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2025年07月28日

インバウンド消費の動向(2025年4-6月期)-四半期で1千万人超・2兆円超が続くが、割安感が薄れて単価減少

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 2025年4-6月期の訪日外客数(1,098万228人:推計値)は前年同期比で19.0%増加。最多は中国(全体の21.4%)、僅差で韓国(20.7%)が続く。今期の訪日外国人旅行消費額(2兆5,250億円:一次速報)は前年同期比で+18.0%増加。ただし、消費単価は約1割減少しており、この要因には為替がやや円高方向に触れ、高級ブランド品など日本での買い物に対する割安感が薄れたことがあげられる。特に、国内景気の動向も背景に中国や香港からの訪日客で消費単価減少が目立った。
     
  • 消費額を国籍・地域別に見ると、最多は中国(全体の20.4%)、次いで米国(14.1%)、台湾(11.5%)と続く。全体の消費額の内訳は、これまで約3割を占めていたモノ消費(「買い物代」)が26%台へ低下し、サービス消費が7割超を占めた。
     
  • 今後は、より日本ならではの体験を求める傾向が強まると見られるが、この背景には体験志向の高い欧米からの訪日客が増えていることがあげられる。加えて、アジア諸国からの観光客の多くがリピーターとなっており、観光名所や定番土産といった初回消費を一通り経験したことで、より深い体験を求めるようになっていると思われる。
     
  • 今後は、欧米圏でもリピーターが増えていくと見られ、体験型消費はさらに拡大していく可能性がある。今期は円高方向への為替変動が見られたが、日本は依然として、質の高いサービスを相対的に割安で体験できる旅行先としての魅力がある。訪日客数・リピーター数ともに増加の余地は大きく、日本らしさに触れる時間への需要は、今後さらに厚みを増していくことが期待される。


■目次

1――はじめに
 ~2024年のインバウンドは外客数・消費額ともに過去最高、2025年も拡大傾向が続く
2――訪日外客数
 ~2025年4-6月期は引き続き1千万人越、首位は中国21.4%、僅差で韓国20.7%
3――訪日外国人旅行消費額
 ~拡大傾向が続くも、割安感の低下で1人当たり消費額は減少
  1|全体の状況
   ~2025年4-6月期は引き続き2兆円越も、割安感低下で1人・1日当たり消費額は減少
  2|国籍・地域別の状況
   ~最多は中国で5千億円超、次いで平均泊数の長い米国、台湾、韓国が続く
4――訪日外国人旅行消費額の内訳
 ~サービス7割超・モノ3割弱、欧米諸国はサービス消費が8割超
  1|全体の状況
   ~円高で買い物代が再び減少、体験志向強まる消費構造の変化も
  2|国籍・地域による特徴
   ~モノ消費は中国が最多で東南アジアで、サービス消費は欧米諸国で多い
5――おわりに
 ~欧米客やリピーターの増加が促す、買い物から体験への消費構造の変化

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月28日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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