2022年03月23日

今後、勤め先での飲み会や会食はどうなるか

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――職場における飲食・会合は減少

ニッセイ基礎研究所がおこなった「第7回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」によると、年末年始に職場の上司や同僚と忘年会や新年会を予定していたのは就労者全体の22.8%で、77.2%は予定がなかった(図表略)。予定があった中では、「4人以下」が7.4%で最も多かった。予定がない人の9.8%は、勤め先の規定で禁止されていると回答していた。

また、新型コロナウイルスの感染が拡大する前(2020年1月頃)と比べて、上司や部下、同僚との会食は「減少」した割合が上昇傾向にあり、職場における飲食・会合はあまり実施されていない状況だ(図表1)。
図表1 職場における飲食・会合(新型コロナウイルスの感染が拡大する前(2020年1月頃)との比較)
今後、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになると思っている人はどのぐらいいるのだろうか。

2――「1年後に、コロナ前…

2――「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と思う人の割合は低下

「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」について、「そう思う」から「そう思わない」の5段階で尋ねた。2021年7月(第5回)、2021年9月(第6回)、2021年12月(第7回)を比較すると、「そう思う」「ややそう思う」のいずれも、2021年7月から12月にかけて低下していた(図表2)。
図表2 「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」についての考え方
調査を実施したタイミングを、国内における新規陽性者数の推移と見比べると、7月調査は第5波が始まりつつあるタイミング、10月調査は終わったタイミング、12月調査は第6波が始まりつつあるタイミングにあたる。3回とも調査実施時期は、比較的感染が穏やかなタイミングに重なっていたが、勤め先での飲み会や会食については徐々に慎重になっている様子がうかがえる。

次に、2021年12月調査の結果について属性別にみると、「そう思う」と「ややそう思う」の合計は、34歳以下で32.6%、就労者で29.3%と、2021年12月(第7回)の全体27.5%より高かった。

3――「1年後に、コロナ前と…

3――「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と思う人の特徴

勤め先での飲食であることから、以下では就労者1,697人に限定して、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と思う人の特徴を分析した。

分析では、被説明変数を「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と思う度合い(そう思う~そう思わないに対して5~1点を配点)とし、説明変数には、アフターコロナに向けた感染収束の見通し、新型コロナウイルス感染拡大にともなう不安、コロナ前との生活の変化として重回帰分析を行った。説明変数に使った収束の見通しは、「1年後に、コロナ前と同じように友人・知人と会うようになる」「半年以内に国内の新型コロナウイルスの感染拡大が収束する」についてそう思う~そう思わないに対して5~1点を配点した。不安は、飲食や就労、コミュニケーションに関連する項目として「感染による健康状態の悪化」「コミュニケーション機会の減少により、うつなどの心の病気になる」「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」「在宅勤務が増え、上司や部下、同僚とのコミュニケーションが取りにくくなる」を使い、いずれも不安を感じている場合を1、そうでない場合を0とした。また、生活の変化は、飲食や就労、コミュニケーション(特に社内におけるコミュニケーション)に関連する項目として「ビジネスチャットの利用(Slack、LINE WORKS、Teamsなど)」「社内メンバーとのオンライン会議や打合せ(Web会議、テレビ電話会議、電話会議など)」「対面での会議・打合せ」「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」「勤務先への出社」「飲食店の店内での飲食」「オンライン飲み会・食事会」を使い、いずれも感染開始前(2020年1月頃)と比べて増加~減少に対して5~1点を配点した。その他、性、年齢、未既婚、子どもの有無、居住都道府県、本人職業、本人収入で調整した。使用した変数は、互いに相関が強い変数を含んでおらず、多重共線性はないと考えた。

推計結果を図表3に示す。

収束の見通しとして、「1年後にコロナ前と同じように友人・知人と会うようになる」「半年以内に国内の新型コロナウイルスの感染拡大が収束」と思っているほど、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」に対しても「そう思う」と回答している。これは、今後比較的短期間で新型コロナの感染が収束することや、比較的短期間でコロナ前と同じように飲食をする生活を想定していることから、勤務先での飲み会や会食についても比較的短期間で元にもどる生活を想定していると思われる。

今回の結果では、こういった影響を考慮したうえで、さらに「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」「在宅勤務が増え、上司や部下、同僚とのコミュニケーションが取りにくくなる」といったことに不安を感じている人で、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と考えていた。就労環境の変化に不安を抱えており、新型コロナウイルスの感染拡大前に戻ることへの期待もうかがえる。

また、生活の変化については、コロナ禍で自粛しがちだった「対面での会議・打ち合わせ」や「飲食店の店内での飲食」が増えている人では、現在も働き方や飲食にコロナ禍の影響をあまり受けておらず、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と思う傾向があった。逆に、「対面での会議・打合せ」や「飲食店の店内での飲食」を行っていない人では、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」について慎重である可能性がある。
図表3 「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」の重回帰分析の結果
12月末に行った調査では、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と考える人の特徴として、今後比較的短期間で新型コロナの感染が収束することや、比較的短期間でコロナ前と同じように飲食をする生活を想定していることのほか、「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」「在宅勤務が増え、上司や部下、同僚とのコミュニケーションが取りにくくなる」といったことに不安を感じていること、生活の変化として「対面での会議・打ち合わせ」や「飲食店の店内での飲食」が増えていることがあげられた。

図表1のとおり、職場における飲食・会合は引き続き減少しており、「1年後に、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになる」と思う割合は低下傾向にある。3月21日ですべての地域でまん延防止等重点措置が解除されたが、12月末時点と比べて、日々公表される新規感染者数や死亡者数は、いまだ多い。今後、コロナ前と同じように勤め先での飲み会や会食が実施されるようになることについても慎重である傾向が続く可能性がある。

(2022年03月23日「基礎研レター」)

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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

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