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連立協議から選挙のあり方を思う-選挙と同時に大規模な公的世論調査の実施を

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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近日の連立協議や昨年来の国会審議を見ると、この苦い感覚を思い出す。選挙では対立していた政党同士が、政権運営や法案審議の段になると、是々非々で協力し合う光景が見られる。このような状況を踏まえれば、各党は「わが党に投票してくれた有権者が、選挙で掲げた政策を全面的に支持しているとは限らない」という、ある種の謙虚さを感じるべきだろう。選挙で得た議席数は、人々の多様な意見を反映する1つの指標に過ぎない。1票の背景にある、より複雑で多元的な民意をくみ取る努力が、必要だろう。
そこで提案したいのが、国政選挙と同時に、政策論点への意見を問う公的な世論調査を実施する、という方法だ。
現在の選挙制度は、個人の複雑な意思を一票に集約させて1つの政党や1人の候補者にゆだねる、間接民主制をとっている。個人がすべての政策分野について熟慮して評価できるとは限らず、政策によっては折衷案などの協議が必要になるため、議会による間接民主制は必要だと思う。
しかし、その一票だけでは、どの政策を重視しているかや、どの程度の賛意を示しているかは分からない。選挙と同時に、主要な政策論点について人々の意見を問う公的な世論調査を投票所で行えば、現在の内閣府などによる公的な世論調査よりも多くの意見を集められ、複雑な民意をくみ取る一助となるだろう。
もちろん、政策を左右しうる大規模な公的世論調査は容易ではなく、各種の工夫が欠かせないだろう。例えば、住民投票のように特定の政策への賛否を問うだけではなく、財源の捻出方法とあわせて問うことや、重視したい政策を尋ねることなどが、必要になるだろう。多くの人たちに複雑な関係を踏まえた判断を求めるのは難しいかもしれないが、一方の利益が他方の不利益になりうるなどの構造を示すことで、人々が政策について多面的に深く考える機会になり、より成熟した民主主義を育む一助となるだろう。また、「わからない」という意見をくみ取ることで、人々の理解の状況を把握し、説明を改善する契機にもなりうる。
近年は、SNSなどから流れてくる情報をもとにした反射的な意見が、政治判断を左右しつつある印象を受ける。選挙と同時に大規模な公的世論調査を行うことで、議席数やSNSなどには現れない、人々の多様な意見が理解されることを期待したい。
(2025年10月21日「研究員の眼」)

03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
中嶋 邦夫のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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