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2024年度トリプル改定を読み解く(下)-医師の働き方改革、感染症対策など、その他の論点を考える

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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医療・介護・障害福祉サービスの公定価格の新たな体系が2024年6月までにスタートした。今回は医療機関向け診療報酬本体が2年ぶりに改定されたほか、3年サイクルで見直されている介護報酬、障害福祉サービス報酬も変更された(いわゆる「トリプル改定」)。
トリプル改定を総括する3回シリーズの(上)では、物価上昇に対応する賃上げに関連し、改定率を巡る攻防や内容を検討したほか、生活習慣病対策に関する加算の見直しとか、不可解な訪問介護の基本報酬引き下げなどをピックアップした。さらに(中)では、医療・介護連携や急性期医療の見直し、多職種連携の促進など提供体制改革を医療、介護の両面に渡って横断的に検討し、医療提供体制改革を診療報酬改定の誘導で実現しようとする傾向が一層、強まった点を指摘した。
最終回となる(下)では残された論点のうち、▽2024年度から本格施行された「医師の働き方改革」、▽新型コロナウイルスを踏まえた新興感染症対策、▽医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進――などの提供体制改革に関わる改定に言及する。さらに、医療と障害福祉の連携とか、両親や兄弟姉妹の面倒を過度に見ている子どもを指す「ヤングケアラー」の支援など、多職種・多機関連携に関する改定も取り上げる。
一方、長期収載品の患者負担拡大や介護保険施設の室料に関する負担増、障害福祉サービスの報酬見直しなど、医療、介護、障害福祉に関わる給付適正化策も実施されているため、これらの改正内容を横断的に網羅する。最後に、シリーズを締め括るに際して、診療報酬改定の決定過程を考察する。具体的には、政治主導による意思決定の下、業界団体などが参加する厚生労働省の審議会がバイパスされている実態を指摘し、その背景や方向性を探る。
■目次
1――はじめに~医師の働き方改革、感染症対策など、その他の論点を考える~
2――提供体制改革の残された論点に言及
3――提供体制改革に関する改定(1)~医師の働き方改革~
1|働き方改革の内容と過去の改定
2|加算を巡る攻防と決着
4――提供体制改革に関する改定(2)~新興感染症対策~
5――提供体制改革に関する改定(3)~医療DX~
1|マイナ保険証に関する改定
2|オンライン診療に関する改定
6――提供体制改革に関する改定(4)~医療と障害の連携~
7――提供体制改革に関する改定(5)~ヤングケアラー、重層的支援体制整備など~
1|居宅介護支援事業所に関する改定
2|地域包括支援センターの負担軽減策
8――給付適正化に関わる改定
1|薬剤費に関する新たな患者負担の導入
2|介護施設の居住費見直し
3|サービス付き高齢者向け住宅の介護報酬見直し
4|障害福祉報酬の見直し
9――強まる審議会バイパスの動き
1|相次ぐ中医協の「外堀」を埋める動き
2|バイパスが続く背景
3|官邸主導の影響
10――おわりに
(2024年09月11日「基礎研レポート」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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