コラム
2023年06月13日

海外投資家は2カ月連続で大幅に買い越し~2023年5月投資部門別売買動向~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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日経平均株価は、2023年5月上旬はほぼ横ばいで推移したが、中旬に企業の決算発表が始まると企業業績へ安心感が広がり、5月11日から22日まで8営業日連続で上昇した。5月22日には3万1,086円と、終値では約32年10カ月ぶりに3万1,000円台を上回った。下旬は、米債務上限問題に対する懸念から、5月24日に3万682円まで下落したものの、1ドル140円まで円安が進行したことなどを好感し、日経平均株価は5月30日に3万1,328円まで上昇した。月末の31日は利益確定の売り等があってやや下落し、3万887円で終えた。5月はこのように日経平均株価が推移するなか、海外投資家、事業法人が買い越す一方で、信託銀行、個人が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2023年5月(5月1日~6月2日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家が現物と先物の合計で3兆4,709億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。特に、5月第3週(5月15日~19日)に1兆2,985億円も買い越しており、この海外投資家の買いが日経平均株価の8連騰につながったようだ。また、事業法人も現物と先物の合計で3,872億円の買い越しだった。
図表2 海外投資家は9週連続買い越し
一方で、信託銀行は、現物と先物の合計で1兆4,276億円の売り越しと、5月最大の売り越し部門であった。さらに、個人も現物と先物の合計で1兆1,963億円を売り越した。
図表3 信託銀行と個人は売り越し
国内投資家は株価が上昇するなか、4月に続き利益確定に動いたようだ。ただし、個人投資家は5月第3週(5月15日~19日)に7,275億円と大幅に売り越して以降、5月第4週(5月22日~26日)および5月第5週(5月29日~6月2日)は小幅ながら買い越しに転じており、利益確定の売りが一旦落ち着いた可能性もある。
 
図表4は、2020年から2022年までの過去3年間の主な投資部門別売買動向について現物と先物の合計を集計したものである。この3年間は、事業法人が自社株買いを中心に8兆400億円の買い越しと最大の買い越し部門だった。それに対して、海外投資家が13兆4,600億円も売り越しており、圧倒的な売り越し部門だった。しかし、海外投資家は2023年に入ってから累計で6兆6,300億円買い越しと、過去3年の5割程度は買い戻してきており、今後も買い戻しが続くのかに注目が集まる。
 
日本は欧米と異なり金融緩和的な環境にあることや、米国著名投資家の日本株推奨に加えて、堅調な企業業績や内需、海外旅行客の増加等が期待できることなどから、海外投資家の資金が流入している。この機会を活かして、日本の上場企業が企業価値向上に向けて本格的に動き出し、投資家の期待に応えることができれば、継続的かつ中長期的な資金の流入につながるものと考えられる。
図表4 コロナ禍以降の主な投資部門別売買動向
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年06月13日「研究員の眼」)

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