2024年01月12日

リベンジ消費はなぜ不発なのか-過剰貯蓄による押し上げ効果はすでに消滅

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■要旨
 
  1. 社会経済活動の正常化に伴い、個人消費は急回復することが期待されていたが、今のところ「リベンジ消費」は顕在化していない。
     
  2. 個人消費は、物価高の逆風を受けながらも、高水準の貯蓄を背景に比較的堅調だったが、足もとでは貯蓄率が平常時の水準に近づき引き下げ余地が少なくなり、物価高の悪影響をより受けやすくなっている。
     
  3. 家計貯蓄率はコロナ禍前の水準を若干上回っていたが、GDP統計の改定によって2023年度入り後はゼロ%台まで低下し、コロナ禍前の水準を下回る可能性が高い。また、コロナ禍で積み上がった累積的な貯蓄により家計の現金・預金残高の増加ペースはコロナ禍前のトレンドを大きく上回っているが、消費者物価で割り引いた実質ベースでみるとトレンドからの乖離幅は大きく縮小する。
     
  4. リベンジ消費の中でも特に期待が大きかった外食、宿泊などの対面型サービスは高齢者を中心に持ち直しのペースが鈍く、依然としてコロナ禍前の水準を大きく下回っている。
     
  5. 物価高の影響は所得(フロー)だけでなく、コロナ禍で積み上がった金融資産(ストック)の目減りにもつながり、リベンジ消費不発の原因となっている。過剰貯蓄による消費の押し上げ効果は今後も期待できない。名目賃金の伸びが物価上昇率を上回り、実質賃金の伸びがプラスに転じることが見込まれる2024年度後半まで、消費は腰折れリスクの高い状態が続くだろう。

 
家計貯蓄率はコロナ禍前の水準を下回っている可能性
■目次

●リベンジ消費はなぜ不発なのか-過剰貯蓄による押し上げ効果はすでに消滅
  ・下振れが続く個人消費
  ・家計貯蓄率はコロナ禍前の水準を下回っている可能性
  ・実質可処分所得の水準はコロナ禍前よりも低い
  ・積み上がった貯蓄は物価高で目減り
  ・対面型サービス消費の回復も期待外れ
  ・消費は腰折れリスクの高い状態が続く
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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