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全世代社会保障法の成立で何が変わるのか

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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このほか、今回の制度改正では、都道府県内の保険料水準を統一化させる方針が一層、浮き彫りになった。元々、国民健康保険の運営が2018年度に都道府県単位化されるまで、保険料は各市町村で決定されていた。その結果、市町村ごとに保険料の水準や収納率、保険料を決定する方式、法定外繰入の有無が市町村ごとに異なり、都道府県化に際して、「都道府県内の保険料水準を統一するかどうか」という点がポイントになった。
具体的には、財政運営の責任が都道府県に移行した際、市町村の責任で解決できない年齢構成などについては、標準保険料の計算時に考慮される仕組みが導入されたため、「同じ所得水準・世帯構成であれば、都道府県のどこに住んでも保険料が同じ」という状態が生まれやすくなった。これは一般的に「保険料水準の統一」と呼ばれる(今回の策定要領では、これを「保険料水準の完全統一」と定義付けしている)。
しかし、実際には都道府県化の後も、保険料水準の統一は進まなかった。第1に、医療費が違うと、保険料の水準も異なるため、統一のハードルとなる。分かりやすく言うと、医療機関が林立している地域と、無医村では医療サービスの利用が異なるため、同じ所得水準や世帯構成だったとしても、2つの自治体に住む住民の間では、保険料水準に差が生まれる。
第2に、保険料を決定する際の賦課方法についても、同じ都道府県内で異なる方法が併存していた。元々、国民健康保険の保険料は所得の水準に課す「所得割」、資産に応じた「資産割」、世帯ごとの「均等割」、世帯の被保険者数を考慮する「平等割」の4つの方式があり、4つを組み合わせる「4方式」、資産割を除く3つを用いる「3方式」、所得割と均等割を用いる「2方式」が市町村の判断で選択できるようになっていた。このため、同じ所得水準・世帯構成だったとしても、賦課方式が違うと、保険料水準の差として現れる。
第3に、保険料の収納率にも市町村ごとに差異が大きかった。もし収納率が他の市町村よりも低いと、保険料の水準を引き上げるか、後述する「法定外繰入」を通じた赤字補填が必要になり、同じ所得水準・世帯構成だったとしても、保険料水準は同じにならない。
第4に、法定外繰入と呼ばれる追加的な税金投入の存在も保険料の違いに影響していた。ここで言う法定外繰入とは、保険料収入の減少や医療給付費の増加などに起因する財源不足を補填するため、市町村から追加的に公費(税金)を投入することを指す。もし国民健康保険に関する市町村の特別会計に財源不足が発生しても、保険料の引き上げではなく、法定外繰入を選択すれば、同じ所得水準や世帯構成だったとしても、市町村ごとに保険料の水準に差が発生することになる。
要するに、保険料の水準を都道府県単位で統一する上では、医療費水準の違いや保険料を徴収する際の方式の違い、収納率の差、法定外繰入の水準などを調整する必要があるが、2018年度時点で都道府県は前向きと言えなかった。
具体的には、当時の筆者の集計では、41都道府県が最初の運営方針で、保険料水準の統一に何らかの形で言及していた一方、6県については運営方針に文言が見られなかったか、現時点での検討または実施を否定していた。さらに、ほとんどのケースでは統一の実施年限や目標が明示されておらず、具体的な年次目標を明記したのは9道府県にとどまっていた。
その後、2021年度に改定された運営方針で、実施年限や目標年次を定めたのは18道府県に増えたほか、2021年の法改正で2024年3月からの運営方針で、「保険料の水準の平準化に関する事項」が必須記載事項になったが、やはり市町村ごとの違いなどがボトルネックになっていた。
しかし、財務省が財政審などの場で、保険料水準の速やかな統一を要請した。これは先に触れた通り、地域医療構想など医療提供体制改革と、国民健康保険の都道府県化という費用面の改革をリンクさせる意図であり、「病床が多いので、医療費が多くなり、保険料の負担が重い」といった形で、負担と給付の関係を「見える化」させる狙いが込められていた。特に2022年5月の財政審建議では、「『同じ所得・世帯構成であれば保険料水準が同じ』ことを目指していく都道府県内の国保の保険料水準の統一の取組はこの点からも優先度が高い」と強調していた。
こうした経緯を踏まえ、医療保険部会の「議論の整理」では、「保険料水準の統一に向けた取組を国としても強力に支援するため、保険料水準統一加速化プラン(仮称)を策定する」と規定された。2023年6月に示された新しい策定要領でも、次期運営方針の6年間を「国保の財政運営の安定化を図りつつ、都道府県単位化の趣旨の更なる深化を図るため、次期国保運営方針では、保険料水準の統一の達成目標や達成年度、達成に向けた取組等を定め、保険料水準の平準化に向けた取組を一段と加速化させるための期間」と位置付けるという方向性が示された。
では、上記の制度改正を通じて、どんな共通点を見出せるだろうか。それは「医療行政の都道府県化」という共通項であり、提供体制と財政運営の両面で、都道府県の責任と役割が大きくなった点を指摘できる。以下、「医療行政の都道府県化」という補助線を引きつつ、今回の制度改正の意味合いと今後の方向性、課題などを論じる。
13――医療行政の都道府県化という共通点
まず、今回の制度改正を通じて、医療行政における都道府県の役割と責任が一層、大きくなったことは明白であろう。特に、医療費適正化計画と国民健康保険運営方針、医療計画(地域医療構想を含む)の3つの関連性が強まった点が注目される。具体的には、国民健康保険運営方針の見直し時期が6年サイクルで法定化された結果、医療計画と医療費適正化計画と同じタイミングに改定されることになり、3者の関連性が6年ごとに意識されやすくなった。
さらに、国民健康保険運営方針に医療費適正化の記載事項が必須となった点とか、医療費適正化計画で国民健康保険についての1人当たり保険料試算を示す点、保険者協議会が必置となった点、保険者協議会の役割に医療費適正化が明確に位置付けられた点、国民健康保険の保険料水準を統一化させる方針が明確になった点などは全て同じ文脈に位置付けられる。
つまり、都道府県が保険者協議会の場を活用しつつ、医療計画・地域医療構想に基づく医療提供体制改革や薬剤の適正使用、メタボ健診を含めた健康づくり、国民健康保険の保険料水準の「完全統一」などに取り組むことで、都道府県単位で負担と給付の関係を明確にし、最終的に医療費の適正化を図ろうという意図である。
さらに歴史を振り返ると、都道府県単位で医療行政を強化したり、負担と給付の関係を「見える化」したりする動きは2008年度から明確になっている44。
具体的には、2008年度改正では協会けんぽの保険料が都道府県単位で設定されるようになり、前半で触れた通り、都道府県単位で運営される後期高齢者医療制度もスタートした。本稿のテーマの一つである医療費適正化計画が始まったのも、この時期と重なる。
その後、本稿で触れた通り、2018年度改正で国民健康保険に関する都道府県の財政責任が明確になり、相前後して地域医療構想も本格始動した。それだけでなく、▽医師偏在是正に向けた「医師確保計画」などの策定45、▽紹介患者を重点的に受け入れる「紹介受診重点医療機関」を地域で絞り込むための「外来医療機能報告制度」の創設46、▽新興感染症対策の強化に向け、都道府県と医療機関の事前協定制度などを内容とする感染症法改正47、▽身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医」に関する制度整備、▽2024年度に本格施行された「医師の働き方改革」の推進48――など、近年の制度改正の多くは都道府県に執行が委ねられている。
その証拠として、別稿49で触れた通り、医療計画の改定に向けた審議会報告書では、「地域の実情」という言葉が頻繁に使われている。今後は地域ごとの人口変動が大きくなる上、医師・病院の偏在が大きい点などを踏まえると、「医療行政の都道府県化」の流れは加速すると思われる。
44 元を辿れば、1985年の医療計画制度の導入、1988年度の国民健康保険に関する都道府県の財政負担導入までさかのぼることが可能であり、国・地方の税財政を見直す「三位一体改革」が小泉純一郎政権期で進められた際にも、国民健康保険に関する都道府県の財政負担が強化されている。
45 医師偏在是正に関しては、2020年度から「医師確保計画」「外来医療計画」がスタートしている。詳細については、2020年2月17日拙稿「医師偏在是正に向けた2つの計画はどこまで有効か」(全2回、リンク先は第1回)を参照。
46 外来医療に関する役割分担を明確にするため、(1)それぞれの医療機関が担っている外来機能を報告する「外来機能報告制度」による可視化、(2)都道府県を中心とする協議を経て、紹介受診重点医療機関を選定――という流れが期待されている。詳細については、2021年7月6日拙稿「コロナ禍で成立した改正医療法で何が変わるか」を参照。
47 臨時国会で成立した改正感染症法に関しては、2022年12月27日拙稿「コロナ禍を受けた改正感染症法はどこまで機能するか」を参照。
48 医師の超過勤務抑制を促すとともに、健康確保措置に実施などを義務付ける施策。医師の勤務環境改善に関する相談・助言などについて、都道府県が関わることが期待されている。2023年9月29日拙稿「施行まで半年、医師の働き方改革は定着するのか」、2021年6月22日拙稿「医師の働き方改革は医療制度にどんな影響を与えるか」を参照。
49 2023年3月31日拙稿コラム「『地域の実情』に応じた医療・介護体制はどこまで可能か」の第1回を参照。
しかし、「都道府県が事務を果たして担えるのか?」という疑問も生じる。この疑問に対する筆者の答えは些か複雑である。まず、新型コロナウイルスへの対応で、医療機関との協定を通じて機能や役割を事前に定めた「神奈川県モデル」など、一部の自治体が独自の取り組みを見せた。このため、地方分権の成果として、都道府県の医療行政に関する能力は過小評価できないと考えており、「都道府県が担えるのか?」という問いに対して、筆者の答えは「Yes」である。
しかし、「全ての都道府県が持続的かつ安定的に運用できるのか?」という問いに変わると、答えは「No」と言わざるを得ない。具体的には、現場の好事例を見ると、都道府県職員の能力や意欲、地域の医師会のスタンスなど俗人的な要素が強く影響しているため、全ての都道府県が対応できているとは言えない。さらに、都道府県職員の異動とか、知事や地域の医師会幹部の交代、知事と地域の医師会の関係の変化などに応じて、地域の取り組みが失速したり、逆に取り組みが加速したりするケースも見受けられる。このため、取り組みが持続的かつ安定的にならない危険性を伴う。
その意味では、人材育成や情報提供などに国による都道府県のバックアップに加えて、都道府県の責任を明確にする上では、一層の制度改正も意識する必要がある。
医療行政の都道府県化を強化するための制度改正の選択肢のうち、論争的なテーマとして、地域別診療報酬制度を挙げることができる50。これは「1点=10円」と定められている全国一律の診療報酬点数を都道府県の判断で調整できるようにする仕組みであり、「負担の水準の変化をシグナルと捉えて受益の水準をチェックする『牽制作用』」を機能させる可能性がある」として、支持する意見が出ている51。
さらに、ここ数年で自治体を巻き込むような形で、財務省と日医の攻防が繰り広げられたので、簡単に経緯を説明する。地域別診療報酬制度は高確法に規定されており、2008年度改正で創設された。既に触れた通り、当時は小泉政権の下、都道府県主体の医療費適正化を強化するための議論が盛り上がっていたため、厚生労働省としては、「(筆者注:医療費適正化に向けた)武器が必要」「都道府県に何か(筆者注:権限)を持たせないといけないだろう」と判断したという52。
その後、地域医療構想の推進に関して、奈良県が2018年5月、地域別診療報酬制度の活用を訴えたことで、医療制度改革の焦点として急浮上した。当時の提案によると、(1)県の医療費適正化計画で抑制的な目標を設定、(2)地域医療構想の推進などを通じて医療費を適正化、(3)国民健康保険の法定外繰入を解消――を通じて、国民健康保険に関する県内の医療費について、負担と給付の関係を見える化した上で、給付が負担を上回った場合には地域別診療報酬制度を使い、「1点=10円」と定められた単価を例えば9.5円や9.7円といった形で引き下げる内容が示された。この時、政府の会議に出席した同県知事だった荒井正吾氏が「受益と負担を総合的にマネジメントしていく」「地域別の診療報酬設定の活用は、最終的な選択肢の一つ」と説明した53。
こうした中、都道府県単位で負担と給付の関係を明確にする究極的な手段として、地域別診療報酬制度の活用が浮上したわけだ。さらに、都道府県主体の医療費適正化に期待する財務省も同年5月の財政審建議で、「過大な給付が過大な負担を強いていないかを確認する緊張関係の中で、負担増以外の選択肢」として、「地域別診療報酬制度の柔軟な活用が重要」と強調した。これは奈良県と平仄を合わせた動きと見られていた54。
これに対し、日医は「仮に1点単価が10円から9円に引き下げられた場合、10%の診療報酬本体マイナス改定と同様」「こんな理不尽なことは絶対に許さない。全力で阻止していく」と猛反発した55。その後、2019年4月に実施された県知事選を前に、荒井氏と県医師会が2018年12月、「地域の医療費に特異な増嵩が生じない限り、本県で地域別診療報酬を下げることはない旨、確認する」との内容を盛り込んだ政策協定を締結した56ことで、議論は沙汰止みになったと思われた。
しかし、新型コロナウイルスの影響で疲弊した医療機関に対する支援策が焦点となる中、奈良県は2020年7月、都道府県の判断で診療報酬単価を引き上げることを認めるよう、国に提案した57。つまり、従来の提案では点数単価を引き下げることに主眼を置いていたが、コロナ対応では逆に点数単価を引き上げるように迫ったわけだ。
これに対しても、日医は「規定を拡大解釈して、あるいは転用して、都道府県間における給付格差をもたらすことに、改めて明確に反対する」と拒否した58。旗振り役だった荒井氏も2023年4月の選挙で知事の座を退いた59。
実効面でも、現実的ではないとの指摘が出ている60。具体的には、全国一律での価格では、物価・賃金の高い都市部の医療機関では、実質的な手取りが減ってしまう一方、逆に物価・賃金の低い地方では給与が実質的に高くなるため、地方の病院は高額の給与を準備しなくても、医師を確保できている面がある、このために医師の偏在緩和に役立っている可能性がある――という認識だ。
実際の問題として、単価が安くなる地域に患者が流入したり、逆に低単価になった地域から医師や専門職が流出したりする事態も予想される。このため、制度改正のメリット、デメリットを十分に勘案する必要がある。
そもそも、地方分権は自治体の裁量を大きくする半面、地域格差をもたらす可能性が高まるため、全国一律の保険診療との整合性は大きな問題になり得る。このため、単純に都道府県の役割と責任を強化すれば済む話ではない。「地方分権」という用語が多くのマイナス面から目を背けさせる点で、「魔術的な意味合い」を含んでいるという警鐘を十分に意識する必要がある61。
一方、地域別診療報酬制度に関する議論と、今回の制度改正は都道府県単位で負担と給付の関係を「見える化」しようという意図で共通しており、筆者自身は「都道府県単位で負担と給付の関係を明確にする究極的な手段として、地域別診療報酬制度が位置付けられる」と考えている。このため、どこまで制度改正を講じるか、今後もメリット、デメリットを議論する必要がある。
50 なお、健康保険組合や共済組合の位置付けも論点となり得る。協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療制度は都道府県単位で保険料が設定されているが、健康保険組合や共済組合の多くは都道府県の境をまたいで運営されており、都道府県単位で負担と給付の関係を明確にしようとしても、健康保険組合と共済組合の加入者は無関係である。しかし、昨今の流れに対し、特に健康保険組合から対応策は示されておらず、健康保険組合の有志で成る「保険者機能を推進する会」が2016年11月の会合で、健康づくりに関する県と地元メディアの連携をピックアップした程度である。
51 小林慶一郎・佐藤主光(2021)『ポストコロナの政策構想』日本経済新聞出版pp239-242を参照。
52 2021年11月『医療と社会』Vol.31 No.2の座談会における厚生労働省保険局総務課長だった栄畑潤氏の発言を参照。
53 2018年5月28日に開催された社会保障制度改革推進会議における発言。同日の『m3.com』配信記事を参照。同県の地域医療構想では、医療費適正化計画と国民健康保険の都道府県化との関係が言及されており、筆者の集計では当時、佐賀県と並んで全国で珍しい事例だった。しかも、佐賀県の地域医療構想では、国民健康保険の都道府県化が末尾のロードマップで取り上げられている程度だったため、実質的に唯一の事例だった。元々、荒井氏は地域医療構想の策定に際して、「(筆者注:地域医療構想、医療費適正化計画、国民健康保険の都道府県単位化の)3つは関係している。高度医療、看取り、終末期医療、頻回受診、頻回薬剤投与など議論が進んでいない分野がある。地域でそのようなことを探求していくことも可能」と述べるなど、県主体の医療改革に前向きな姿勢を示していた。2016年9月『医療経済研究』Vol.28 No.1に掲載された「第10回研究大会シンポジウム」における発言。
54 2018年6月1日『医薬経済』を参照。
55 2018年10月28日に開かれた十四大都市医師会連絡協議会における日医副会長の中川氏の発言。同日の『m3.com』配信記事を参照。
56 2018年12月25日『m3.com』配信記事を参照。
57 2020年8月29日・20日『毎日新聞』、同年8月15日『医薬経済』などを参照。
58 2020年8月26日の定例記者会見における日医会長の中川氏の発言。同日の『m3.com』配信記事を参照。
59 なお、最近の財務省は医師偏在是正のため、地域別診療報酬制度を使う必要性を主張している。2024年5月の財政審建議では診療所の不足地域と過剰地域で単価を変更するように求めた。
60 池上直己(2021)『医療と介護 3つのベクトル』日経文庫pp129-130を参照。
61 地方分権の言葉が持つ「魔術的」な要素については、林昌宏(2020)『地方分権化と不確実性』吉田書店を参照。同著は港湾政策の分権的な構造に着目しつつ、こうした構造が自治体間の重複投資などを招いた歴史を実証している。
14――おわりに
一方、後者では「医療行政の都道府県化」という補助線を引きつつ、医療費適正化計画の強化や国民健康保険運営方針の改正などの制度改正を取り上げた。これらの制度改正は都道府県単位で、負担と給付の関係を「見える化」しつつ、医療提供体制の改革と費用の適正化を図るという共通点を持っており、今後も都道府県の役割と責任を強化する流れは続くと思われる。このため、都道府県がどこまで主体性を発揮しつつ、「地域の実情」に応じた見直しに取り組めるか、都道府県の意欲と実力が一層、問われる。
さらに、都道府県単位で負担と給付の「見える化」に取り組むのであれば、実効性を高めるための権限移譲も視野に入って来る。地域別診療報酬制度については、論争的なテーマであり、実現に向けたハードルは高いが、どこまで都道府県に権限を委ねるのか、その際に起きるプラス面、あるいはマイナス面として何が想定されるのか、今後も検証しつつ、制度改正を検討する必要がある。
(2024年07月17日「ニッセイ基礎研所報」)
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- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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