コラム
2023年01月12日

2022年は海外投資家が売り越し、事業法人が買い越し~2022年12月及び年間の投資部門別売買動向~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2022年12月は、米国の経済指標や日米の金融政策の動向に左右される展開となった。上旬は1日に2万8,266円をつけたものの、その後は2万7,000円台後半で穏やかに推移した。中旬は13~14日に開催された米FOMCでの2023年末政策金利見通しの引き上げや、15日発表の米小売売上高の結果から、金融引締めの長期化や景気後退に対する警戒感がやや強まり、日経平均株価は19日に2万7,237円まで下落した。その後、20日に日銀が想定外の緩和修正を決定し、為替市場で1ドル136円から131円まで急速に円高が進んだこともあり、21日には2万6,387円まで下落した。月末にかけては安値圏で推移し、日経平均株価は2万6,094円で終えた。12月はこのように日経平均株価が推移するなか、個人と投資信託が買い越す一方で、海外投資家と信託銀行が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2022年12月(12月5日~30日)の主な投資部門別売買動向は、投資信託が現物と先物の合計で8,143億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。個人の資金が背景にある投資信託は、個人同様に「逆張り」の傾向もあり、特に年末にかけて買われたようだ。
図表2 投資信託の売買動向推移
その一方で、海外投資家は、現物と先物の合計で1兆2,101億円の売り越しと12月最大の売り越し部門であった。特に12月中旬以降は、日米の金融政策を受けて警戒感が強まったことで、第2週から第4週(12~30日)と3週続けて売り越した。
図表3 海外投資家は中旬以降3週連続売り越し
2022年全体では投資部門別売買動向にはどのような特徴があったのだろうか。図表4は、2022年1月~12月の年間の投資部門別売買動向を集計した結果である。

事業法人が、現物と先物の合計で5.2兆円の買い越しと、2022年最大の買い越し部門だった。2022年の上場企業(TOPIX構成銘柄)の自社株買い設定額は9.2兆円に達しており、自社株買いの実施に伴う事業法人の買い越しは今後も続きそうである。対して、海外投資家は、現物と先物の合計で4.8兆円の売り越しと、2022年最大の売り越し部門だった。海外投資家の売りを事業法人の買いでかなり吸収していたことが確認できる。
図表4 2022年投資部門別売買動向
図表5は海外投資家と事業法人の月次の売買動向である。事業法人に比べて海外投資家の月ごとの売買差額の大きさが目立った。各国の金融政策や経済指標の結果を受けた海外投資家の売買が短期的な需給要因として目立つ中、自社株買いの実施による事業法人の継続的な買いが需給を支える構図となっているようだ。
図表5 海外投資家と事業法人の売買動向推移
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年01月12日「研究員の眼」)

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