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2025年08月20日

日米欧の産業別の経済成長

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
 
  1. 本稿では日米欧の成長産業、経済をけん引している産業について調査した。具体的には1990年代以降の状況について産業別の名目GDP(名目付加価値)を、労働生産性、労働力、価格に分解して考察した。
     
  2. リーマンショック前までの傾向は日米欧で共通している。いずれの地域でも製造業における相対的な生産性上昇、価格と労働力の低下が見られ、サービス業における相対的な価格と労働力上昇と生産性低下が発生してきた。なお、労働力の生産性上昇率の高い業種(製造業)から生産性上昇率の低い業種(サービス業)への移動は、ボーモルが指摘する経済全体の成長率低下要因でもある。
     
  3. リーマンショック以降の状況は日米欧で異なる。米国では製造業の生産性上昇率が急激に低下する一方、サービス業において高めの生産性上昇率を維持したため、製造業のシェア縮小とサービス業のシェア拡大が続いた。一方、日欧は製造業の生産性上昇率がそれほど低下せずに、製造業の価格や労働力の低下も限定的であったことから製造業シェア、サービス業シェアがいずれも横ばいで推移している(図表1)。
     
  4. 米国では製造業における成長産業の代表であったコンピュータ・電子製品産業の存在感がリーマンショック以降に急激に低下し、製造業の生産性の伸びを大きく押し下げた。日本でも成長産業であった情報・通信機器産業において生産性上昇率の低下が見られる。ただし、日本では電子部品・デバイスが高めの生産性を維持しており、製造業全体で見ても米国の製造業ほどの生産性上昇率の低下には至っていない。
     
  5. 米国はサービス業の中でも情報関連サービスが高い生産性を維持し、成長産業となっている。また、医療・社会支援事業など労働集約的な産業においても生産性の上昇が見られることが、サービス業全体の生産性を高めている。

 
(図表1)日米欧の名目GDPシェア(%)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月20日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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