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10年が過ぎた後期高齢者医療制度はどうなっているのか(上)-負担構造、制度運営から見える論点

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度が発足して4月で丸10年が過ぎた。2008年度に制度が発足した際、高齢者差別などの批判が出たが、近年はニュースに取り上げられる機会も少なく、国民の間に定着したという評価が可能かもしれない。
しかし、人口的なボリュームの大きい団塊の世代が2025年に75歳以上となると、高齢者医療費は一層の増大を迎える可能性が高く、将来世代のツケ回しを減らす必要性も含めて、「高齢者医療費をどう分かち合うか」という点を考える必要がある。
後期高齢者医療制度の10年を総括する本レポートのうち、(上)では制度の概要や負担構造、10年間の医療費や保険料の推移などを見るとともに、国・自治体の財政負担や74歳以下の人が支払う保険料負担が増加している点を考察する。
その上で、後期高齢者医療制度の前身に当たる老人保健制度について、(1)現役世代と高齢者の費用・負担関係が不明確、(2)保険料を納める主体と、医療費を使う主体が分離している――といった問題点が指摘されていたことを挙げつつ、どこまで課題が解決したか、現状がどうなっているかを考える。さらに、(下)では関係者の利害調整を通じて、少しずつ制度を改正する漸増主義(incrementalism)が志向された制度導入時の経緯を振り返った上で、今後の制度改革の方向性を模索するため、会社が保険料を負担する「事業主負担」や非正規雇用労働者など別の論点も切口として加えつつ、制度改革の選択肢と長所・短所を論じる。
■目次
1――はじめに~後期高齢者医療制度はどうなったか~
2――後期高齢者医療制度の概要
3――後期高齢者医療制度の現状
1|増加する医療費
2|増加する高齢者の保険料
3|伸び率が低い高齢者の自己負担
4|著増する国・自治体の財政負担
5|著増する支援金
6|現役世代と将来世代の負担増
4――後期高齢者医療制度導入の理由
1|旧制度を巡る2つの問題点
2|不明確だった現役世代と高齢者の費用・負担関係
3|保険料を納める主体と、医療費を使う主体の分離
5――制度の現状分析(1)~現役世代と高齢者の不明確な費用・負担関係~
1|高い高齢者保険料の徴収率
2|一貫して増加する健保の負担
3|支援金の法的性格を巡る指摘
6――制度の現状分析(2)~保険料を納める主体と、使う主体の分離
7――制度の現状分析から分かること
8――おわりに
(2018年07月31日「基礎研レポート」)

03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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