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コラム
2025年04月07日
SNS時代の年金改革-法案提出を巡る議論の本質は…
03-3512-1859
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年金改革法案の国会への提出が、通常の期限を超過した。事前の議論に時間がかかっていることへの批判もあるが、年金や年金改革の合理的な評価が難しいことを踏まえれば、現行制度の問題や改革案の論点の、ていねいでわかりやすい説明方法を検討することも、重要であろう。
1 ―― 心理的なバイアスの影響で年金を直感で合理的に評価するのは困難
年金を直感で合理的に評価することは難しい。心理学と経済学を融合した行動経済学などによると、人間の経済的な判断にはいくつかの歪み(限定合理性)が確認されている。このうち「近視眼性」と「損失回避」の傾向は、年金の評価に大きく影響すると思われる。また、伝統的な経済学の概念である「変動回避(リスク回避)」の傾向も、年金の評価に影響するだろう。
近視眼性は、目先のことを過大評価し将来のことを過小評価する傾向であり、現在バイアスとも呼ばれる。筆者の場合は、締切りが先の重い仕事を安請け合いするが、締切りが近づくと事の重大さに気付く、という状況に該当する。
損失回避は、利益よりも損失を大きく感じる傾向である。100円をもらった時の満足感よりも、100円を失った時の喪失感の方が大きい、という話である。
変動回避(リスク回避)は、計算上は同じ価値があるものでも、変動や不確実性を伴うものは価値を低く感じる傾向である。例えば、確実に50円を受け取れる権利と50%の確率で100円を受け取れる権利を比べると、確実に受け取れる方を選ぶ傾向である。
これらの傾向は人によって強弱があったり当てはまらなかったりするが、全体的な傾向としてみられることが、多数の実験の結果から確認されている。
年金は、目先で保険料の支払いという確実な損失が生じ、経済状況が見通せない将来に給付を受け取る仕組みである。前述した傾向を踏まえれば、目先の保険料負担を重視して将来の給付の恩恵を軽視することになるため、直感で合理的に評価することは困難である。直感に任せると、イソップ寓話に出てくるキリギリスのような判断をしがちである。
年齢が上がって受給時期が近づくと給付の恩恵を感じやすくなるが、受給までの期間が生きてきた期間よりも長いような若者は給付の恩恵を軽視しがちになる。
近視眼性は、目先のことを過大評価し将来のことを過小評価する傾向であり、現在バイアスとも呼ばれる。筆者の場合は、締切りが先の重い仕事を安請け合いするが、締切りが近づくと事の重大さに気付く、という状況に該当する。
損失回避は、利益よりも損失を大きく感じる傾向である。100円をもらった時の満足感よりも、100円を失った時の喪失感の方が大きい、という話である。
変動回避(リスク回避)は、計算上は同じ価値があるものでも、変動や不確実性を伴うものは価値を低く感じる傾向である。例えば、確実に50円を受け取れる権利と50%の確率で100円を受け取れる権利を比べると、確実に受け取れる方を選ぶ傾向である。
これらの傾向は人によって強弱があったり当てはまらなかったりするが、全体的な傾向としてみられることが、多数の実験の結果から確認されている。
年金は、目先で保険料の支払いという確実な損失が生じ、経済状況が見通せない将来に給付を受け取る仕組みである。前述した傾向を踏まえれば、目先の保険料負担を重視して将来の給付の恩恵を軽視することになるため、直感で合理的に評価することは困難である。直感に任せると、イソップ寓話に出てくるキリギリスのような判断をしがちである。
年齢が上がって受給時期が近づくと給付の恩恵を感じやすくなるが、受給までの期間が生きてきた期間よりも長いような若者は給付の恩恵を軽視しがちになる。
2 ―― SNSでは年金改革がきちんと評価されにくい可能性
行動経済学などの別の知見である「現状維持バイアス」と「情報カスケード」という傾向を踏まえると、年金改革もきちんと評価されにくい可能性がある。
現状維持バイアスは、前述した損失回避の派生であり、現状から変更した場合に生じる損失を過大評価して、現状を維持しがちな傾向を指す。年金改革が話題になる際に、改革の影響が重視されて現行制度の問題が認識されにくいのは、この傾向の影響かもしれない。
情報カスケードは、判断が難しい選択に直面した際に、自分自身での判断を避けて、周りの多数派の選択結果を採用する傾向を指す。この傾向を踏まえれば、年金改革の評価を難しいと感じたり思い込んだりした場合には、よく考えずに多数派の評価を信じやすくなる。
SNSでは、自分と似た興味をもつユーザーをフォローすることや運営側がユーザーの関心にそって情報提供することで、目にする意見を多数派と感じがちである。SNSだけで得られる情報は限られているため、人々がSNS以外での情報収集や自身での評価を避ければ、根拠が不十分な評価が広まることになる。
現状維持バイアスは、前述した損失回避の派生であり、現状から変更した場合に生じる損失を過大評価して、現状を維持しがちな傾向を指す。年金改革が話題になる際に、改革の影響が重視されて現行制度の問題が認識されにくいのは、この傾向の影響かもしれない。
情報カスケードは、判断が難しい選択に直面した際に、自分自身での判断を避けて、周りの多数派の選択結果を採用する傾向を指す。この傾向を踏まえれば、年金改革の評価を難しいと感じたり思い込んだりした場合には、よく考えずに多数派の評価を信じやすくなる。
SNSでは、自分と似た興味をもつユーザーをフォローすることや運営側がユーザーの関心にそって情報提供することで、目にする意見を多数派と感じがちである。SNSだけで得られる情報は限られているため、人々がSNS以外での情報収集や自身での評価を避ければ、根拠が不十分な評価が広まることになる。
3 ―― 年金改革がきちんと評価されるには、わかりやすい情報提供が重要
このように行動経済学などによれば年金や年金改革は合理的に評価されにくい傾向があるが、行動経済学では人間に利他性があることも確認されている。
2016年の年金改革では、当初は「年金カット法案」と批判されたものの、その後の説明で、当面の受給者は当時の制度よりも不利になる一方で将来の受給者には恩恵があることが知られるようになり、世論調査で賛成と回答する比率が当初の調査結果よりも上昇した。
他方で、2024年の春には、基礎年金の拠出期間を延長する案について、会社員の保険料負担が増加するという誤解が広まったり、拠出期間の延長に比例して受給額が増えることが広まらなかったりした結果、厚生労働省が検討を中断する事態になった。
年金制度の現状や人々への影響を考えれば法案の早期提出は重要だが、人々の判断材料となる、ていねいでわかりやすい説明方法の検討も、重要であろう。
2016年の年金改革では、当初は「年金カット法案」と批判されたものの、その後の説明で、当面の受給者は当時の制度よりも不利になる一方で将来の受給者には恩恵があることが知られるようになり、世論調査で賛成と回答する比率が当初の調査結果よりも上昇した。
他方で、2024年の春には、基礎年金の拠出期間を延長する案について、会社員の保険料負担が増加するという誤解が広まったり、拠出期間の延長に比例して受給額が増えることが広まらなかったりした結果、厚生労働省が検討を中断する事態になった。
年金制度の現状や人々への影響を考えれば法案の早期提出は重要だが、人々の判断材料となる、ていねいでわかりやすい説明方法の検討も、重要であろう。
(2025年04月07日「研究員の眼」)
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