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「在宅医療・介護連携推進事業」はどこまで定着したか?-医師会の関心を高めた成果、現場には「研修疲れ」の傾向も

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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自宅で暮らす高齢者などに対し、切れ目のない医療・介護サービスの提供を目指す「在宅医療・介護連携推進事業」が発足して概ね10年になる。これは2015年度改正(法改正は2014年)を通じて発足した事業であり、▽地域の医療・介護の資源の把握、▽医療・介護関係者の情報共有の支援、▽医療・介護関係者の研修、▽地域住民への普及啓発――など8つの取り組みを市町村に義務付けることで、医療と介護の一体的な提供を目指している。
この事業が創設された頃と比べると、報酬改定における加算の誘導と相俟って、現場では多職種連携が一般的になりつつある。特に同事業の成果として、地区医師会が医療・介護連携に関心を持つ契機になったと考えられ、関係者や専門職による「顔の見える関係づくり」の形成に向けて、同事業は一定程度の効果を果たしたと考えられる。
一方、多職種連携の交流会や研修の実施が目的化している結果、市町村や医療・介護の現場では「研修疲れ」「事業疲れ」の傾向も見受けられる。さらに、人工呼吸器などを付けて暮らす「医療的ケア児」に対する支援など、在宅ケアや多職種連携の対象は高齢者にとどまらない広がりを見せており、筆者は同事業について、「これまでの蓄積を踏まえつつ、一段の工夫が必要になっている」と考えている。本稿では、在宅医療・介護連携推進事業に着目し、目的や経緯を考察するとともに、想定される現場の改善策などを探る。
■目次
1――はじめに~「在宅医療・介護連携推進事業」はどこまで定着したか?~
2――在宅医療・介護連携推進事業の内容や経緯、内容
1|在宅医療・介護連携推進事業の内容
2|在宅医療・介護連携推進事業の背景
3|在宅医療・介護連携推進事業の経緯
3――在宅医療・介護連携推進事業の効果
1|地区医師会を対象とした調査
2|市町村に対する調査
4――工夫が求められる理由(1)~市町村や現場の「研修疲れ」「事業疲れ」~
1|国の手引きで例示された「残念なできごと」では…
2|想定される現場の改善策
5――工夫が求められる理由(2)~多職種連携の対象が高齢者にとどまらない範囲に拡大~
6――おわりに
(2024年10月22日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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