コラム
2023年04月10日

2カ月ぶりに売り越した海外投資家~2023年3月投資部門別売買動向~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2023年3月は、上旬は好調で3月3日から5営業日連続で上昇し、9日には2万8,623円まで上昇した。それが10日以降は状況が一転して、米SVB(シリコンバレー銀行)やクレディ・スイス・グループなど経営不振から米欧の金融システムへの懸念が広がり、日経平均株価は急落し、20日には2万6,945円まで下落した。下旬に入ると、各地域の当局や政府が迅速な対応を行ったことから市場心理が改善し、日経平均株価は上昇に転じ、月末は2万8,041円で終えた。3月はこのように日経平均株価が推移するなか、信託銀行、事業法人、個人が買い越す一方で、海外投資家が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2023年3月(2月27日~3月31日)の投資部門別の売買動向をみると、信託銀行が現物と先物の合計で7,160億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。特に3月第5週(3月27~31日)に9,535億円買い越しており、年度末に向けた配当再投資の買いが入ったようだ。
図表2 信託銀行は3月第5週に大幅買い越し
また、事業法人も現物と先物の合計で3,030億円の買い越しと22カ月連続の買い越しであった。ただし、3月第5週(3月27~31日)だけは403億円の売り越しだった。事業法人が週間で売り越したのは2022年3月第5週(2022年3月28日~4月1日)以来であり、年度の最終週は売却する傾向があるようだ。
図表3 事業法人は3月第5週のみ売り越した
その一方で海外投資家は、現物と先物の合計で2兆4,004億円の売り越しと3月最大の売り越し部門であった。特に3月第3週(3月13日~17日)は2兆3,765億円の売り越しとなった。

図表4は海外投資家の週間の売買動向を、現物と先物に分けて集計したものである。3月第3週は現物が5,687億円に対して先物が1兆8,078億円と、先物の売りが特に目立った。もともと海外投資家は、1月第3週から3月第2週まで8週連続で先物を買い越していた。しかし、3月第3週に米欧の金融システムへの不安感が急拡大したことにより、世界的にリスクオフムードが高まりこれまでの買い越し分も含めて、先物の売却が急激に膨らんだものとみられる。
図表4 海外投資家は3月第3週に先物を中心に大幅売り越し
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年04月10日「研究員の眼」)

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