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データで見るコロナ禍の行動変容(1)-個人消費および雇用情勢の概観
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
- コロナ禍において個人消費は感染状況と連動しており、消費を上向かせるためには、社会経済活動との両立を図るために感染状況を制御していくことが肝要だ。一方で今後の足かせとなるものとしては、長引くコロナ禍における雇用環境の悪化による消費抑制や物価高による家計負担増などが懸念される。
- 雇用の状況を見ると、非正規雇用者は減少する一方、正規雇用者は増加しており、いずれも女性で増減が目立つ。従来から非正規雇用者は女性が約7割を占めて多く、女性の従事比率の高い医療・福祉で正規雇用者が増加している影響と見られる。一方、コロナ禍で苦境に立つ飲食などの対面型サービス業等の雇用者数は減少している。コロナ前から生じていた雇用者間の分断はコロナ禍で一層深いものとなっている。
- 賃金についても、対面型サービス業では正規・非正規ともに全産業平均と比べて減少する一方、需要の増す医療・福祉では増加している。よって、雇用維持の面だけでなく、収入の面でも雇用者の分断は深まっている。
- 政府はこれらへの対応として、成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現するとして、経済団体への賃上げ要請やデジタルなど成長産業への労働移動を促すための公的職業訓練の強化などを講じている。雇用環境の改善は個人消費を改善させる上での土台となる。
■目次
1――はじめに~コロナ禍における消費行動や働き方の変容状況は?
2――個人消費全体の動き
~コロナ禍の個人消費は感染状況と連動、感染状況の制御が消費拡大の鍵
3――雇用情勢
~コロナ禍による打撃と需要増による業種や雇用形態に見える雇用者間の分断の深まり
1|雇用者数の状況
~宿泊・飲食サービスなどの非正規減、医療・福祉などの正規で深まる雇用者間の分断
2|賃金の状況
~正規・非正規ともに宿泊・飲食など対面型サービス業で減少、医療・福祉などで増加
4――おわりに~個人消費改善に必要なことは感染状況の制御、雇用環境の改善
(2022年02月25日「基礎研レター」)
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/09/26 | 物価と体感-10%以上乖離、値上げに敏感な消費者、価格転嫁は可能か | 久我 尚子 | 基礎研レター |
2024/09/19 | 家計消費の動向(~2024年7月)-物価高で食料や日用品を抑え、娯楽をやや優先だが温度差も | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/09/10 | Z世代の消費志向とサステナブル意識-経済・社会的背景から見た4つの特徴 | 久我 尚子 | 研究員の眼 |
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