2020年04月15日

若者の現在と10年後の未来~消費行動編-消費のデジタル化、新型コロナで変化が加速

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • ニッセイ基礎研究所が今年3月に実施した定量調査を用いて、若者(20~34歳の未婚者)の現在の消費行動を分析した。若者は『長く使えるものを買う』等の消費者共通の土台を持ちながらも、全体と比べてサブスクやシェアによる『所有より利用』志向が高い。また、モノを買うよりも、旅行やコンサートなどの体験消費を重視する『モノよりコト(サービス)』志向は、若者というよりも女性で強く見られる傾向である。
     
  • 情報収集行動については、若者は『SNS』志向が高いが、マスメディアの影響が勝ると考えている。背景には、SNSでは誰もが気軽に発信できる一方で、マスメディアでは誰もが発信できるわけではないといったメディアとしての性質の違いに加えて、そもそもメディアが何かということよりも、発信主体が誰かということに主眼が置かれていることも指摘できる。
     
  • 現在と10年後の未来に予想される消費行動や情報収集行動の状況を比べると、若者だけでなく幅広い年代で『所有より利用』『環境配慮』『(老後のための)貯蓄』『ネット交流』志向が高まる傾向がある。一方で現在でも利用意向の高い『キャッシュレス決済』『ネット通販』志向には大きな違いはない。なお、『SNS』志向が高まりながらも、『マスメディア』志向は依然として高く、10年後も両者の共存は続きそうだ。
     
  • 新型コロナウィルスの影響の打撃によって、予期せずして、近年、消費者で生じていた消費のデジタル化などの変化が加速している。外出制限で、イエナカ消費やコミュニケーションのデジタル化が進み、今、動画配信等のサブスク加入が増えていると聞く。また、リスク回避意識や先行き不安による節約意識を背景に、『ネット交流』志向や『(老後のための)節約』志向も消費者の希望如何によらず高まっているのではないか。
     
  • 新型コロナの終息後、アフターコロナの消費行動は、ビフォーコロナに戻るのではなく、これまで消費者で生じていた変化の流れが一気に進んだところで始まるのだろう。消費のデジタル化が加速した状況で、消費者はさらに何に価値を感じるのか、逆に、何に不便を感じているのか、企業活動は困難な状況だが、これらの状況を読み解くことで商機が見えそうだ。

■目次

1――はじめに~消費のデジタル化、新型コロナによって加速か
2――現在の消費行動
 ~サブスク・シェアで「所有より利用」志向は若者、「モノよりコト」志向は女性で高い
3――現在の情報収集行動
 ~若者は「SNS」志向が高いが、現在のところマスメディアの影響が大きい張
4――10年後の消費行動
 ~「所有より利用」「貯蓄」「環境配慮」「SNS」志向が全体で高まる一方、
  「マスメディア」志向も現在と同様に高い
5――おわりに~アフターコロナは消費行動の変化が一気に加速したところで始まる
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

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