2025年02月06日

2025年度の社会保障予算を分析する-薬価改定と高額療養費見直しで費用抑制、医師偏在是正や認知症施策などで新規事業

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

政府の2025年度当初予算案が2024年12月の閣議で決まり、1月24日に召集された通常国会で審議されている。一般会計の規模は対前年度当初比で2.6%増の115兆5,415億円となり、過去最大となった。

こうした中、歳出の約3分の1を占める社会保障関係予算は対前年度当初比1.5%増の38兆2,278億円となった。今回は医療機関に対する診療報酬本体の見直しなど、大規模な制度改正が実施されない「裏年」となり、それほど大きな攻防は見られなかった。社会保障関係予算の規模に関しても、患者負担を抑制する高額療養費の見直しなどで歳出抑制が図られた結果、伸び率は小さくなった。

一方、昨年の総選挙で与党が少数となったため、税制改正では国民民主党の意見が反映されたほか、物価上昇への対応が大きな論点になるなど、従来と異なる状況も生まれた。

本稿では、社会保障関係費を中心に、2025年度当初予算案の概要や制度改正の内容、政策形成過程などを考察する。具体的には、歳出と歳入の概況を把握した後、物価上昇の関係など社会保障以外の予算について概要を考察する。その上で、医療提供体制改革や高齢者福祉、少子化対策の領域に関して、新規事業などを取り上げる。さらに、予算案や予算関連法案の審議が難航する可能性もあるため、少数与党での対応など過去の経緯も踏まえつつ、今後の展望も試みる。

なお、2024年の臨時国会では総額13兆9,443億円の2024年度補正予算が成立しており、2025年度当初予算と一体的に編成されている施策も少なくない。このため、必要に応じて2024年度補正予算の内容にも触れる。

■目次

1――はじめに~2025年度の社会保障予算を分析する~
2――2025年度政府予算案の全体像
  1|歳出と歳入の概況
  2|赤字地方債の発行がゼロ
  3|少数与党で様変わりした予算編成過程
  4|石破カラーの事業は?
  5|教職調整額での攻防
  6|物価上昇への対応
3――社会保障予算の全体像
  1|社会保障関係費の増減要因
  2|歳出抑制策(1)~薬価改定~
  3|歳出抑制策(2)~高額療養費の見直し~
4――社会保障関係予算の主な内容(1)~医療提供体制改革~
  1|医師偏在是正
  2|かかりつけ医機能の強化
  3|公立病院の改革
  4|在宅医療・介護連携推進事業の拡充
5――社会保障関係予算の主な内容(2)~高齢福祉分野~
  1|認知症関係
  2|訪問介護の支援予算
6――社会保障関係予算の主な内容(3)~少子化対策~
  1|「次元の異なる対策」実質初年度での対応は?
  2|少子化対策に関わる新たな施策・事業
7――社会保障関係予算の主な内容(4)~その他~
  1|日本版CDC発足
  2|住まいを中心とした生活困窮者自立支援事業などのテコ入れ
  3|孤独・孤立対策の推進
8――少数与党での国会審議は…
  1|予算や税制、社会保障に関する過去の出来事は?
  2|高齢者医療費に関する各党の公約
9――おわりに

(2025年02月06日「基礎研レポート」)

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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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