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2023年07月07日
NISAの拡充・恒久化
岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」は、( 1)NISA(少額投資非課税制度)の拡充・恒久化、( 2)iDeCo制度の改革、(3)中立的で信頼できるアドバイス提供を促す仕組み、( 4)雇用者に対する資産形成の強化、( 5)金融経済教育の充実、(6)国際金融センターの実現、( 7)顧客本位の業務運営、の7本柱で構成され、これらの取組みを一体で推進することで、「成長と資産所得の好循環」を実現するとしている。
このうち、第1の柱である「NISAの拡充・恒久化」は、投資枠(年間360万円、上限1800万円)の大幅な引き上げや投資枠の再利用(資産の組み換え)など、現行制度の課題解決に向けた抜本的見直しが図られて、来年1月より新たなNISA制度がスタートする[図表1]。
このうち、第1の柱である「NISAの拡充・恒久化」は、投資枠(年間360万円、上限1800万円)の大幅な引き上げや投資枠の再利用(資産の組み換え)など、現行制度の課題解決に向けた抜本的見直しが図られて、来年1月より新たなNISA制度がスタートする[図表1]。
これにより、各個人のライフステージ(就職、結婚、教育資金、住宅取得、退職など)に応じた資産運用が可能となり、今から楽しみに計画を練られている方も多いのではないだろうか。
一方、金融庁の調査によると、NISA口座の開設率は国民全体の2割程度に留まっており、NISAの魅力や活用が十分に知れ渡っていないようにも感じられる。
そこで、以下では、Jリート(不動産投資信託)*への投資を例に、一定の前提条件(分配金利回り4%、キャピタルリターン0%、税率20%)のもと、新NISAを活用した資産形成について考察する。
* Jリートは、オフィスビルなど収益不動産に投資し利益のほぼ全額を分配することで法人税が免除される金融商品である。市場全体の運用資産額は約26兆円、市場時価総額は約16兆円となっている(5月末)。
一方、金融庁の調査によると、NISA口座の開設率は国民全体の2割程度に留まっており、NISAの魅力や活用が十分に知れ渡っていないようにも感じられる。
そこで、以下では、Jリート(不動産投資信託)*への投資を例に、一定の前提条件(分配金利回り4%、キャピタルリターン0%、税率20%)のもと、新NISAを活用した資産形成について考察する。
* Jリートは、オフィスビルなど収益不動産に投資し利益のほぼ全額を分配することで法人税が免除される金融商品である。市場全体の運用資産額は約26兆円、市場時価総額は約16兆円となっている(5月末)。
長期・非課税・複利を味方に
次に、実際のJリートの収益率(03年3末~23年3末)を適用して計算すると、ケース①は20年後420万円、ケース②は20年後264万円となり、両者で156万円(税金41万円、複利効果115万円)の格差が生じる[図表3]。このように、長期の資産形成では、NISAによる税制優遇と分配金の再投資による複利効果が大きな効力を発揮することになる。
もちろん、上記のシミュレーションは将来にわたる投資リターンを約束するものではない。しかし、「派手さはないが、安定成長が期待できる金融資産は長期投資家に素晴らしいリターンをもたらしてくれること」、「高利回りを謳う詐欺的商品に手を出す必要など全くないこと」を示唆している。
もちろん、上記のシミュレーションは将来にわたる投資リターンを約束するものではない。しかし、「派手さはないが、安定成長が期待できる金融資産は長期投資家に素晴らしいリターンをもたらしてくれること」、「高利回りを謳う詐欺的商品に手を出す必要など全くないこと」を示唆している。
いずれにしても、今回の「資産所得倍増プラン」のもと、家計・個人が2,000兆円を超える金融資産を有効活用し、企業価値の向上がもたらす成長の果実を享受することで、より豊かな社会の実現を期待したい。
(2023年07月07日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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