- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 家計の貯蓄・消費・資産 >
- 労働所得と資本所得-日米欧の家計所得と資産・負債の比較
労働所得と資本所得-日米欧の家計所得と資産・負債の比較
経済研究部 主任研究員 高山 武士
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
- 家計の所得には労働所得と資本所得がある。
- 本稿では、日本、米国、ユーロ圏における最近20年間の家計の所得を、資本所得の観点から分析する。
- トマ・ピケティは、歴史的に見て一国の所得格差が拡大する一因として、資本所得の収益率「r」が所得全体の成長率「g」を超える、つまり「r>g」となっていたことを指摘している。本稿では、家計部門における「r」と「g」の関係について確認したい。
・労働所得(雇用者報酬)と資本所得(財産所得・営業余剰)という点で見れば、日米欧ともに労働所得が可処分所得の大部分を占めるものの、米国やユーロ圏では資本所得の占める割合が日本よりも大きい。
・家計の正味資産(=資産-負債)の規模を可処分所得対比で見ると、日本が約9倍、米国は約7.5倍、ユーロ圏は約8倍となっている。日本の正味資産(可処分所得比)が多いのは、高齢化の進展と合わせるかたちで、資産が蓄えられてきたためと見られる。ただし、1人あたりの金額では、米国が約36万ドル、日本が約20万ドル、ユーロ圏が約17万ドルと米国が多い。
・過去20年間を見ると、家計の正味資産(資産-負債)の収益率は日本で低く、欧米で高い。要因としては、欧米の家計が保有する金融資産のうち、高リスク高リターン資産の割合が日本より大きいことや、同じ低リスク低リターン資産の国債などにも利回り格差があることが考えられる。
・日米欧ともに家計の正味資産(資産-負債)の収益率は可処分所得の伸び率を上回っている。富の集中が進みやすい状況と言えるが、米国と比べ日本やユーロ圏の正味資産の伸びは抑制されている。この背景には高齢化の進展や所得再分配の効果があるものと考えられる。
・格差については労働所得内での格差(高賃金と低賃金)、資産が一部の資産家に集中するといった、分布の偏りに注目されることが多い。今後はこうした観点からの調査・分析も行っていきたい。
(2021年06月04日「基礎研レター」)
03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
高山 武士のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2025/10/15 | IMF世界経済見通し-世界成長率見通しは3.2%まで上方修正 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/10/15 | 英国雇用関連統計(25年9月)-週平均賃金は前年比5.0%まで再び上昇 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/10/14 | ロシアの物価状況(25年9月)-低下が続くが、足もとインフレ圧力の強まりも | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/10/03 | ユーロ圏失業率(2025年8月)-失業率は6.3%で低水準だがやや悪化 | 高山 武士 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年10月30日
米FOMC(25年10月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。バランスシート縮小を12月1日で終了することも決定 -
2025年10月30日
試練の5年に踏み出す中国(後編)-「第15次五カ年計画」建議にみる、中国のこれからの針路 -
2025年10月30日
潜在成長率は変えられる-日本経済の本当の可能性 -
2025年10月30日
米国で進む中間期の選挙区割り変更-26年の中間選挙を見据え、与野党の攻防が激化 -
2025年10月29日
生活習慣病リスクを高める飲酒の現状と改善に向けた対策~男女の飲酒習慣の違いに着目して
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【労働所得と資本所得-日米欧の家計所得と資産・負債の比較】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
労働所得と資本所得-日米欧の家計所得と資産・負債の比較のレポート Topへ











