ロシアの物価状況（25年7月）－総合指数は前年比8％台まで低下

経済研究部主任研究員高山武士

1．結果の概要：前年比で総合指数、コア指数のいずれも低下

8月13日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。

【総合指数（25年7月）】
・前年同月比は8.79％、市場予想¹（8.90％）より下振れ、前月（9.40％）から低下した（図表1）
・前月比は0.57％、市場予想（0.70％）より下振れ、前月（0.20％）から加速した

【コア指数²（25年7月）】
・前年同月比は8.83％、前月（8.70％）から低下した（図表2）
・前月比は0.25％、前月（0.36％）から加速した

¹ bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
² 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2．結果の詳細：7月は前月比では加速、公共料金の引き上げによるサービスインフレが主因

7月のロシアのインフレ率は前年比で8.79％となり、6月（8.90％）から低下、3月（10.34％）をピークに4か月連続で低下、24年11月（8.88％）以来の8％台となった。

インフレ率を大分類別に見ると、7月の前年比伸び率は食料品が10.79％（前月：11.91％）、財（非食料品）が4.07％（前月：4.47％）、サービスが11.85％（前月：12.02％）となり、いずれの大分類でも低下した。

前年比寄与度では食料品が4.2％ポイント程度、財（非食料品）が1.4％ポイント程度、サービスが3.3％ポイント程度と見られる（図表1）。

7月の前月比伸び率は、総合指数で0.57％（前月：0.20％）、コア指数で0.25％（前月：0.36％）となり、コア指数では低下したが総合指数では上昇した。その結果、総合指数はコロナ禍前の標準的な上昇率を上回り、コア指数はコロナ禍前の標準的な上昇率を下回った（2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35％、コア指数が約0.30％、図表3）。

前月比伸び率を大分類で見ると食料品が▲0.64％（前月：0.11％）、財（非食料品）が0.19％（前月：▲0.03％）、サービスが2.69％（前月：0.59％）となった。7月は公共料金の引き上げが実施されておりサービス物価の上昇率が高かった。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率（消費者物価上昇率）を見ると、最新の8月11日時点の前週比で▲0.08％であり4週連続のマイナスとなっている（図表4）。

ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待（1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある）は、7月は13.0％で6月（13.0％）から横ばい推移だった。なお、過去の傾向（期待インフレ率≒前年比インフレ率＋6％、図表5）と比較すると、期待インフレ率と実際のインフレ率との乖離が拡大している状況は続いている（期待インフレ率がやや低め）。

品目別の上昇率を見ると³（図表6）、7月は前年比でバター（23.84％）、魚・海鮮（21.14％）、乳製品（17.66％）、旅客サービス（17.22％）、文化サービス（17.20％）の伸び率が高い一方、卵（▲22.59％）、テレビ（▲7.51％）、グラニュー糖（▲5.54％）は前年比でもマイナスとなった。また、前月比では、住居・公益サービス（13.11％）の上昇率が相対的に大きい一方、青果物（▲7.12％）、卵（▲5.48％）、旅客サービス（▲3.29％）は下落幅が大きかった。

各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると（図表7・8）、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス（1.32％ポイント）、家庭サービス（0.60％ポイント、下落率への寄与が大きい品目は卵（▲0.13％ポイント）だった。

前月比上昇率の寄与では、住居・公益サービス（約1.00％ポイント）のプラス寄与が相対的に高い一方、青果物（約▲0.36％ポイント）、その他サービス（約▲0.25％ポイント）、旅客サービス（約▲0.07％ポイント）はマイナス寄与が大きく、また下落品目も多かった。

なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む6月の上昇率寄与は図表9・10の通りとなった。

³ 大分類である食料品、財（非食料品）、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの（中分類）のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。健康増進サービスおよび残差から算出されたその他サービスは前月比のみ。

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