2019年05月30日

策定から2年が過ぎた地域医療構想の現状を考える(上)-公立・公的医療機関の役割特化を巡る動きを中心に

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

都道府県が医療提供体制改革を目指す「地域医療構想」を2017年3月までに策定し、今年4月で2年が過ぎた。地域医療構想とは、人口的にボリュームが大きい団塊の世代が75歳を迎える2025年に向けて、過剰な病床の適正化や切れ目のない提供体制の構築を図ることを目指しており、都道府県を中心に地域の関係者が合意形成しつつ、改革を進めることを想定している。この2年間を振り返ると、国は都道府県に対し、議論の進め方などを取りまとめる「対応方針」を策定するよう求めたほか、公立・公的医療機関の機能見直しに関する改革プランの策定を急がせた。

その一方、都道府県は合意形成を進める場として、地域の関係者で構成する「地域医療構想調整会議」を組織しており、その議論の進め方について試行錯誤を続けている。本レポートの(上)では、国の資料を基に2年間の取り組みを総括するとともに、「公立・公的医療機関の役割を民間医療機関が担えない機能に特化する」という流れが強化されている点を確認する。

その上で、都道府県別に見た病床数の将来予想と公立・公的医療機関の比率を示す図を使うことで、「公立・公的医療機関の役割を民間医療機関が担えない機能に特化する」という現在の流れだけでは課題が解決しない可能性を論じる。

さらに、(下)では「関係者間の合意形成には情報開示・情報共有が欠かせない」という視点に立ち、地域医療構想調整会議の議論や資料がどれだけ開示されているかを考察し、都道府県の取り組みを問うこととする。

■目次

1――はじめに~地域医療構想の現状を考える~
2――地域医療構想とは何か
  1|制度の概要
  2|制度化の背景
  3|財政当局のプレッシャー
  4|合意形成の重要性
3――地域医療構想策定後の動向
  1|地域医療構想の進め方に関する国の通知(技術的助言)
  2|具体的な医療機関名を挙げた議論
  3|非稼働病棟の状況
4――地域医療構想策定後の動向に関する評価
5――公立・公的医療機関の役割を特化する方法の評価
6――おわりに
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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レポート紹介

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