2023年03月24日

J-REIT市場の動向と収益見通し。今後5年間で+1%成長を見込む~シナリオ別の分配金レンジは「▲10%~+8%」となる見通し~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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■要旨
 
  • 今年に入り、J-REIT市場は金利の先高観から下値を切り下げる展開が続く。年初からの下落率は▲6%で、株式市場を10%アンダーパフォームしている(3/22時点)。
     
  • 投資口価格が軟調な一方で、J-REIT市場のファンダメンタルズは堅調である。1口当たりNAVは不動産価格の上昇により前年比5%増加し、1口当たり分配金(DPU)についてもホテル収益の回復が寄与し改善基調にある。
     
  • もっとも、業績の先行きは予断を許さない。収益拡大のドライバーが見通し難いなか、DPUの回復がどこまで期待できるのか不透明感が強まっている。
     
  • そこで、本稿では、現在のJ-REIT市場の収益環境を確認したのち、各種シナリオを想定し、今後5年間のDPU成長率を試算した。
     
  • 今後5年間のDPU成長率は+1%で概ね横ばいの結果となった。内訳は「内部成長」が+2%、「外部成長」がゼロ、「財務戦略」が▲1%。2025年まで増配を維持した後、2026年から減配に転じる見通しである。
     
  • 現状、国内では日銀の金融政策やオフィス市況、海外では金融引き締めや銀行の経営不安など、外部環境は不確実性を増している。引き続き、不動産ファンダメンタルズや日米の金融政策、金融システムの動向を注視する必要がある。


■目次

1――J-REIT市場は年初から▲6%下落。金利の先高観から下値を切り下げる展開
2――保有不動産は約4,500棟・25.6兆円。1口当たり分配金(DPU)は前年比プラスで推移
3――各種シナリオを設定し、今後5年間のDPU成長率を試算する
  1|保有オフィスビルのNOIは2021年から前期比マイナスに転じる。2022年は▲3.9%減少
  2|保有オフィスビルのNOIは今後5年間で▲4%減少する見通し
  3|賃貸マンションはテナント入替時の賃料がプラスに反転。東京23区の人口は転入超過に
    転じる
  4|コロナ禍によるホテルの減収金額(2022年下期)は▲137億円。ピーク時の半分程度に
    縮小
  5|「財務戦略」によるDPUへの寄与は今後5年間で▲1%となる見通し
  6|2022年は「外部成長」が大きく鈍化。「外部成長」によるDPUへの寄与度はゼロを見込む
  7|今後5年間のDPU成長率はメインシナリオで+1%(▲10%~+8%)の見通し
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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