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医師偏在是正に向けた2つの計画はどこまで有効か(上)-複雑、多面的な調整が求められる都道府県

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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医師の偏在解消に向けて、都道府県による「医師確保計画」の策定が進んでおり、2019年度中に全ての計画が出揃う予定だ。計画は2018年に改正された医療法に基づいており、原則として人口20~30万人程度に区切られた2次医療圏ごとに計算された医師の偏在状況を参考にしつつ、都道府県が「医師多数区域」「医師少数区域」を設定。主に医師少数区域を対象に、医師派遣の調整などの施策を進めることで、医師の偏在を2036年度までに是正することを目指している。さらに都道府県は外来医療に関して偏在是正に努める「外来医療計画」の策定も同じく2019年度中に求められている。
では、こうした2つの計画はどこまで有効に機能するのだろうか。今回から全2回で2つの計画の論点と今後を占う。(上)は医師確保計画について、概要や目的、施策の進め方などを解説し、医師の偏在を巡る現状が可視化された点を評価する。さらに病床数のコントロールを目指す「地域医療構想」、残業時間の上限を設ける「医師の働き方改革」と併せた三位一体の必要性が論じられているほか、医療行政に関する都道府県の役割を大きくする「医療行政の都道府県化」と関連付けられており、こうした他の制度改正とリンクしている点も考察し、都道府県が複雑かつ多面的な調整を求められている点を指摘する。
その一方、民間中心の医療提供体制の下、行政がダイレクトに統制することが想定されておらず、関係者の合意形成や自主的な対応に力点を置いた点を指摘する。その上で、医師確保計画が病床数をコントロールする「『地域医療構想』の医師版」としての側面を持っている点を考察し、病床と比べて移動しやすい人間(医師)を対象とする医師確保計画の難しさを論じる。
(下)では「外来医療計画」の概要や内容を考察した上で、開業規制に繋がることを危ぶむ声が出ている点を紹介し、今後の方向性を占う。
■目次
1――はじめに~医師偏在是正に向けた2つの計画はどこまで有効か~
2――医師確保計画とは何か
1|計画の目的
2|医師確保計画を理解する3つのキーワード
3|医師少数区域、医師多数区域
4|目標医師数
5|偏在を巡る状況
3――医師確保計画に基づく施策
1|主な3つの施策
2|主な3つの施策(1)~都道府県内の派遣調整~
3|主な3つの施策(2)~地域枠・地元出身枠~
4|主な3つの施策(3)~キャリア形成プログラムの策定・運用~
5|その他の施策
4――産科、小児科に特化した医師確保計画の策定
5――医師確保計画の事例~北海道の素案~
6――医師確保計画の評価(1)~実効性を伴うか~
1|これまでの医師偏在是正策
2|可視化など実効性を重視した今回の取り組み
3|2017年の厚生労働省調査に見る可能性
4|Homecoming Salmon仮説から見た可能性
7――医師確保計画の評価(2)~三位一体、医療行政の都道府県化との関係~
1|地域医療構想、医師働き方改革による三位一体化
2|医療行政の都道府県化とも密接に関係
8――医師確保計画の困難性~地域医療構想との対比で~
1|民間中心の提供体制における難しさ
2|地域医療構想との対比から見える共通点と難しさ
3|求められる総合的な対策
9――おわりに~複雑かつ多面的な調整が必要に~
(2020年02月17日「基礎研レポート」)

03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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