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- 経過措置適用企業の進捗状況~東証市場再編後の課題~
コラム
2023年06月09日
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このように上場維持基準に対する進捗状況を確認すると、上場基準との乖離がかなり大きく、現実的には基準達成が難しいと思われる企業も少なくない。特に、流通株式時価総額で上場基準との乖離が大きい企業が多い。時価総額を大きくするためには、基本的に企業業績の量的な拡大とともに、当期利益を継続的に増加させていく等のことが不可欠であり、そう簡単にできることではない。「適合計画書」の内容は、投資家が納得できる実効性のあるものである必要がある。
東証は、今回の計画期間の終了時期の明確化に伴い、救済措置として市場再編前に市場第一部に所属していたプライム市場上場企業を対象に、2023年4月1日~9月29日までの6か月間は審査なしでスタンダード市場へ移行できる機会を設けている。筆者が各社公表資料を確認したところ、この救済措置を利用し、スタンダード市場への選択申請を決議した上場企業は31社あり、プライム市場の未達企業全体の12%を占めた。(5月末時点で東証に申請を行った企業は30社。『市場区分の再選択一覧(2023年5月末時点)』2)31社のうち、30社は流通株式時価総額が基準に対して未達であった。図表3は、スタンダード市場選択の理由と進捗状況の一例をまとめたものである。
東証は、今回の計画期間の終了時期の明確化に伴い、救済措置として市場再編前に市場第一部に所属していたプライム市場上場企業を対象に、2023年4月1日~9月29日までの6か月間は審査なしでスタンダード市場へ移行できる機会を設けている。筆者が各社公表資料を確認したところ、この救済措置を利用し、スタンダード市場への選択申請を決議した上場企業は31社あり、プライム市場の未達企業全体の12%を占めた。(5月末時点で東証に申請を行った企業は30社。『市場区分の再選択一覧(2023年5月末時点)』2)31社のうち、30社は流通株式時価総額が基準に対して未達であった。図表3は、スタンダード市場選択の理由と進捗状況の一例をまとめたものである。
スタンダード市場選択の主な理由としては、上場基準との乖離による基準達成の難しさ、終了時期の明確化による上場廃止リスクを理由にあげている企業が多かった。東証の決定した終了時期以降も会社が当初定めた計画期間までは監理銘柄として市場に残ることはできるが、実際に監理銘柄になった場合、株価や株式売買高の面で通常よりも取り組みの結果が反映されにくくなる可能性があることを理由としてあげた企業も見られた。
スタンダード市場への選択申請は今年9月まで可能ではあるものの、3月本決算企業の多くは6月の株主総会までに、対応を決定するものと思われる。引き続き注目していきたい。
1 森下千鶴(2023年2月16日)基礎研レポート『経過措置の適用を2025年3月から順次終了~東証市場再編後の課題~』
2 東京証券取引所『市場区分の再選択(申請期間:2023年4月1日~9月29日)』
スタンダード市場への選択申請は今年9月まで可能ではあるものの、3月本決算企業の多くは6月の株主総会までに、対応を決定するものと思われる。引き続き注目していきたい。
1 森下千鶴(2023年2月16日)基礎研レポート『経過措置の適用を2025年3月から順次終了~東証市場再編後の課題~』
2 東京証券取引所『市場区分の再選択(申請期間:2023年4月1日~9月29日)』
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年06月09日「研究員の眼」)

03-3512-1855
経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
森下 千鶴のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/06/10 | Investors Trading Trends in Japanese Stock Market:An Analysis for May 2025 | 森下 千鶴 | 研究員の眼 |
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2025/05/30 | 先行き不透明でも「開示」が選択された~2025年2月および3月の本決算動向~ | 森下 千鶴 | 基礎研レター |
2025/05/09 | Investors Trading Trends in Japanese Stock Market:An Analysis for April 2025 | 森下 千鶴 | 研究員の眼 |
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