2024年09月26日

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■要旨
 
  • 東京都心部Aクラスビルの空室率は、コロナ禍を受けて大きく上昇したが、2024年に入り低下基調に転じている。成約賃料は需給バランスの改善に伴い底打ちし、上昇に転じている。本稿では、東京都心部Aクラスビル市場の動向を概観し、2028年までの賃料と空室率の予測を行った。
     
  • 東京都の就業者数は、情報通信業等を中心に増加し、オフィスワーカーの割合の高い非製造業では人手不足感が強いことから、東京都心部の「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さい。今後、採用強化による従業員の増加等に伴い、オフィス面積を拡張する企業の増加が予想される。
     
  • 一方、「テレワーク」を取り入れた働き方に対応すべく、オフィス戦略を見直す動きは継続すると考えられる。フリーアドレスを導入して固定席の割合を減らし、ミーティングスペースを充実させる等、在宅勤務を取り入れたフレキシブルな働き方に即したオフィスの利用形態が増加するだろう。また、働き方の多様化を進むなか、「サードプレイスオフィス」市場の拡大も見込まれる。
     
  • オフィス環境の整備において、コスト削減や業務効率への意識は依然として高いものの、その優先度は低下している。一方、従業員満足度の向上やコミュニケーションの活性化に重点がシフトしている。施設利用者の快適性や健康性に配慮したワークプレイスの構築は続くと考えられ、立地改善や建物設備のグレートアップを図る企業の増加が見込まれる。
     
  • 以上の状況を踏まえると、都心5区のオフィス需要は底堅く推移すると見通しである。
     
  • 都心5 区では、多くの大規模開発が進行中である。2024 年は、新規供給が一旦落ち着くものの、2028年は20万を超える大量供給が予定されている。
     
  • 2024 年にやや改善した後、6%付近で推移することが予想される。また、成約賃料(2023年=100)は、2024 年に「107」、2025年に「109」、2028年に「104」となる見通しである。


■目次

1.はじめに
2.東京都心Aクラスオフィス市場の現況
  2-1.空室率および賃料の動向
  2-2.空室率と募集賃料のエリア別動向
  2-3.企業のオフィス環境整備の方針等を踏まえた、今後のオフィス需要を考える
3.東京都心部Aクラスビル市場の見通し
  3-1.新規供給見通し
  3-2.Aクラスビルの空室率および成約賃料の見通し

(2024年09月26日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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