2020年02月17日

医師偏在是正に向けた2つの計画はどこまで有効か(上)-複雑、多面的な調整が求められる都道府県

保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

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■要旨

医師の偏在解消に向けて、都道府県による「医師確保計画」の策定が進んでおり、2019年度中に全ての計画が出揃う予定だ。計画は2018年に改正された医療法に基づいており、原則として人口20~30万人程度に区切られた2次医療圏ごとに計算された医師の偏在状況を参考にしつつ、都道府県が「医師多数区域」「医師少数区域」を設定。主に医師少数区域を対象に、医師派遣の調整などの施策を進めることで、医師の偏在を2036年度までに是正することを目指している。さらに都道府県は外来医療に関して偏在是正に努める「外来医療計画」の策定も同じく2019年度中に求められている。

では、こうした2つの計画はどこまで有効に機能するのだろうか。今回から全2回で2つの計画の論点と今後を占う。(上)は医師確保計画について、概要や目的、施策の進め方などを解説し、医師の偏在を巡る現状が可視化された点を評価する。さらに病床数のコントロールを目指す「地域医療構想」、残業時間の上限を設ける「医師の働き方改革」と併せた三位一体の必要性が論じられているほか、医療行政に関する都道府県の役割を大きくする「医療行政の都道府県化」と関連付けられており、こうした他の制度改正とリンクしている点も考察し、都道府県が複雑かつ多面的な調整を求められている点を指摘する。

その一方、民間中心の医療提供体制の下、行政がダイレクトに統制することが想定されておらず、関係者の合意形成や自主的な対応に力点を置いた点を指摘する。その上で、医師確保計画が病床数をコントロールする「『地域医療構想』の医師版」としての側面を持っている点を考察し、病床と比べて移動しやすい人間(医師)を対象とする医師確保計画の難しさを論じる。

(下)では「外来医療計画」の概要や内容を考察した上で、開業規制に繋がることを危ぶむ声が出ている点を紹介し、今後の方向性を占う。

■目次

1――はじめに~医師偏在是正に向けた2つの計画はどこまで有効か~
2――医師確保計画とは何か
  1|計画の目的
  2|医師確保計画を理解する3つのキーワード
  3|医師少数区域、医師多数区域
  4|目標医師数
  5|偏在を巡る状況
3――医師確保計画に基づく施策
  1|主な3つの施策
  2|主な3つの施策(1)~都道府県内の派遣調整~
  3|主な3つの施策(2)~地域枠・地元出身枠~
  4|主な3つの施策(3)~キャリア形成プログラムの策定・運用~
  5|その他の施策
4――産科、小児科に特化した医師確保計画の策定
5――医師確保計画の事例~北海道の素案~
6――医師確保計画の評価(1)~実効性を伴うか~
  1|これまでの医師偏在是正策
  2|可視化など実効性を重視した今回の取り組み
  3|2017年の厚生労働省調査に見る可能性
  4|Homecoming Salmon仮説から見た可能性
7――医師確保計画の評価(2)~三位一体、医療行政の都道府県化との関係~
  1|地域医療構想、医師働き方改革による三位一体化
  2|医療行政の都道府県化とも密接に関係
8――医師確保計画の困難性~地域医療構想との対比で~
  1|民間中心の提供体制における難しさ
  2|地域医療構想との対比から見える共通点と難しさ
  3|求められる総合的な対策
9――おわりに~複雑かつ多面的な調整が必要に~

(2020年02月17日「基礎研レポート」)

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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

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