅行を計画する層などに限られる。

(4) オリンピック後の期待と不安
  • 新型コロナウイルスの感染拡大や国内景気、雇用環境の悪化など不安感には同意する声が、政権支持率の向上や新型コロナウイルスへの不安感の払拭などオリンピック後への期待には否定する声が多く、総じて不安の大きさが期待を抱けない状況を生み出している様がうかがえる
2|新型コロナによる行動変容
  • コロナ禍で、キャッシュレス決済サービスやネットショッピングなどのデジタル手段の利用は増え続けている。7月の増加層はどちらも約4割を占め、昨年6月よりキャッシュレス決済サービスは約2割、ネットショッピングは約1割増えている。一方、店舗は引き続き利用控えが見られ、店舗によって温度差がある。スーパーなど主に食料や日用品を購入する店舗では減少層は2割台で横ばいだが、デパートなど主に衣料品や贅沢品を購入する店舗では減少層は約半数を占めて、昨年6月の水準に戻っている。よって、店舗の利用は最低限にとどめられる中で買い物手段のデジタルシフトが進行している様子がうかがえる。
     
  • シェアリングサービスでは、フリマアプリの売買は増えており、7月の増加層は約1割を占める。その他のサービスでは利用控え傾向が続く上、全体的に利用者層が減少傾向にある。なお、次頁に示すように、移動手段では自家用車などのセルフ手段の利用が増えているが、カーシェアなど他人とシェアする手段の利用は増えていない。
     
  • 移動手段では、自家用車や自転車、徒歩などのセルフ手段の利用が引き続き増えている。7月の増加層は自家用車や徒歩は約2割、自転車は約1割を占め、自家用車は昨年6月より約1割増えている。一方、公共交通機関では引き続き利用控えが見られる。当初より利用していない層が減り、必要に応じて利用を再開しているようだが、最低限の利用にとどめていると見られる。よって、公共交通機関の利用控えが続く中で、移動手段のセルフシフトが進んでいる様子がうかがえる。
     
  • 食事サービスの利用では、テイクアウトやデリバリーなどの中食手段の利用は増えているが、テイクアウトは増加傾向が続く一方、デリバリーは2020年9月以降、おおむね変わらない。7月の増加層はテイクアウトは約3割、デリバリーは約15%を占める。外食は引き続き利用控えが目立つとともに、利用控えの傾向は昨年の秋冬より強まっており、7月の減少層は6割台を占める。よって、外食控えが続く中で、テイクアウトを中心とした中食シフトが進んでいる様子がうかがえる。
     
  • メディアの利用では、すべてのメディアで引き続き利用増加が目立つ。また、新聞や雑誌以外では昨年6月より増加層は増えている。コロナ禍でメディア接触が増えた状態が続いており、メディアの影響力が増していると見られる。
     
  • 働き方では、引き続きテレワークによるデジタル行動が増え、対面のリアル行動が減っている。デジタル行動では、在宅勤務の7月の増加層は約2割を占め、昨年6月よりやや増えている。一方、リアル行動では、出社や(リアルとは限らないが)コミュニケーションなどの日常的な行動が減った状況は当初より緩和されているが、出張控えや会食控えは続いている。また、出張・会食控え傾向は昨年の冬より強まっており、7月の減少層は会食は4割台、出張は約3割を占める。
3|新型コロナによる生活不安
  • 感染に関わる不安では、依然として健康状態の悪化や治療・検査を受けられないこと、世間からの偏見などに5~6割が不安を感じているものの、全体的に冬頃をピークにやや弱まっている。
     
  • 高齢家族関連不安では、生活維持の難しさや運動機能・認知機能の低下への不安は、いずれも2020年6月よりやや強まっている(不安層は約4割)。昨年冬のピーク時より生活維持の難しさや認知機能低下への不安は弱まっているが、運動機能低下への不安は一層強まっている。
     
  • 日本経済や世界経済などマクロ環境については半数以上、自分や家族の収入減少や失業などのミクロ環境については4割前後が不安を感じているものの、全体的に昨年6月より不安は弱まっている。ただし、収入減少については昨年冬より不安がやや強まっている。
     
  • 人間関係不安(不安層は2~3割)は感染不安や経済不安より弱いものの、他の不安のように不安が弱まっているわけではない。特に、友人との距離や出会いの減少では不安が強まる状況が続いている。
     
  • 在宅勤務が増えることによる不安(不安層は1~2割)は全体的に昨年冬頃のピーク時より弱まっている。ただし、在宅勤務ができる仕事ではないために継続しにくくなることや集中力・モチベーションの低下についての不安は比較的強く、不安層が非不安層より多い
4|今後の見通し
  • 半年以内の感染拡大の収束や1年以内の経済・雇用回復の見通しは、引き続き否定的な見方が多く、6割前後が否定的。国内における感染拡大の収束については悲観的であるものの日本経済や雇用の見通しについては、回復への期待の高まりもうかがえる。
     
  • 家庭生活の見通しでは、産科等への通院や乳幼児の感染リスクから出産をためらい、少子化がさらに進行することについて、約4割がそう思っており、昨年6月より増えている。
     
  • 働き方の見通しでは、在宅勤務による成果主義への移行や自由時間の増加、ストレスの軽減など、いずれも関心の薄まりや在宅勤務慣れなどの影響か、肯定的な見方がやや弱まっている

<この調査に関するお問い合わせ先>
 pr_corona@nli-research.co.jp
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生活研究部

久我 尚子
(くが なおこ)

生活研究部

井上 智紀

生活研究部

金 明中
(きむ みょんじゅん)

保険研究部

村松 容子
(むらまつ ようこ)

生活研究部

坊 美生子
(ぼう みおこ)

(2021年07月20日「その他レポート」)

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【2020・2021年度特別調査 「第5回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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