コラム
2023年05月11日

海外投資家が大幅に買い越し~2023年4月投資部門別売買動向~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2023年4月は、上旬に米国の景気減速懸念から米国株が下落したことが嫌気され、日経平均株価が4月6日に2万7,472円まで下落した。中旬以降は、植田日銀総裁の金融緩和維持宣言や、米著名投資家が日本株に強気の見方を示したことが好感され、日経平均株価は4月7日から8連騰し、4月18日に2万8,658円まで上昇した。下旬は、企業の決算発表を控え様子見姿勢が強まるも、日銀が金融緩和の維持を決定したことで安心感が広がり、月末に日経平均株価は2万8,856円と年初来高値を更新して終えた。4月はこのように日経平均株価が推移するなか、海外投資家が買い越す一方で、信託銀行、個人が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2023年4月(4月3日~28日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家が現物と先物の合計で3兆360億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。特に4月第2週(4月10日~14日)に1兆5,902億円、4月第3週(4月17日~21日)に1兆202億円と大幅に買い越した。第2週、第3週と現物、先物がともに買われていたが、第2週は中長期資金が多い思われる現物中心の買い、第3週は短期資金が多いと思われる先物中心の買いであった。いずれにしても海外投資家からの短期、中長期資金による積極的な買いが4月7日からの日経平均株価の8連騰につながったようだ。
図表2 海外投資家は大幅に買い越し
図表3は、2013年~2022年の海外投資家の現物と先物を合わせた月次売買動向を単純平均したものと、2023年の売買動向推移(折線グラフ)である。2013年以降平均すると4月は買い越す傾向が確認できる。この4月も結果的にこの傾向に沿う形となった。
図表3 海外投資家は4月は買い越す傾向
5月に入り、米債務上限問題などから再び米国の景気動向や米国株の先行き不透明感が増している。海外投資家は2023年4月も大幅に買い越したものの、世界的にリスクオフムードが高まれば、足早に日本株を売却する可能性もあり、今後の動向に注目したい。
 
一方で、信託銀行は、現物と先物の合計で9,505億円の売り越しと、4月最大の売り越し部門であった。また、個人も現物と先物の合計で6,590億円を売り越した。特に4月第2週と第3週は大幅に売り越しており、国内投資家は株価が上昇するなか、利益確定に動いたようだ。
図表4 信託銀行と個人は売り越し
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年05月11日「研究員の眼」)

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