2024年03月14日

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■要旨
 
  • 大阪のオフィス市場は、昨年の新規供給が前年の約1割の水準に留まるなか、空室率は改善基調で推移した。しかし、今年は新規供給量が約8.7万坪に達し過去最大となる見込みで市場への影響が注目される。本稿では、大阪のオフィス市況を概観した上で、2028年までの賃料予測を行った。
     
  • 大阪府の就業者数は、情報通信業等を中心に増加し、オフィスワーカーの割合の高い非製造業では人手不足感が強いことから、大阪ビジネスエリアの「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さいと予想される。
     
  • 一方、大阪でも、フリーアドレスを導入して固定席の割合を減らし、在宅勤務を取り入れたフレキシブルな働き方に即したオフィスの利用形態に変更する企業が増えている。企業は、賃貸面積の縮小や、自社オフィスからサードプレイスオフィス利用への変更等を実施するとみられる。
     
  • また、万博の経済波及効果は2兆7,457億円と試算され、オフィス需要に対してもプラスの効果が期待されるが、想定よりも、来場者が大幅に下回る、あるいは工期に遅れが生じる場合、上記の経済波及効果が未達となる懸念もあり、今後の動向に注視が必要である。
     
  • 一方、新規供給については梅田駅や淀屋橋駅を中心に複数の大規模開発計画が進行中である。2024年に過去最大の大量供給を控えるなか、今後、大阪の空室率は上昇すると予想する。
     
  • このため、大阪のオフィス成約賃料は、需給バランスの緩和に伴い下落基調で推移する見通しである。2023年の賃料を100とした場合、2024年の賃料は「98」、2025年の賃料は「95」、2028年は「94」に下落すると予想する。ただし、2023年対比で▲6%下落するものの、2019年と同程度の賃料水準に留まり、大幅な賃料下落には至らない見込みである。


■目次

1.はじめに
2.大阪オフィス市場の現況
  2-1.空室率および賃料の動向
  2-2.需給動向
3.大阪オフィス市場の見通し
  3-1.新規需要の見通し
  3-2.新規供給見通し
  3-3.賃料見通し
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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【「大阪オフィス市場」の現況と見通し(2024年)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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