2024年05月31日

雇用関連統計24年4月-経済活動の停滞を反映し、製造業中心に弱い動き

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から横ばいの2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が5月31日に公表した労働力調査によると、24年4月の完全失業率は前月から横ばいの2.6%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。

労働力人口が前月から7万人の減少となる中、就業者が前月から9万人減少し、失業者は前月から1万人増加の183万人(いずれも季節調整値)となった。失業率は横ばいだが、3月に続き、労働力人口、就業者がともに減少しており、内容は悪い。
就業者数は前年差9万人増(3月:同27万人増)と21ヵ月連続で増加したが、前月から増加幅が縮小した。産業別には、卸売・小売業が前年差5万人増(3月:同1万人減)と2ヵ月ぶりに増加し、宿泊・飲食サービス業が前年差25万人増(3月:同14万人増)と22ヵ月連続、医療・福祉が前年差8万人増(3月:同44万人増)と3ヵ月連続で増加したが、生産活動の低迷を反映し、製造業が前年差27万人減(3月:同57万人減)、と2ヵ月連続で減少した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ23万人増(3月:同41万人増)と26ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差2万人増(3月:11万人増)と6ヵ連続、非正規の職員・従業員数が前年差20万人増(3月:同30万人増)と8ヵ月連続で増加した。

2.求人数の減少が続く

厚生労働省が5月31日に公表した一般職業紹介状況によると、24年4月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.26倍(QUICK集計・事前予想:1.28倍、当社予想も1.28倍)となった。有効求人数が前月比▲1.3%の減少となり、有効求職者数(同▲0.3%)を上回る減少幅となったことが求人倍率の低下につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.21ポイント低下の2.17倍となった。新規求人数が前月比▲4.1%の減少となる一方、新規求職申込件数が同5.2%の増加となった。

新規求人数は前年比▲2.3%(3月:同▲7.4%)と8ヵ月連続で減少した。産業別には、生活関連サービス・娯楽業(前年比3.4%)が3ヵ月ぶりに増加したが、製造業(前年比▲7.8%)、建設業(同▲3.9%)が14ヵ月連続で減少した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
企業の人手不足感は強い状態が続いているが、24年1-3月期の実質GDPが前期比年率▲2.0%のマイナス成長となるなど、足もとの経済活動が停滞していることを反映し、労働市場はここにきて弱めの動きが見られる。特に、製造業は就業者数、新規求人数ともに大きく減少しており、生産活動の停滞が雇用の悪化をもたらす形となっている。

求人数の減少は、ハローワークの求人が採用につながりにくくなっていることを背景に、採用方法がハローワークから民間職業紹介所、広告等の他のチャネルにシフトしていることも一因となっている可能性があるが、雇用情勢は実態として弱含んでいると判断される。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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