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年金額改定の本来の意義は実質的な価値の維持-年金額改定の意義と2026年度以降の見通し(1)
保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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年金額は年度ごとに改定されている。2025年度の年金額は、前年の物価上昇を受けて、+2.7%増と3年連続の増額になった。しかし、同時に、マクロ経済スライドによる調整(2025年度は-0.4%)が3年連続で発動されており、実質的には目減りとなっている。また、2026年1月には、2026年度分の年金額が公表される見込みであり、物価上昇が続く中で、その動向が注目される。
本稿では、これらの数字の意味を理解するために、年金額改定のルールのうち本来の改定について、意義や経緯を確認した。その要点は、次のとおりである。
- 現在の公的年金の改定率(毎年度の見直し率)は、常に適用される本来の改定率と、年金財政を健全化している最中に適用される年金財政健全化のための調整率(いわゆるマクロ経済スライド)を組み合わせたものとなっている。
- このうち本来の改定の基本的な意義は、経済状況の変化に対応して年金額の実質的な価値を維持することである。
- 現在の仕組み(2021年度以降)では、67歳以下(厳密には67歳に到達する年度まで)に適用される本来の改定率は、常に賃金変動率である。これは、従来行われていた約5年ごとの法改正によって賃金の変化に連動して改定する仕組みを、2004年改正を機に毎年度自動的に行う仕組み(政治状況に左右されにくい仕組み)に切り替えたものである。
- 68歳以上(厳密には68歳に到達する年度以降)に適用される本来の改定率は、賃金変動率と物価変動率のうち低い方である(2021年度以降)。
- 賃金変動率が物価変動率を上回る場合は、年金の購買力を維持しつつ少子化や長寿化による年金財政の悪化に対応するため、年金財政の保険料収入を左右する賃金変動率よりも低い物価変動率が使われる。ただし、この仕組みが発動されたのは、2023年度のみである。
- 賃金変動率が物価変動率を下回る場合は、年金財政の悪化を避けつつ、現役の賃金の伸びを上回る年金額の引上げは不適切という世代間バランスの観点から、物価変動率よりも低い賃金変動率が使われる。2021年度からこの仕組みに切り替えられたことで、改正前のように年金財政の悪化要因になることが避けられた。
- 賃金変動率が物価変動率を上回る場合は、年金の購買力を維持しつつ少子化や長寿化による年金財政の悪化に対応するため、年金財政の保険料収入を左右する賃金変動率よりも低い物価変動率が使われる。ただし、この仕組みが発動されたのは、2023年度のみである。
- 賃金変動率の計算には、直近の物価変動を反映しやすくする仕組みや、賃金の細かな変動を取り除いて年金額の変動を抑える仕組みが組み込まれている。近年の物価上昇や実質賃金低下の下では、これらの仕組みが奏功している。
年金額の改定といえばマクロ経済スライドが注目されがちだが、その基礎となる本来の改定率についても、理解しておく必要があるだろう。
■目次
1 ―― 問題意識:年金額改定の本来の意義を確認する
2 ―― 改定ルールの全体像:本来のルールと年金財政健全化のための調整ルールの2つを適用
3 ―― 本来の改定ルールの基本的な意義:年金額の実質的な価値を維持するため
4 ―― 本来の改定ルールの特例:当初は当面の受給者に配慮、2021年度から将来の給付水準に配慮
1|2004年改正で特例ルールが設けられた意図:当面の受給者への配慮
2|特例ルールの見直し(2016年改正、2021年度施行)
:将来の給付水準や現在の現役世代を考慮
5 ―― 本来の改定ルールの適用状況:財政悪化パターンが大半だったが、制度改正で中立的に。
68歳以上の改定率を抑えて年金財政を改善する仕組みは、2023年度のみ機能。
(2025年11月19日「基礎研レポート」)
03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
中嶋 邦夫のレポート
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