- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- REIT(リート) >
- Jリート市場回復の処方箋
コラム
2025年01月24日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.一人負けのJリート市場
Jリート(不動産投資信託)市場の低迷が続いている。2024年は国内外の株式、金価格、暗号資産などリスク性資産が幅広く値上がりした一方で、Jリート市場は▲8.5%と3年連続で下落した(図表1)。過去3年間の騰落率(▲20%)を見ると、パフォーマンス格差はさらに広がり、金融市場の中で一人負けの様相を呈している。
現在、多くの銘柄(54社/57社)が理論上の解散価値であるNAV(Net Asset Value)を下回り、市場全体のNAV倍率(株式のPBRに相当)は0.8倍に沈む。NAV1倍割れは、手間と丹精を込めて作り上げた商品が「原価割れ」の値札をぶら下げて店先に並ぶ姿のようで、市場の未来に暗い影を落としている。
それでは、今後の回復に向けてどのような取り組みが必要だろうか。以下では、Jリート市場の下落要因とその対策について考察したい。
現在、多くの銘柄(54社/57社)が理論上の解散価値であるNAV(Net Asset Value)を下回り、市場全体のNAV倍率(株式のPBRに相当)は0.8倍に沈む。NAV1倍割れは、手間と丹精を込めて作り上げた商品が「原価割れ」の値札をぶら下げて店先に並ぶ姿のようで、市場の未来に暗い影を落としている。
それでは、今後の回復に向けてどのような取り組みが必要だろうか。以下では、Jリート市場の下落要因とその対策について考察したい。
2.価格下落は需給の影響が大きい
3.市場回復の処方箋
まず、資金流出の受け皿として「自己投資口買い」の拡大を急ぎたい。昨年は18社が合計1000億円の自己投資口買いを公表したが(図表4)、需給均衡にはまだ遠い。株式市場では、資本効率改善や持ち合い解消などに備えて自社株買いの取得枠が17兆円(時価総額の2%)に達している。これを基準にすると、Jリート市場では3000億円(時価総額14.3兆円×2%)が1つの目安になりそうだ。
次に、制度面では導管性ルールの改正を検討したい。Jリートは利益のほぼ全額を分配する仕組みのため、年間の剰余資金は市場全体で1000億円にとどまる(図表4)。大規模な自己投資口買いの財源を確保するには資産売却が必要となるが、売却益を内部留保し自己投資口買いに活用できる制度が整えば、柔軟な資本政策が可能となり、分配金や市場価格の安定にも寄与することが期待される。
次に、制度面では導管性ルールの改正を検討したい。Jリートは利益のほぼ全額を分配する仕組みのため、年間の剰余資金は市場全体で1000億円にとどまる(図表4)。大規模な自己投資口買いの財源を確保するには資産売却が必要となるが、売却益を内部留保し自己投資口買いに活用できる制度が整えば、柔軟な資本政策が可能となり、分配金や市場価格の安定にも寄与することが期待される。
昨年来の需給悪化は構造的変化として長期化する恐れがある。また、NAV1倍割れの常態化は、買収後に解体して鞘取りを狙うアクティビストの標的になりかねない。Jリート各社は「今が有事」との意識を共有し、継続的かつ大胆な自己投資口買いの実行が求められている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2025年01月24日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1858
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/21 | J-REIT市場の動向と収益見通し。財務負担増加が内部成長を上回り、今後5年間で▲7%減益を見込む~シナリオ別のレンジは「▲20%~+10%」となる見通し~ | 岩佐 浩人 | 基礎研レポート |
2025/02/07 | Jリート市場回復の処方箋 | 岩佐 浩人 | 基礎研マンスリー |
2025/01/24 | Jリート市場回復の処方箋 | 岩佐 浩人 | 研究員の眼 |
2024/12/04 | Jリートの不動産運用で問われる「インフレ対応力」 | 岩佐 浩人 | ニッセイ年金ストラテジー |
新着記事
-
2025年03月21日
東南アジア経済の見通し~景気は堅調維持、米通商政策が下振れリスクに -
2025年03月21日
勤務間インターバル制度は日本に定着するのか?~労働時間の適正化と「働きたい人が働ける環境」のバランスを考える~ -
2025年03月21日
医療DXの現状 -
2025年03月21日
英国雇用関連統計(25年2月)-給与(中央値)伸び率は5.0%まで低下 -
2025年03月21日
宇宙天気現象に関するリスク-太陽フレアなどのピークに入っている今日この頃
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【Jリート市場回復の処方箋】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
Jリート市場回復の処方箋のレポート Topへ