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- 段階的ウエイト低減銘柄の株価パフォーマンス~東証市場再編後の課題~
コラム
2023年01月24日
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東京証券取引所は、2022年4月4日付で行われた東証の市場区分見直しに合わせて、TOPIXの算出基準の見直しも実施した。TOPIXは東証1部上場銘柄を対象としてきたが、2022年4月4日以降は市場区分とTOPIXの構成銘柄が切り離され、新市場区分移行後も旧東証1部上場銘柄がTOPIX指数構成銘柄として継続して採用されている。
但し、流通株式時価総額が低い(100億円未満)構成銘柄については、「段階的ウエイト低減銘柄」と指定し、TOPIXから今後徐々に除外していく予定になっている。図表1は、段階的ウエイト低減銘柄の判定と再評価のプロセスである。東証は2021年7月、2022年10月に流通株式時価総額の判定を実施し、2022年10月7日に「段階的ウエイト低減銘柄」として493社を公表した。
但し、流通株式時価総額が低い(100億円未満)構成銘柄については、「段階的ウエイト低減銘柄」と指定し、TOPIXから今後徐々に除外していく予定になっている。図表1は、段階的ウエイト低減銘柄の判定と再評価のプロセスである。東証は2021年7月、2022年10月に流通株式時価総額の判定を実施し、2022年10月7日に「段階的ウエイト低減銘柄」として493社を公表した。
「段階的ウエイト低減銘柄」は、2022年10月最終営業日から四半期ごとに組入れ比率低減が実施され、2025年1月最終営業日にTOPIXから完全に除外される予定である。ただし、2023年10月に再評価が行われる予定であり、再評価時に流通株式時価総額が100億円以上であれば、TOPIXの構成銘柄として残ることができる。
では、「段階的ウエイト低減銘柄」に指定された銘柄の株価はどのような影響を受けたのだろうか。
図表2は、「段階的ウエイト低減銘柄」に該当する企業の株価推移をまとめたものである。2022年10月7日に東証が公表した「段階的ウエイト低減銘柄」493社のうち、上場廃止の企業を除いた490社の株価を用いた。2022年10月7日の終値を基準(100)として、各企業の株価の累積騰落率を日次で計算し、490社の単純平均(青色)と中央値(赤色)を集計した。「段階的ウエイト低減銘柄」はTOPIXのサイズ別では小型株に該当するため、比較対象としてTOPIX(灰色)とTOPIX Small(黄色)を追加した。
では、「段階的ウエイト低減銘柄」に指定された銘柄の株価はどのような影響を受けたのだろうか。
図表2は、「段階的ウエイト低減銘柄」に該当する企業の株価推移をまとめたものである。2022年10月7日に東証が公表した「段階的ウエイト低減銘柄」493社のうち、上場廃止の企業を除いた490社の株価を用いた。2022年10月7日の終値を基準(100)として、各企業の株価の累積騰落率を日次で計算し、490社の単純平均(青色)と中央値(赤色)を集計した。「段階的ウエイト低減銘柄」はTOPIXのサイズ別では小型株に該当するため、比較対象としてTOPIX(灰色)とTOPIX Small(黄色)を追加した。
「段階的ウエイト低減銘柄」の株価は490社の単純平均でみると、2022年11月以降にTOPIX Smallを上回り、さらに12月以降はTOPIXを上回っていることが分かる。その一方で490社の中央値をみると、TOPIXを下回っている時期もあるが、集計期間を通してTOPIX Smallにほぼ連動した動きとなっている。特定の銘柄が大きく株価上昇しているため単純平均は押し上げられているのだが、中央値の推移を見ると、多くの「段階的ウエイト低減銘柄」がTOPIX Small並みか上回って推移していることが分かる。
「段階的ウエイト低減銘柄」は最終的にTOPIXから除外されることもあり、需給面で見たときに積極的には買いにくく、どちらかというと売り優勢で株価が市場平均から劣後するのではないかとの事前予想に反する値動きとなっている。2022年10月から2023年1月という集計期間は日銀の突然の金融政策変更、大幅な円安とそれ以降の揺り戻し、中国のゼロコロナ政策の大幅緩和と、株式市場が吸収しきれないくらいのイベントが相次いだこともあるかもしれないが、今のところ「段階的ウエイト低減銘柄」は株価自体にはそれほど影響が出ていないように見受けられる。
ただし、図表3で1回目のTOPIX組み入れ比率低減が実施された2022年10月末前後の株価の騰落率を確認したところ、10月28日に「段階的ウエイト低減銘柄」は単純平均、中央値ともにTOPIXを約1.3%下回るなど大きく下落した。10月28日はTOPIXに連動した運用を行っているパッシブファンド等を中心に、組み入れ比率低減に合わせて売却が膨らんだためだと推察される。やはり、需給面から一時的なマイナスの影響はあったようだ。
「段階的ウエイト低減銘柄」は最終的にTOPIXから除外されることもあり、需給面で見たときに積極的には買いにくく、どちらかというと売り優勢で株価が市場平均から劣後するのではないかとの事前予想に反する値動きとなっている。2022年10月から2023年1月という集計期間は日銀の突然の金融政策変更、大幅な円安とそれ以降の揺り戻し、中国のゼロコロナ政策の大幅緩和と、株式市場が吸収しきれないくらいのイベントが相次いだこともあるかもしれないが、今のところ「段階的ウエイト低減銘柄」は株価自体にはそれほど影響が出ていないように見受けられる。
ただし、図表3で1回目のTOPIX組み入れ比率低減が実施された2022年10月末前後の株価の騰落率を確認したところ、10月28日に「段階的ウエイト低減銘柄」は単純平均、中央値ともにTOPIXを約1.3%下回るなど大きく下落した。10月28日はTOPIXに連動した運用を行っているパッシブファンド等を中心に、組み入れ比率低減に合わせて売却が膨らんだためだと推察される。やはり、需給面から一時的なマイナスの影響はあったようだ。
TOPIX構成銘柄であることを理由に保有している投資家は、2025年1月末までの段階的ウエイト低減に合わせて、売却を進める可能性が高い。今後も特にTOPIX組み入れ比率低減が実施される日は株価の動向に注意が必要であろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年01月24日「研究員の眼」)

03-3512-1855
経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
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