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2025年07月03日

ユーロ圏失業率(2025年5月)-失業率はやや上昇したが、依然低位安定

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率はやや上昇し6.3%

7月2日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏失業率(20か国、2025年5月、季節調整値)】
失業率は6.3%、市場予想1(6.2%)から上振れ、前月(6.2%)から上昇した(図表1・2)
失業者は1083.0万人となり、前月(1077.6万人)から5.4万人増加した

(図表1)ユーロ圏失業率/(図表2)ユーロ圏失業率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:イタリアで失業率増が全体の失業率を押し上げたが中身は悪くない

ユーロ圏(20か国)の5月の失業率は6.3%となり、4月(6.2%)からやや上昇した。なお、過去データはわずかに悪化方向に改定された(4月:修正なし、3月6.3%→6.4%、2月:修正なし)。

失業者数は5月の前月差で5.4万人増と増加に転じた。主要4か国ではイタリア(11.2万人)、ドイツ(0.2万人)が増加、フランス(▲2.3万人)、スペイン(▲0.5万人)が減少だった。失業者数はコロナ禍前より84万人少なく、スペイン(コロナ禍前比▲63万人)が大きく、次いでイタリア(同▲20万人)がやや減少に寄与している。一方、ドイツはコロナ禍前より19万人失業者が多い(図表3)。

5月の若年失業率は14.4%となり、4月(14.3%)からやや上昇した。なお、若年失業率は過去データがわずかに改善方向に修正されている(4月14.4%→14.3%、3月修正なし、2月修正なし)。若年失業者数は5月で228.1万人(前月差1.3万人)と増加し、若年失業者数の水準はコロナショック直前(20年3月の234.5万人)を下回っている(図表4)。
(図表3)ユーロ圏(20か国)の累積失業者数変化/(図表4)ユーロ圏(20か国)の累積失業者数変化
国別の5月のデータを見ると、失業率は20か国中、悪化した国が4か国、改善が8か国、横ばいが8か国だった(図表5)。若年失業率は、公表されている16か国中、悪化した国が3か国、改善が12か国、横ばいが1か国だった(図表6)。
(図表5)ユーロ圏の失業率(国別)/(図表6)ユーロ圏の若年失業率(国別)
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアは失業者が大幅に増加したが、非労働力人口がそれ以上に減少した。就業者も増加しており、労働参加率はコロナ禍後の最高値を更新した(図表7)。イタリアは5月の失業率が大幅に上昇(5月6.5%、4月6.1%)しており、ユーロ圏全体の失業率押し上げに寄与したが、中身は悪くないと言える。ポルトガルは失業者が減少、就業者が大幅減少、非労働力人口が大幅増加となった(図表8)。ポルトガルの労働参加率は減少したが、依然としてコロナ禍以降の最高値付近にとどまっている。
(図表7)イタリアの失業者・非労働力人口・労働参加率/(図表8)ポルトガルの失業者・非労働力人口・労働参加率

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月03日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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