コラム
2023年07月05日

今年上期のJリート市場は▲1.7%下落。株式市場とのパフォーマンス格差が広がる~米国オフィス市場の低迷も上値を抑える要因に~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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2023年上期(1~6月)のJリート(不動産投資信託)市場を振り返ると、市場全体の値動きを表わす東証REIT指数(配当除き)は▲1.7%下落、配当込み指数は+0.4%上昇となった(図表1)。上期前半は金利上昇に対する警戒感から下値を探る展開が続いたものの、4月以降、植田日銀新総裁が現在の金融政策を当面維持するとの見方から上昇に転じ、昨年末の水準を概ね回復した。もっとも、海外資金の大量流入1を受けてバブル崩壊後33年ぶりの高値更新に沸く株式市場と比べて足どりは重く、TOPIXの上昇(+21.0%)に対して大幅にアンダーパフォームする結果となった。
図表1:東証REIT指数とTOPIXの推移(2022年12月末=100)
続いて、市場規模を確認すると、上場銘柄数は61社から60社に減少、市場時価総額は15.7兆円(昨年末比▲1%)、運用資産額(取得額ベース)は22.3兆円(同+2%)となった(図表2)。また、Jリートによる物件取得額は6,072億円(前年同期比+29%)となり、大きく落ち込んだ昨年から回復が見られた。アセットタイプ別の取得割合は、多い順に、オフィスビル(35%)、物流施設(32%)、住宅(16%)、商業施設(10%)、ホテル(6%)、底地ほか(1%)であった。一方、業績面では、ホテル収益の回復や不動産売却益の計上などがプラスに寄与し、市場全体の1口当たり予想分配金は昨年末比+3%増加、1口当たりNAV(Net Asset Value、解散価値)も不動産価格の上昇を反映し+1%増加と堅調であった。この結果、6月末時点のバリュエーションは、分配金利回りが4.1%(昨年末比+0.2%)、10年国債利回りに対するイールドスプレッドが3.7%(同+0.2%)、NAV倍率が0.93倍(同▲0.03倍)となり、半年前の2022年末時点と比べてJリート市場の割安感が高まっている。
図表2:2023年上期のJリート市場(まとめ)
ところで、Jリート市場が株式市場の上昇にキャッチアップできない要因の1つに、米国リート市場で高まるオフィス悲観論の影響が挙げられる。現在、米国のオフィスセクターは、(1)空室率上昇、(2)借入金利上昇、(3)融資厳格化という、3つの「圧力」に直面している。なかでも、コロナ禍を契機に広がったリモートワークに伴うオフィス需要の減少、いわゆる「Zoom Effect」が深刻化しており、主要都市のオフィス空室率は軒並み2ケタを超えて上昇している。こうした厳しい事業環境のもと、米国リート市場のオフィス指数はコロナ禍前の2019年末対比で5割を超える下落率となり、リーマンショック後に付けた2009年以来の安値水準に沈む(図表3)。
図表3:日米REIT市場のオフィス指数(2019年12月末=100)
一方、日本のオフィスセクターは今のところ、3つの「圧力」は軽微だと言える。東京のオフィス空室率は6%台と米国と比べて相対的に低い水準にあり、借入金利は低く、融資環境も落ち着きをみせている。しかし、グローバル投資家がオフィスセクターを回避する動きを強めるなか、Jリート市場でもオフィス指数は2019年末対比で2割以上下落し、市場全体の重荷となっている。セクター別のNAV倍率を比較すると、オフィスセクターは0.87倍と最も低く割安な水準にあるものの(図表4)、海外勢を中心に投資を見送る姿勢が続く。

いずれにしても、Jリート市場の上昇には、保有資産ベースで4割を占めるオフィスセクターの回復が欠かせない。今後は、国内のオフィス市況の見極めに加えて、米国オフィス市場に対する投資家のセンチメント改善がカギを握ることになりそうだ2
図表4:セクター別のNAV倍率(6月末時点)
 
1 投資部門別売買動向(2023年1月~5月)では、海外投資家は国内株式(現物+先物)を6.6兆円買い越した一方、Jリートを▲674億円売り越した。
2 米国リート市場のオフィス指数は6月に+9.3%上昇し底打ちの機運も見られる。US-REITのSL Green Realty(SLG)は保有するオフィスビル「245 Park Avenue」(持分49.9%)を森トラストの米国法人に約10.5億ドルで売却。SLGの株価は発表後2日間で30%上昇した。(日本経済新聞夕刊6月28日)
 
 

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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2023年07月05日「研究員の眼」)

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