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J-REIT市場の動向と収益見通し。財務負担増加が内部成長を上回り、今後5年間で▲7%減益を見込む~シナリオ別のレンジは「▲20%~+10%」となる見通し~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人
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1――J-REIT市場は底打ちの機運がみられるも、金利上昇への警戒感から一進一退の動き
それでは、「金利のある世界(借入金利の上昇)」と「インフレのある世界(不動産賃料の上昇)」が本格到来するなかで、今後のDPU成長率はどのように推移するのか。本稿では、まず現在のJ-REIT市場の収益環境を確認する。次に、各種シナリオ(オフィス賃料見通し、物件取得要件、金利見通しなど)を設定し、今後5年間の分配金の見通しを試算したい。
1 東証REIT指数(配当除き)は過去3年(2022年~2024年)で▲20%下落。
2 3Dインベスト・パートナーズはJ-REIT2社に純投資目的で公開買い付け(TOB)を発表した。
2――保有不動産は約4800棟、金額にして28兆円。予想1口当たり分配金は過去最高を更新
2024年12月末時点におけるJ-REITの保有不動産は、市場全体で約4,800棟、金額にして約28.0兆円の規模である(図表―3)。アセットタイプ別の構成比は、オフィス(10.2兆円、36%)、物流施設(5.9兆円、21%)、住宅(4.5兆円、16%)、商業施設(3.6兆円、13%)、ホテル(2.5兆円、9%)、底地など(1.3兆円、5%)の順に多い。過去5年間の物件取得額(6.3兆円)の内訳をみると、オフィス(32%)と物流施設(29%)が全体の6割を占めるが、昨年は好調な賃貸市況を背景にホテル(26%)と住宅(24%)の取得が上位を占めた。
3――各種シナリオを設定し、今後5年間のDPU成長率を試算する
三鬼商事によると、東京都心5区のオフィス空室率(25年2月)は3.94%(前年比▲1.92%)となり、2022年9月の6.49%をピークに低下基調が続く。また、平均募集賃料は2024年1月をボトムに13カ月連続で上昇している。地方都市では新規供給の増加を受けて一部の都市で空室率が上昇しているものの、需給バランスは総じて良好で、募集賃料は前年比プラスで推移している。こうしたオフィス市況の改善を受けて、J-REITが保有するオフィスビルの収益も増加に転じている。継続比較可能な保有ビルを対象に賃貸事業収益(NOI)の推移を確認すると、2024年上期は前年同期比+2.6%、下期は同+1.1%の増加となった。コロナ禍以降、オフィスセクターは市場全体のDPU成長に対してマイナスに寄与していたが、2024年からプラスに転じている(図表―6)。
ニッセイ基礎研究所は国内7都市(東京・大阪・名古屋・横浜・札幌・仙台・福岡)のオフィス賃料予測を公表した3。今後5年間(2024年~2029年)の賃料変動率は、標準シナリオで東京が+10%、大阪が▲5%、名古屋が▲3%、横浜が▲10%、札幌が▲13%、仙台が▲1%、福岡が▲9%となっている(図表―7)。このうち、東京については「高水準の新規供給が続くものの、オフィス環境整備に向けた需要は堅調で、空室率は3%~6%のレンジで推移し、成約賃料は上昇基調で推移する見通し」である。
この賃料予測並びに一定の前提条件(稿末に記載)をもとに、今後5年間のJ-REIT保有オフィスビルのNOI成長率を計算した。結果は、標準シナリオで+6%、楽観シナリオで+13%、悲観シナリオで▲4%となった(図表―8)。
(2025年03月21日「基礎研レポート」)
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03-3512-1858
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/21 | J-REIT市場の動向と収益見通し。財務負担増加が内部成長を上回り、今後5年間で▲7%減益を見込む~シナリオ別のレンジは「▲20%~+10%」となる見通し~ | 岩佐 浩人 | 基礎研レポート |
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