2022年07月01日

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■要旨
 
  • コロナ禍以降、全国的にオフィス需要が停滞し空室率が上昇するなか、札幌市の空室率はコールセンター企業などによる新規開設ニーズに支えられ、全国主要都市の中で最も低い水準で推移している。一方、成約賃料には頭打ち感がみられる。本稿では、札幌のオフィスの現況を概観した上で、2026年までの賃料予測を行った。
     
  • 北海道では、コロナ禍が「企業の経営環境」および「雇用環境」に与えたダメージは全国平均と比べて限定的であった。また、札幌市の就業者数は、オフィスワーカー比率の高い「情報通信業」を中心に増加している。以上の状況を鑑みると、今後5年間で札幌市のオフィスワーカー数が減少する懸念は小さいと思われる。
     
  • また、コールセンターや IT関連企業は、地方自治体による支援策などに支えられて、今後も成長が期待できる業種であり、新築オフィスビルの入居テナント候補として期待されている。ただし、コロナ禍を経て、コールセンターのビジネスモデルは大きく転換する可能性がある。また、「テレワーク」が進むIT関連企業では、ワークプレイスの見直しが順次拡がることも考えられ、札幌のオフィス需要を支えてきたコールセンターやIT関連企業の新規需要が頭打ちするリスクに留意する必要がある。
     
  • 一方、2030年度の北海道新幹線の全線開通等を背景に、札幌駅周辺を中心に高層オフィスビルの開発が複数計画されている。新規供給量は2023年に約9千坪、2024年に1万坪を超えて増加する見通しである。以上を鑑みると、札幌の空室率は上昇傾向で推移すると予想する。
     
  • 札幌市の成約賃料は、ファンドバブル期のピーク水準(2007年)を上回るなど高値圏にある。今後については当面横ばいで推移した後、新規供給の増加に伴う空室率の上昇を受けて下落に転じる見通しである。2021 年の賃料を100 とした場合、2022年は「100」、2026 年は「90」への下落を予想する。


■目次

1. はじめに
2. 札幌オフィス市場の現況
  2-1. 空室率および賃料の動向
  2-2. オフィス市場の需給動向
  2-3. 空室率と募集賃料のエリア別動向
3. 札幌オフィス市場の見通し
  3-1. 新規需要の見通し
  3-2. オフィスビルの新規供給見通し
  3-3. 賃料見通し
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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